日本のケバブは鶏肉や牛肉を使う店も多いが、トルコの伝統にならったその店では、ラム肉を主流にした“本格的なケバブ”が食べられると人気で、何種ものスパイスで下味をつけたラム肉を、串に何枚も重ねて巻き付けて大きな塊にし、ゆっくりと回しながらじっくり炭火で焼く。
それを、注文を受けてからそぎ落とし、たっぷりの野菜と一緒に、焼きたてのピタパンに挟んで出してくれる。
ミチがもぐもぐと噛むたびに、スパイスやソースなのか食欲をそそる香りがふわっと流れる。かなりのボリュームに見えたケバブサンドを、何口かであっという間にたいらげると、ミチはギロリとルビーを睨んだ。
「で?」
6人掛けのソファー席。元恋人同士が向かい合い、メグの隣にルビー、ミチと並んでともみ。ルビーが仕切ったこの席の配置はナゾだ。
「4人で会う必要がある話なんだろうな?」
「もちろん。色々隠しても、ミチ兄(みちにい)にはバレちゃうと思うから、たんとーちょくにゅーってヤツで聞きますけど」
「お前の単刀直入はイヤな予感しかしないな」
「今もメグさんのこと、好きなの?」
単刀直入を超え過ぎた剛速球が放たれ、メグも、そしてともみも固まり、ミチは、「な…」と、口をパクパクとした。そんなミチを見たのは初めてだと、ルビーだけがきゃっきゃとはしゃぐ。
「そんなに慌ててるのは、まだ好きだってことで正解?」
「る、ルビーちゃん」
メグの遠慮がちな静止を全く気にせず、ルビーは続けた。
「たぶん、メグちゃんは今も大好きなんですよね、ミチ兄のことが」
「…」
「ルビー、なんでそんなことをお前が聞く?しかもこの話題を今、4人で話す必要があるか?他人の事情を踏み荒らすようなまね、趣味悪いぞ」
非難を含んだ低い声に、ルビーが「だよねぇ~私も他人の恋愛に割りこむなんてイヤなんだけどさぁ」と笑いながら答えた。
「みんなで闘わなきゃ、光江さんには勝てないっしょ」







この記事へのコメント
そしてこれを考えた作家さんも素晴らしい!
でも、そうだよね光江さんだってあんな風に別れさせるような事しない🥺 ともみとルビーを試すのも含めてメグミチに対する親心や優しさからなんだろうね。