TOUGH COOKIES Vol.78

「なぜ別れないといけなかった?」元恋人に数年後に直球で尋ねたら…

SUMI

「キョウコさんは?」
「え?」
「キョウコさんは今、幸せじゃないの?」

幸せ…?自分が幸せかどうかなど、興味がなかったのだと今気づく。

「…幸せよ」
「そんな顔していう言葉じゃないですよ」
「そう?」

自分がどんな顔をしているのかなど考えたくもない。脚本の話を始めたキョウコに、大輝が諦めたように言った。

「分かりました。まずは仕事しましょう。でも原稿が終わったら話してくれますよね」
「…話すことなんてないわ」
「これが最後ですから」

譲る気がないと微笑まれて、大輝は意外に頑固だったと思い出した。そして、このロケが終わるまでには、2人の時間を必ず作ることを約束してしまったのだ。


それから2日間、お互いに執筆に集中して、今日は2人共脚本家として撮影に同行している。

モニターの前で、テストで収録されたリハーサルの演技を見ながら役者たちと自分が書いたセリフのチェックをしている大輝は、とても活き活きとしていて眩しい。

— 2人で話したら…何かが変わるのだろうか。

自分は、その“何か”を期待しているのだろうか。

キョウコが人生で初めて、自分のことより大切だと思った男。だからこそ夫の浮気相手をを名乗る――長坂美里に、別れなければ全てを暴露して、大輝の人生を壊すと脅されたとき、彼の未来を守りたくて別れを選んだ。

「若くてイケメンの脚本家が超有名な同業者と不倫してたなんて、業界激震のゴシップでしょうね。友坂さんの成功はあなたがゴリ押ししたものだとリークしたら、どんな記事にしてくれるかな」

「アンタたちだけ幸せになるとか許せない」と笑った美里の瞳は狂気に燃えていた。もちろん大輝の仕事に便宜を図ったことなど、一度たりともない。だが潔白を証明することなどできないし、世間が欲しがるのは真実よりもスキャンダルだ。

大輝の際立つルックスは、“年上の女を踏み台にした男”という下品な見出しにうってつけだろう。そしてそれは、若く、美しく、才能もある彼の失脚を密かに待ち望んでいた同業者たちに最高の口実を与えることになる。形ばかりとはいえ、まだ婚姻関係が残る自分と関わっている以上、スポンサーの拒絶も避けられない。

話せば、大輝は「一緒に闘おう」と言うだろう。けれどロマンだけでは将来は守れないと、キョウコは強引に幕を下ろしたのだ。

「キョウコ、体はつらくない?」

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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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