A2:最初から相談をされると、恋愛対象ではなくなる。
しかし2度目のデートの約束をしたものの、結局1ヶ月も空いてしまった僕たち。たぶん、これくらいから答えは出ていたのかもしれない。
2度目のデートは、悩んだ結果前回とは違う趣の店にした。
前回はかなり気合を入れていたけれど、今回はもうどうなるかわからない。
― そこまで気合を入れる必要はないかな…。
何が何でも、美沙を落としたいわけでもない。でもせっかく食べるなら、美味しいところが良い。そう思い、僕がたまに行く、西麻布にあるこぢんまりとした、居酒屋寄りの小料理屋を予約してみた。
「今日もお店を選んでくださり、ありがとうございます」
たぶん、店の雰囲気を見て想像していた感じと違っていたのであろう。それでもちゃんとお礼を言ってくれる美沙の態度は、とても好感度は高い。
そして実際に食事が始まると、とても美味しそうに食べてくれている。
「…美味しい!」
「でしょ?外観はちょっとイメージと違うかもしれないけれど、本当に美味しくて。お気に入りの店なんですよ」
「そうだったんですね。さすが孝之さん、グルメですね」
「良かった、喜んでもらえて」
― 良い子なんだよな。
改めて思ったが、やっぱり途中から雰囲気が変わってきた。
「孝之さんって、優しいですよね」
「そうですか?」
「優しいってよく言われません?」
「どうだろう…下に妹がいるからかな。女性には優しくするものだと、親から教えられてきたので」
「孝之さんに妹さんがいること、わかる気がします。会うと安心するというか、何というか…。つい相談したりしたくなっちゃうんですよね」
― あぁ、こっちのパターンか。
なぜか、僕は昔からよく人に頼られる。別に頼られるのが嫌なわけではないし、むしろ好きなほうだと思う。人が困っていると助けたくなるし、手を貸してあげたくなる。
「たしかに、頼るより頼られる場面の方が多いなぁ。美沙ちゃんは?ご兄弟は?」
「私は末っ子です」
「あ〜何となくわかるかも」
でも、恋愛となるとそれが当てはまらない場合もある。
好きな人には甘えたいし、弱い部分を見せたくなる時もある。
ただそれは上手く行かないようで、美沙のように、初回から愚痴を言われて相談に乗ったりすることが多い。
今日だって、途中までは良かったのに、気がつけばまた相談話だ。
「そういえば、この前孝之さんに相談をさせて頂いた、仕事の話なんですけどあれから続きがあって」
「ほう。どうなったの?」
「同期がたくさん辞めていくって言ったじゃないですか。だから私も、転職しようかなと思っているんです」
「挑戦するのは良いことだからね。ちなみに何系に転職するの?」
「保険の仕事は好きなのですが、外資系の保険会社へ行くか。それか、まったく別の職種へチャレンジするかで悩んでいます」
― 僕、転職エージェントなのかな。
別に、これが付き合っている彼女だったり、奥さんだったり。はたまた、仲の良い友人や、かなりデートを重ねている相手ならば全然良い。真剣に話を聞くし、一生懸命相手のために何がベストか考える。
しかし美沙は、まだ2度目のデートだ。
しかも初回から相談モードで来られると、恋愛対象として見られなくなり「この女性と絶対付き合いたい」とは思わない。
「美沙ちゃんならどこでも活躍できそうだけどね」
適当に流しながら、僕の頭の中は全然違うことを考えていた。
― このデート、つまらないな、と。
結局適度な愛想笑いとツッコミを入れつつ、デート自体は盛り上げた。しかし別に恋愛として好きという感情も湧かなさそうなので、このデート以降、僕から美沙に連絡をすることは無くなった。
▶【Q】はこちら:初デートは高級フレンチ、2回目のデートは居酒屋をチョイス。35歳男性の意図は?
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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男がイキがった結果…
この記事へのコメント
美沙の陰気?ネガティブな人柄はあまり男性からは好かれないと思う。 ただ孝之も穏やかで優しい仮面の下は気難しい性格っぽいから、なかなかいい女性とのご縁は無いのかもしれない。
それを事前に阻止するためにも孝之は妹がいる云々の話した時に「女性から相談モードで来られると恋愛対象として見られなくなってしまう」と言えばよかった。