男と女の答えあわせ【A】 Vol.324

「自分の家なのに落ち着かない…」結婚前提の同棲半年で、36歳女が別れを決断した、彼のルールとは?

三浦マキ

A2:正しすぎる暮らしに、自分の居場所がなかった。


まず、龍太はとにかく細かい性格だった。

例えば、二人で楽しく家で食事をしていた時のこと。食べ終わってからしばらくテレビを見ていると、龍太が急に諭してきた。

「奈緒、食器は早めに洗おうね」
「え〜でもまだ残りのビールを飲んでいるし。後でやるよ」

私はまだ、ビールを飲んでいる。この後、食器を下げないわけではない。これはただ、私のタイミングだ。

それなのに、いちいちうるさい龍太。

「うん。でも食器だけ、先に洗おうか」
「わかった」

そう言いながらも、「私のタイミングがあるのに…」と思っていた。


変化は、少しずつだった。

同棲を始めて3ヶ月が経った頃、洗面所で並んで歯を磨いていると、龍太が急に洗面台の縁に目を落とし、何も言わずにティッシュで何かを拭き取った。

ふと見ると洗面台に、私の髪の毛が落ちていた。

「うわ…ごめん!」
「いいよ、僕がやるから」

その言葉が優しさなのか苦言なのか、わからない。でも龍太の表情は、明らかに少し曇っている。

それからというもの、私は洗面所を使うたびに少しだけ緊張するようになった。鏡を見ながら、「髪の毛、落ちてないかな」と確認する。そんな毎日が始まった。

自分の家のはずなのに息がつまる。常に“汚れないかな”とか気を使わないといけないし、落ち着かない。

洗濯もそうだった。

龍太は洗濯を、週に2~3回と決めている。私がそれ以外の日に洗濯しようとすると、必ず声がかかる。

「奈緒、まとめて回した方が効率良くない?」
「明日、この洋服着たいから」
「でも量が少ないと、水も電気ももったいないよ」

正論だし、彼に悪気はないのはわかっている。

でも、なんだか苦しい。自分の家なのに、自分のペースで洗濯できないことにも、少しずつ疲れていく。

そして決定的だったのが、日曜日の朝の出来事だった。


「もう起きるの?早いね」

朝、起きてゴソゴソとランニングの準備をしている龍太。

「ごめんね、起こしちゃった?奈緒は、まだ寝る?」
「うん、日曜だし。もう少し寝てようかな。気をつけて行ってきてね」
「わかった。僕はランニングに行ってくるね」

命令ではないし、言い方も優しい。早起きを強要をされているわけでもない。でも、ずっと息苦しい。

― この人と結婚したら、一生こうなんだろうな。

そう悟った瞬間、私の中で何かが静かに終わった。



共同生活に次第に耐えられなくなった私は、結婚前提の同棲だったけれど、“別れ”を選ぶことにした。

彼が悪い人だとは思っていない。むしろ、真面目で誠実で、将来設計もしっかりしている。

そして彼が言っていることに関しては、すべて正論だ。週末でも朝早く起きた方がいいし、部屋も常に綺麗な方がいいに決まっている。

でも、一緒に暮らしてわかったことがある。

私には、ダラダラできる週末の朝が必要だ。髪の毛1本を気にしないで済む洗面所が、必要だ。自分のペースで洗濯できて、多少のことは目を瞑る…そんな当たり前が、必要だった。

結婚は、赤の他人が結びつくのだからお互い譲歩が必要だ。

だからこそ、一方的に息が詰まる関係は続かない。

私と龍太では、生活基準が違う。言葉にはしないものの、このまま一緒にいたらいつか彼が苛立ちをぶつけてくることも見えてしまう。

そう悟ったので、私は別れを告げた。


▶【Q】はこちら:「結婚前の同棲はNG?」結婚願望強めな36歳女が、半年で自ら別れを切り出したワケとは?

▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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女がデート中に一気に冷めた理由

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男と女の答えあわせ【A】

三浦マキ

男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

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