焼き鳥の人気店主に学ぶ「若手を育てるリーダー論」!鳥しき・阿部・YAOYA
“目指すのは規模の拡大ではない。焼き鳥を文化として高めること”
今年はアジア3店舗目の台北に進出。規模拡大の一途を辿る「鳥しきICHIMON」だが、「私としてはただ店を増やしている認識はまったくありません」と大将の池川義輝さんは断言する。
「何年で何軒、のような出店計画は一切なく、日々の積み重ねの中で私たちの思いと共鳴するパートナーや仲間に出会えて初めて『やりましょう』と、いまの店舗数になっただけです」
思いとは「焼き鳥という日本が誇る食文化を広く世界に知らしめたい」というパッション。池川さんは焼き鳥を武道と同じ“道”と捉え、求道者のごとく純粋にICHIMONを率いている。
「ありがたいことに、賛同する方が国内外に多くいらっしゃって。私にNOは決してないので、まずどんな方でもお話を聞くことから始めます。
変な話、恋愛と一緒で、見据えている方向が違うなら、無理に組むことはお互いが不幸になるのでやめましょうというスタンス。それは昔もいまもずっと変わりません」
食を文化と捉える以上、後進育成も欠かせないが、ICHIMONに多く在籍する若手鍛錬の場としても各店舗は機能している。
「『鳥かど』を開いた目的は、本店終業後深夜に行っていた修業の場のいわゆる“道場”では、拘束時間が長く過酷だったから」
いまは「時代にフィットするダイバーシティな育成法」も模索。ICHIMONのスケールメリットを活かし「ストイックに焼き鳥を極めたい人、もう少しソフトに働きたい人などいろいろな人材や勤め方に対応する、多様な環境づくりができています」。
焼き鳥を世界と次世代に伝え、文化としての価値まで向上させる。そんな志が池川さんのリーダー像を形づくっている。
◆歴史を振り返る
・2007年⇒目黒に『鳥しき』を開業
・2011年⇒『鳥しき』がミシュラン一ツ星を獲得
・2020年⇒コロナ禍の逆境の中、初の海外進出。『鳥えんNew York City』として展開
・2021~2025年⇒「鳥しきICHIMON」を結成。『鳥かぜ』を筆頭に『中目黒 とりまち』『鳥そら』など新業態が続々と誕生
・2026年⇒海外3店舗目となる『鳥かぜ Taipei』がオープン
◆
「自己表現する唯一の場」を目黒に構えた池川さんが若い焼き師育成の観点から「鍛錬の場がもうひとつ必要」と痛感して2017年に作った舞台が『鳥かど』。いまも「あれが転機」と捉えており、以降も出店する際は後進に対する配慮は絶対。
2025年誕生の『Bird Lab.』や『鳥そら』を筆頭に、昨今はアラカルト店や親しみやすいカジュアルラインの店も展開。
“後輩と同じ目線で同じ景色を見ることで、一体感が生まれる”
「焼き鳥業界って楽しいんだってことを、いまの子たちに、伝えたいんです。そのためにもワンチームは意識しています。私がトップですが、遅く来るようなことはせず、みんなで一緒に横並びで仕事をスタートさせて、一緒に賄いも食べ、帰るときも一緒ぐらいの感覚です」
阿部友彦さんは「やれ」でなく「一緒にやろう」というリーダー。指導する際も怒らず、なぜそうするかの理由を伝える。
「親方がそうだったんです。感情でなくロジックでちゃんと説明してくれる。お叱りのあとに『なぜ声を上げたか分かる?』が必ずついてくる」
親方と慕うのは池川さん。
「焼きながらお客様と会話し周りに目配りしつつ弟子たちに指示を出す。本当に後ろに目がある?って思うぐらいすごい」
マルチタスクの達人からリーダーに必要な視野の広さを学び、自分がそうだったように後進を育成する意義を知った。
「僕が親方からこの店を買い取って独立したように、僕も育てていくにあたって独立するまで責任を持ってやっていきたい」
