港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。
▶前回:16歳で夢を叶えた天才歌姫が絶望し海外逃亡。すべてを失った女が始めた「復讐」の全貌
確かに…当時未成年だったYUMEが、アイドルデビューというエサの元に整形を強要され、その加害者たちが、今や落ちぶれた松本公子はともかく、世界的に活躍する真壁リオだと告発するだけで、世間はざわつくだろう。けれど。
「証拠はないんだよね」
「はい」
YUMEが頷くと、ともみは自分自身を落ち着かせながら言った。
「真壁さんは今や世界的な売れっ子で、もう何年も先まで何億、何十億っていう資金をかけたプロジェクトが決まっているはず。だから彼女自身…というより、彼女の商品価値が消えると困る人達は、きっとそんなことは事実無根、名誉棄損だと訴えてくるよ。ビジネスとして彼女を失うことは大損失になるのだから」
「だから、ともみさんにも証言をお願いしたくて。私が違法に整形を受けたことを知っているのは…メンバーの中ではともみさんだけだから」
母も証言者になってくれると思います、と、いっそう熱が込められた眼差しを、ともみは静かに受け止める。
「それでも難しいと思う。私とYUMEのお母さんの証言があっても、あの2人が違法な整形を強要したという確かな証拠になるわけじゃない」
きっとこう反論される、と、ともみはYUMEから目をそらさずに続けた。
「整形は、どうしてもデビューしたかったYUMEが勝手にやったこと。運営側は何も知らなかった、ってね。未成年だって親の承諾があれば整形できるのだから、お母さんもグルだと言われるんじゃないかな」
「そんなこと…」
「まかり通らないと思う?」
グッと黙ったYUMEの、その沈黙がともみの胸に痛い。それでも復讐を始めた先に、起りうる未来を伝えておくべきだと、ともみは止まらなかった。
「あちらが名誉棄損で闘うと決めたら、どんな闘い方をすると思う?」
「…」
「私たちの告発がウソだと訴えるなら、まずは世間を味方につけるでしょうね。そのためには私たちを信用できない人間にしてしまえばいい。だから私たちの過去は丸裸にされる。隠しておきたかったことも全部。例えば、私の場合は…芸能界を辞めたあと、キャバクラで働いてたこと、ギャラ飲み的な飲み会に参加してたことかな」
ギャラ飲み…?と声に出さずに驚いたYUMEに、ともみは笑ってみせる。
「私にも荒れてた時期があったってこと。もちろん参加する飲み会はめちゃくちゃ選んでたよ。信頼できる女性の仕切りのクリーンな会…っていう言い方は変だけど、愛人契約とか身体の関係を望まれる会ではなかった。とはいえ、私も打算と計算の固まりだったし、晒されたら言い訳はできないよね」






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