その日の夕方。
私たちは、近所の焼肉店を訪れた。
美桜は大好きなハラミとご飯を交互に食べながら、玉入れやかけっこの話を途切れなく続け、雅史は肉を焼きながら相づちを打っている。
「頑張ったね」と微笑む雅史は、娘を心から愛する良い父親そのもの。
私たちは、家族としてちゃんと成立している。
そのことに安堵と虚しさの両方を感じながら、虚しさの方をレモンサワーで流し込んだ。
帰宅後、美桜は相当疲れたのだろう。髪を乾かしている間も歯磨きの間も、ウトウトと眠そうで、寝室まで抱っこして運ぶとすぐに寝てしまった。
美桜の身長は100cmを超え、体重も16キロになった。いつまでも抱っこをしてあげたいけれど、限界が近づいている。
そう思うと急に寂しさが湧き上がり、私は小さな寝息を立てている美桜の寝顔を、そっとスマホのカメラで撮影した。
不思議と寝顔は赤ちゃんの時から同じだ。そう思ったら妙に安心して、私は「おやすみ」と小声で言ってから髪を優しくなでた。
リビングに戻り、洗い物をしていると「案の定、爆睡?」と言いながら雅史もキッチンにやってきた。
「うん。体力モンスターだと思っていたけど、さすがに疲れたんだね」
私が言うと、雅史は「親たちも応援だけでヘトヘトだったもんな」と言いながら冷蔵庫から瓶のペリエを取り出し栓を開けた。
パーソナルジムに通い出したおかげなのか、雅史の胸板が以前より厚みが増し、腕も太くなっていた。
けれど、その腕に最後に抱かれたのはいつだったかも、今はもう思い出せない。
雅史がソファに座り、スマホをいじりながらグラスに炭酸水を注いだのを見て、私は口を開いた。
「ねぇ、雅史。今日さ、赤ちゃん抱っこしてる人とか、妊娠してるママ多くなかったよね」
「ん?そうだったかな」
“何が言いたいの”と無言で訴える圧力に耐えながら「あのさ…」と切り出してみた。
この記事へのコメント
??
本当に何が言いたいのか分からない😆
由里子、バリキャリと言うより会社にしがみついてるだけで大して仕事出来ない人だったりする?