本店の定休日に「裏阿部」と称して二番手に全権を委ねているのはその一環。そこで経営感覚まで学ばせたら、今度は物件を探して新規店を一任する。
「ウチでは店に入ってまず3年で焼きまで辿り着けるスキームを作っています。もちろん独立を希望するなら相談にも乗ります。
いろいろ厳しい時代ですから、本人ともしっかり話をしつつ、会社がうまく併走してあげて最終的にはそのまま独立しても大丈夫なように出店するのが理想。皆で同じ景色を見ていたいという想いがあるから」
この一念で一派を率いる。
◆歴史を振り返る
・2016年⇒目黒に『やきとり阿部』を開業
・2025年⇒焼き鳥激戦区の西麻布に初進出。『焼鳥 炎間』が誕生
◆
2016年、修業先の『鳥しき』姉妹店を買い取り同じ地で『やきとり阿部』を開業。着実に力をつけ、2020年以降は『やきとり 陽火』『やきとり 結火』など、ほぼ毎年堅実に店舗を増やしてきた。
定休日の日・月に本店『やきとり阿部』を開放する「裏阿部」で若手にノウハウを会得させ、出店に導くシステムも確立。新規物件は「エリアにこだわりすぎずネットでいろいろ探す」など、情報収集も欠かさない。
“自分が理念を体現し、平均年齢28歳の30人を導いていく”
「店舗のサイズ感がまちまちなので一概に言えないですが、1軒に最低3人は社員がいるようにしています。僕たちはチーム。もがきながら仲間と良い店を作る日々を楽しんでほしい」
創業時は遊津拓人さんを含め、わずか3人だった『やおや』もいまや社員だけで30人が在籍する一企業に成長した。
しかし、デスクワーク専任の部署は設けず「あくまでも現場が第一」と社員は必ず店に出る。理由は明快で「お客様がいるのは現場で、僕らはお客様からいただいたお代で給与をもらっているから」。
組織としての意思決定も、個性を尊重しつつ遊津さんが最終ジャッジ。それは自らが現場に立ち続けてきた自負に支えられている。
「僕が一番チームの理念である“食を通じて縁を結ぶ”を体現しているはず。お客様への目配りや気配り、空気の作り方、お出迎えからお見送りまで」
平均年齢が28歳と若く、指導する際の共通言語が必要と感じ、理念を明文化した8ヶ条を制定したのは約1年前。「主語はIじゃなくてWE」「ポジティブが最強」「当たり前の最高峰を目指せ」などを掲げた。
「気になることがあったとき、感情的にならずに指摘できる。結果、目指す姿が明確化し、同じ目標を全員で追っていけるチーム力が高くなりました」
現場に立ちながら後進を指導し、チームを勝利に導く。その姿はまさに部活のキャプテン。
「僕は焼き鳥が大好きなプレイングマネージャーなんですよね。だから、いわゆる経営者にはきっとなれない。ずっと商売人と職人のハイブリッドです」
焼き鳥業界の異端児は、リーダーとしても型破りといえる。
◆歴史を振り返る
・2019年⇒池尻大橋に『焼鳥やおや』を開業
・2020~2024年⇒『リバーサイドヤオヤ』『焼鳥やおや HANARE』『YAOYA TOKYO』など続々と新店をオープン
・2025年⇒『焼鳥やおや 総本店』として1号店がリニューアル。円山町『YAOYA Ba』がオープン。北海道・ニセコに進出
・2026年⇒恵比寿に『YEBISU YAOYA』が誕生
◆
2020年にストリートな立ち飲み『リバーサイドヤオヤ』を、2024年に焼き鳥酒場『YAOYA TOKYO』を、2025年に25歳以上が入店可能な『YAOYA Ba』を出すなど、キャラの異なる店を戦略的に生み出してきた。
生来の人タラシでもある遊津さんの優秀な人材確保により、将来的には海外の出店もちろん考えており、すでに素地はできつつある。世界へいざ!
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