A2:結婚に対して何も考えていない姿勢に絶望したから。
特に大きなケンカもなく、私たちの関係は順調だったと思う。でも時間が経つにつれて、気になっていたことがある。
― この人、結婚する気あるの…?
“将来的にはいつか”と思っていることは何となく伝わってはくる。しかし、それがいつになるのか、まったく読めないしわからない。
段々と諦めモードに入っていたけれど、私の中で決定的な出来事があった。
それは、とある土曜日の午後だった。最近彼が仕事で忙しく、気がつけば、久しぶりにのんびりできる週末だった。だからソファでゴロゴロしている裕也に話しかけてみる。
「裕也くん、今夜何食べたい?」
「うーん。何でもいいな」
「じゃあ久しぶりに、腕振るっちゃおうかな」
久しぶりの、二人の時間。彼のために美味しい料理を作りたくて、張り切ってしまった。
「これ、全部葵が作ったの?すごくない?」
「へへ。久しぶりに二人で週末ゆっくりできるから、張り切っちゃった。奮発して、良いワインも買って来たんだよ」
「え〜ありがとう。本当に最高だよ」
結構頑張った手料理に対し、裕也もすごく嬉しそうにしてくれている。それだけで、私の努力は報われた気がしていた。
しかし一通り食べ終わって、22時を回る頃。裕也が、突然「今から出かける」と言い始めた。
「ごめん葵。タカシから連絡があって、今近くで飲んでいるらしくて、顔出さなきゃかも」
「今から!?」
今日は、二人で過ごせると思っていた。それに、彼のためにたくさん料理を作ったのに、私との時間より男友達を優先させる裕也。
「アイツ離婚したばかりだから。話を聞いて欲しいんじゃないかな。行って来てもいい?」
「いいけど…今からって。裕也君自身もだけど、周りも自由な人が多いよね」
彼が結婚に対して二の足を踏んでいる理由に、裕也の友人関係も大きく影響していると思う。彼の周りは結婚しても上手くいかなかったり、独身でまだまだ遊んでいる人たちが多い。
だから本人も、そういう男友達といるのが楽しいし、諦められないのだろう。
「そう?男飲みなんて、こんなものじゃない?」
「わかった。早く帰ってきてね」
そう言ったものの、この日裕也が帰ってきたのは午前2時を過ぎていた。
そして翌朝。私にとっては、これがトドメだったと思う。
「タカシの元奥さん、結構強烈だったみたいで。財産、ほぼ取られたらしい」
「何で?よっぽど、タカシさんが悪いことしたの?」
そんな話をしていると、裕也は平然と、ひどいことを言い放った。
「それはわからないけど…女性って怖いよね。結婚したら豹変するって言うし。親権も取られちゃったらしい」
「そっか…。それはタカシさん、落ち込んでいるね」
「そうなんだよなぁ。でもやっぱり、結婚はリスクあるし、子どもいるとさらに大変そうだから、絶対に今はいらないな」
― …嘘、だよね?それを私の目の前で言う?
驚き過ぎて、一瞬言葉に詰まる。裕也は、何も気がついていないのか、さらに言葉を続ける。
「そうなの?」
「え、葵は欲しいの?子ども」
「それはわからないけど…。年齢的にもそろそろ真剣に考えないといけないしね」
「女性は大変だね」
怒りなんて湧かない。ただ絶望、と言った方が感情的に近いかもしれない。
裕也は、私のことなんてまったく考えていない。
今が楽しければ良くて、自分が縛られたくない、自由でいたい、やりたいことをやりたい…という、自分の欲望しか考えていない。
私のことを本当に思うなら、私の年齢をもっと考慮するはず。将来のことをしっかり見ようともせず、ただ現実逃避をしている。
30代前半という、大切な3年間。
私にとっては、あまりにも長くて大切な時間。それなのに責任を取ろうともしない。
そして何より、男の人の1日と、女の人の1日の価値は違う。とても貴重で大事な時を、彼は自分軸でしか生きていない。
この先彼が変わるのかと言われたら、確証はない。むしろ彼の自由奔放さと、結婚願望のなさが急激に変わるとは思えない。
その事実を悟ってしまい、私は考えた。
― 好きだけど、自分のことを大切にするなら早めに決断しないと…。
私はいつまでも責任を取らず、時間だけがただ無情に過ぎていく関係に終止符を打つ決意をし、次の人を探し始めた。
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妻が夫に対してボイコットを発動したワケ







この記事へのコメント
ちょっと何に対して言ってるのか分からない。別れる最大の理由は結婚する気も無いし子供も要らない事でしょう。