熱を残した空が少しずつ色を変え、ゆっくりと次の季節へと向かっている。移りゆく日々の中で、新しい味との出合いが、日常を豊かにしてくれる。
東京に生まれたばかりの“とっておき”を、このタイミングでこそ味わってほしい。
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柔らかなアースカラーの空間で、比類なき美味に浸る特別な時間を
この店がオープンしたというニュースは、のちに東京のレストランシーンの歴史に残る一大事として記録されるかもしれない。
そんな予感を抱かせる大物ルーキーが、今年6月南青山の一角に出現した。
陣頭指揮を執るシェフ・柴田秀之さんは自身の最初の店『La Clairiére』を2024年に閉店し、この1年間は『mærge』の開店準備に専心してきた。
この店を開くにあたり目標に掲げたのは、ずばり「三ツ星を獲って世界へ行く」。荒唐無稽にも思えるスケールの大きな夢を叶えるべく、すべてにおいて圧倒的な完成度を目指す。
目に舌に、美しく満ち足りる。珠玉の11品が紡ぐ渾身のコースを
高級食材のみに頼らず、無名ながら優れた食材に光を当て、高い技術で昇華した料理。
シェフパティシエ・奥村充也さんによる美しいデセール「Perfume」。桃、ローズゼラニウム、フランボワーズetc.の味と香りが重なり合う。
「パンデロロメインのグラデーション」。
薪で焼いたロメインレタスにホヤのリゾットやパッションフルーツのソースを合わせた個性的なひと品。
芳しいソースに高揚する「キスのクレープ 黒トリュフとバニラ」では、南半球から届く冬のトリュフを盛夏に味わう愉悦を。
産卵を終えた老鶏を食材に、という取り組みから生まれた「荒間鶏のバロチンヌ」。
美味を詰めた宝石箱のようなひと品
四角く焼き上げたバターが香るブリオッシュにキャビア、リエット、チョリソなどの具材を選んで挟んでもらう「キャレドブール」。
熟練のメートル・ドテルによる流麗なワゴンサービスは、レストランならではの楽しみだ。
料理はすべてコース(¥36,300)からの一例。
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アッシュカラーで統一され、さりげなく見えて贅が凝らされた空間。
そしてフランス料理とレストランを知り尽くしたベテランのサービススタッフ……と、実に隙がない。いち早く体験すべき一軒だ。
鮮烈なハーブの香りや香辛料の刺激が、夏の夜を盛り上げるアジアンダイニング
高い人気を保ち続けるレストランもあれば高感度な酒場もあり、と常に注目を集めているグルメエリア“渋二”こと、渋谷2丁目界隈。
今年7月、ここにまた1軒ブレイク必至のホープが誕生した。
その名も『Night Market』はタイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジア諸国の料理と、新鮮な食材や日本ならではの調味料、発酵技術などを融合させた鮮度の高いエスニックと出会えるダイニングだ。
オープンキッチンで腕を振るうシェフ・内藤千博さんは、フレンチレストラン『L'Effervescence』を経て、『Ǎn Ði』では料理長として独自のモダンベトナミーズを確立した人物。
ベトナムのフォーやタイのソムタム、マレーシアのサテなど各国が誇る伝統的な料理を、味の骨格は守りつつ日本人の感性にフィットするよう、より軽やかに。
「ラムときゅうりのサテ ヨーグルトソース」¥1,600(1本)。
サテには石臼で叩いたオリジナルスパイスを、ヨーグルトソースにはコブミカンの香りを添えて。
内藤さんが選んだアンティーク家具が並び、南国のリゾートを思わせる空間で、ワインを片手に舌鼓を打ちたい。
多彩な旨みで魅了する料理の“kiso”は出汁。移ろう四季をその一滴に封じ込めて
素材コンシャスな創作料理を楽しめる『nou』と四季折々の食材を使った和食×和酒の店『iro』。
中目黒で名を馳せるふたつの人気店が手掛けるニューフェイスが、麻布十番に誕生した。
その名も『kiso』は、味わいの“基礎”ともいうべき「出汁」にフォーカスした料理を提案している。
古くから伝わる“乾物類=出汁”の色調を落とし込んだという空間は、極めてクール。
かつお、昆布、煮干しなど出汁の定番素材はもちろん、肉や魚介類、きのこ類の旨みも、料理に巧みに盛り込む。
¥16,500のおまかせコースの品書きには、料理名に出汁の素材が併記され、その幅広さに興味をそそられる。
コースの前菜「雲丹 とうもろこし そうめん カボチャ」は食材の組み合わせの楽しさと目を引く盛り付けが魅力。
またアラカルトメニューには「唐墨とキャビアの温かいビーフン」など中国料理のエッセンスを加えた品もあり、目移りしてしまう。
¥10,000のアルコールペアリングではワイン、日本酒、シェリーなどを少量多種で楽しめる趣向。
食べ込んだ大人も満ち足りる新星だ。
欅の質感を肌で感じながら、心静かに大人の夜が深まっていく
料理人の感性が伝わるコース料理は確かに素晴らしい。だが、それも度重なれば辟易してしまうもの。時には、時間に縛られず食べたい料理を自由気儘に楽しみたい――。
そんなフーディーらにうってつけの一軒が、この6月、東麻布にオープンした『寛心』だ。数々の星付き店を手掛けてきた慧眼の士・林 亮治さんが仕掛け人と聞けば、食指が動く方も多いのでは?
