TOUGH COOKIES Vol.70

「これって脈あり?」買い出しのはずが、気付けばシャンパン。彼との近すぎる距離感とは

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:「夜の世界のおかげ、今の私がある」28歳になった彼女が、男に媚びた過去を振り返り…

「ってことは、YUMEは私と契約を結んでくれるってことね!」

鼻息荒くYUMEの手を掴んだ公子の指先を、ともみは、「まだ結ぶと決めたわけじゃないんですよ」とやんわりと剥がす。

「条件次第で前向きに検討する、って話です」

気分を害した、とあからさまに、公子が眉を寄せた。

「やだともみ、タレントのマネージャーみたいなこと言わないでよ」
「その通りです。今日から私がYUMEのマネージャーなので」

「え?」と、公子とYUMEの驚きが重なる。

「私がYUMEのマネージャーになって、公子さんたちとの窓口になる。いいでしょ、YUME」

YUMEが戸惑いながらも静かに頷くと、ちょ、ちょっと待ってよ、と公子が苛立ち、慌てた。

「そんなの無理でしょ」
「どうして無理なんでしょう?」
「ややこしいことは、プロの大人に任せるべきって話よ」
「プロの大人?」
「そう。契約を何年ごとの更新にするかとか、給料制にするのか、歩合制か、どれくらいの利益配分が妥当だとか。経験がないと理解できないだろうし、弁護士を入れた交渉を仕切るなんて、ともみには無理だって言ってんの。業界のルールを甘く見ると――大けがするわよ」

脅すためか、語尾を強めた公子が哀れに見えて、ともみは西麻布の女帝こと、光江の言葉を思い出した。

「この街で生き残りたければ、ケンカを売る相手を間違えてはいけない。でもね、買わなきゃいけないケンカから逃げてもいけない。でないと、人生逃げ癖がつくからね」

― 光江さんに比べれば、どんな大人も怖くなくなるよね。

思わず笑いだしそうになった唇を噛みしめて、ともみは公子に視線を戻した。

「私、この街で働くようになってから、もう4年になるんですよ」

何を言いだしたのか、と公子の表情が怪訝に歪む。

「その間、色んな方と出会いましたし、随分可愛がってもらってきたんですが…その中には、あらゆる業界に顔が利く、公子さんがおっしゃる“プロの大人”的な方々もいらっしゃいますので、私がYUMEのマネジメントを始めたとしても、相談相手には困らないと思います」

ともみはYUMEに微笑み、その手をぎゅっと握ってから続けた。

「そんなプロの力を借りながら、今後私がYUMEの窓口になります。それがイヤだと仰るのなら、契約は結べません」
「…ともみ…あなた…」
「私たちは別に公子さんや真壁さんに頼る必要はないんです。YUMEがこれだけバズっている今、他にも契約を結んでくれるレーベルは沢山あるでしょうから」

この記事へのコメント

コメントする

コメントはまだありません。

TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

この連載の記事一覧