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TOUGH COOKIES Vol.49

港区の夜の店で働くために、覚えておきたい暗黙のルール。知らない素人は痛い目に…

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:六本木の雑居ビルでの忘れられない夜。最悪の出来事が運命の出会いに繋がった瞬間とは

8年前の夏・六本木/西麻布の女帝・光江とルビーの母・明美の出会い


「あ~あ、どこの坊やだい、うちの番犬にケンカを売っちゃったバカは。狂犬になる前にとっとと逃げた方が、アンタたちのためだと思うけどね」

低い声で登場したその女性は、目の下に傷のある男性と、その背に庇われている明美を一瞥もすることなく追い越すと、3人のホストたちを、ふーん、と品定めするような口調で続けた。

「アンタたち3人とも目も鼻も、そっちの坊やは顎もだね。大金をつぎこんで作り替えたお顔が、ボロボロになったら困るだろ?」

そっちの坊やと呼ばれた銀髪が、慌てて顎を手で覆い隠した。地面に転がったままだった彼を、黒髪が抱きかかえるように立ち上がらせ、そのまま2人で後ずさりしていく。

「あ?なんだよ、このやたらとド派手なバアさん。おばあちゃんは、もうそろそろ、おうちでねんねする時間じゃないんですかぁ~?なぁ?」

同調を求めた金髪ホストが下卑た笑いで振り返った時には既に、銀と黒はエレベーターに逃げ込んでいた。おい、お前ら待てよ!と響いた金髪の声を断ち切るように扉が閉まり、2人はみるみる上昇していく。

目の下に傷のある男性の大きな背に庇われ、ようやく震えが落ち着いてきていた明美にも、今登場した女性は、金髪の言う通りに「おばあさん」であり、「派手」にも見えた。けれど。

― 身に着けているものは…。

縦にも横にも迫力のある体を包み込みこんで輝くボルドーのロングドレスは、ただのサテンではなくシルク。しかもかなり上質な。

国内外の要人も訪れる老舗料亭で育った明美は、祖母や母から、料理の素材だけではなく、日常品から芸術品に至るまで、その価値を正しく判断し、“本物“を見極められるようにと、知識を叩きこまれるようにして育った。

だからわかる。ドレスだけではなく、耳たぶや首元で光るアクセサリーも、この女性が身に着けている全てが超一級品で、選ばれた人だけが手に入れられるものだ。

「おばあちゃん扱いしてくれるつもりなら、その口の利き方はなおさら宜しくないねぇ。お年寄りには優しくしなさいっていうのは、世界中の常識だろうが」

威勢がいいのもほどほどにしないとねぇ…と女性は金髪にずんずんと近づいていく。

ビルの床を鳴らす足音には重厚感があり、マキシドレスの中に隠れているのは太目のヒールだろうか。175cmほどありそうな金髪ホストと並んでも引けを取らないばかりか、女性の方が大きく見えた。

「クソガキが。この街で生き残るためのルールを一つ、教えてやるよ」

ドスの利いた、けれど楽しそうでもある声。金髪がヒッと小さく息を飲み、腰を抜かしたように尻もちをついた。明美からは女性の背しか見えず、その表情は分からないのに、なぜか背筋がゾクッと震えた。

はぁ~とため息をついて、「年寄りをしゃがませるもんじゃないよ。最近は膝の調子もよくないっていうのに」と、金髪と同じ目線になった女性の横顔が見えた…と明美が思った瞬間、その赤い唇が、にぃっと動いた。

金髪は遠目にも分かる程に怯え、その目尻に涙が浮かび、頬を落ちていく。あらあら、とその涙を拭った女性の指は年齢を物語ってはいたけれど、爪先には上品な光沢のボルドーのネイル。薬指には巨大な緑色の石…おそらくエメラルドの指輪が嵌められている。

キレイ…と明美が見とれた瞬間、いいかい?と、声が響いた。

「小者は小者なりに、自分の器を知って分をわきまえること。逃げてった2人の方がよっぽどおりこうさんだったってことさ。この街ではね…噛みつく相手を間違えちゃ絶対にダメだ。じゃないと…」

この記事へのコメント

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反社だろうと店ごと(結果的にビルまるっと) 抹殺した光江さん、お見事!
2026/02/03 06:1119
No Name
明美さんやる事なす事裏目に出るタイプなのか何なのか、読んでいてすごくもどかしい。ルビーとようやく話せる時が来たならもう全力で土下座したまま号泣する位に気持ちが溢れて、そのまま謝り続けるとかすればいいものを明るく振る舞いたい云々。 だからルビーも飛び出して行ってしまったんだよね。余命宣告されてるなら本音でぶつかって欲しいけど…ともみがどうお膳立てするか。
2026/02/03 05:5514
No Name
老舗料亭で育った明美。本物を見極められるように叩き込まれた? サテンとシルクの違いはわかっても誠実な男性と不誠実な男性の見極めは全くダメだった..
2026/02/03 06:3411Comment Icon4
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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