◆これまでのあらすじ
萌香は正輝と、結婚を目前に控えた婚約者同士。しかし正輝には、性別を超えた親友・莉乃の存在があった。
あまりにも近い莉乃と正輝の距離感に萌香はかつて激しく嫉妬し、2人で会うことを制限。しかしその一方で自身は男友達と酔いに任せてキスをしてしまうという失態を犯す。
莉乃は萌香の不貞の現場を目撃してしまったものの、9年付き合っているパートナー・秀治から「責任取れないだろ」と諌められて言わないことに。
結婚準備は順調に進み、正輝・莉乃・萌香・秀治の4人の友情が紡がれていた。
▶前回:「幸せだけど…」結婚まで秒読み段階で、30歳男が婚約者に感じた妙な違和感
「明日の結婚式、雨になったらどうしよう」
昨晩ベッドの中であれだけ怯えていた萌香を、神様も少しは気の毒に思ってくれたのかもしれない。
頭上に広がる11月の空は秋らしく高く澄み切って、どこまでも青い。ガラスでできたチャペルには木漏れ日が射し、石造りの床に優美な模様を作っていた。
「それでは、新婦の入場です」
式を執り仕切る牧師の声掛けで、聖歌隊による厳かな讃美歌が始まる。
と同時にガラス戸の向こうから、ご両親に付き添われた新婦がゆっくりと入場してきた。人生で最も美しい、萌香の姿だ。
お義母さんにベールを被せてもらい、お義父さんに手を取引いてもらう。
バージンロードをゆっくりと、しかし着実に、萌香が歩みを進める。
そのゆるやかな一歩一歩はまるで、萌香と俺がゆっくりと心を寄せ合った月日そのもののようで、俺はうっかり感極まってしまいそうになる。
「萌香。すごく綺麗だ」
「えへへ…ありがとう」
お義父さんから萌香の手を受け取り、ふたり聖壇の前で肩を並べる。ベール越しに見つめ合う俺たちに向かって、牧師が誓いの言葉の問いかけを始めた。
いよいよ、その時が来た。ずいぶんと長いこと、この瞬間に焦がれ続けていたように思う。
問われるまでもなく「はい」と答える準備をしながら、俺はこの静寂に耳を澄ます。
光溢れるチャペルに、牧師の声だけが響いた。
「新郎、秀治。あなたはここにいる萌香を、病める時も健やかなる時も富める時も貧しき時も、妻として愛し敬い、慈しむ事を誓いますか────」






この記事へのコメント
でもスッキリした、正輝も莉乃も友情云々やってて無神経だった事は確かだし! 秀治さんが幸せならそれでいい。
でも、「まさか最後は萌香と秀治でハッピーエンド?」というコメント前に見た気がする。大どんでん返しは面白いけど、細かい部分が全く見えなかったのはあまりにも残念。 もしかして、season2に続く?🤣