日本料理ならではの折り目正しいもてなしの心を大切に、ゲストには気軽に楽しんでもらえるようアラカルト中心のメニュー構成に。
店を任されたのは『京都𠮷兆』出身の中井甚恭料理長。
おまかせ3品で、匠の技と四季の真髄を。そのあとはアラカルトで自由に嗜む
「まずは先付、お椀、お造りと和食の基本的な味を3品お出ししたあと、好きなものを選んでいただければ」
料亭で培った感性と技術をべースに自由な発想で料理を提供。「鱧カツ」や「じゃが肉」など総菜的な一品も楽しみだ。
滑らかな中にぷるんとした弾力がある「胡麻豆腐」。
夏の定番「牡丹鱧のお椀」。
伏見から取り寄せる白菊水と利尻昆布で取る出汁はすっきりとして滋味豊か。
「刺身盛り合わせ」は、左下から時計回りにつぶ貝、まぐろ中トロ、縞鯵、アオリイカ。つぶ貝は軽く炙り、アオリイカは細かく切れ目を入れ甘みを引き出すなどひと手間が光る。
この3品(¥6,600)から始めて、あとはアラカルトで。
「太刀魚の炭火焼き」¥2,970。
肉厚の太刀魚は鹿児島産。魚は豊洲の他、高知や京都の中央市場から仕入れる。

「鰻の卵とじ土鍋ご飯」1人前¥3,000。炊きたての白飯に鰻の蒲焼きと溶き卵も加え、蓋をして仕上げた一品。余熱で火を入れたトロトロの卵と白飯、そして蒲焼きが三味一体。王道の美味しさながら演出の妙が光る
飲みを主体に肴をつまむもよし、コースをカスタマイズするもよし。自由度の高さも魅力だ。
レンガの温もりとともに。感性を宿した美食のアトリエ
ちょっと長めの店名『L'ALCHIMIA ASTRATTA』は、イタリア語で「抽象的な錬金術」という意味なのだそう。
シェフの鈴木慎平さんは、都内の名店でカメリエーレを経験後、渡伊。
イタリアの食文化の中心といわれるフィレンツェやトスカーナ州の港町であるリヴォルノ、“パスタの聖地”とも称されるエミリア=ロマーニャで経験を積んだ。
特に、アグリツーリズモ(農園が営む宿泊施設)にしてミシュランの星を有する『リストランテ カ・マティルデ』ではスーシェフに。敷地内で育った採れたての素材を使って料理を作れる贅沢な環境で、食材を選ぶ目を養った。
それだけに、メニューには宇和島の魚介類や故郷・焼津産のレモン、鹿児島「ふくどめ小牧場」の豚肉など吟味した食材名が並ぶ。
「ニュージーランド産グラスフェッドの仔羊のグリル」(¥3,960)はロゼ色に焼いたラムをフォンドヴォーの旨みとヴィネガーの酸味を融合させたソースと。
「“トルテッリ”ヴェルデ 焦がしバターのソース」¥2,200。
フダンソウとリコッタチーズ入りのパスタはエミリア=ロマーニャの郷土料理。
「ペストジェノベーゼで和えた冷たいカッペリーニ ウニ添え」(¥3,080)は、バジルだけでなくミントも忍ばせ爽やかに(価格は入荷状況で変動)。
店名の“錬金術”には「原石を磨き、価値あるものを作り出す」という意味合いが。
食材の本質を捉え、そのエネルギーと自身の技術で美味なるひと皿へと昇華させると意欲に満ちる。
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