ピラティスの後、まりかと向かったのは東京ミッドタウンの中にあるインド料理屋さん。
平日だというのに、ランチビュッフェ目当ての客で席の8割は埋まっていた。
「1時間があっという間だったよ。疲れすぎてもいないし、物足りなくないもない…こんなの初めてかも」
私がサラダを食べながら言うと、まりかは「それは、愛梨ちゃんの体の使い方が上手いからだよ」と笑ってくれた。
柔らかい笑顔はなんだか心地良くて、出会ったばかりなのに、ずっと前から友達だったような気さえしてくる。
「ごめん!愛梨ちゃん。申し訳ないんだけど、この後打ち合わせが入ってるから、あんまり時間がなくて…さっそく本題に入ってもいいかな」
まりかが言うので、胸がドキンと鳴る。
「うん…」
あの日から、私は夫の顔をまともに見ることができていない。だから、意識的に考えないようにしていたし、他のことに没頭しようと努力していた。
けれど、まりかに「夫が浮気しているかも」と相談してしまった以上、話さないわけにはいかないこともわかっていた。
「旦那さんが女の子と入っていったビルって、どれかわかる?」と、まりかがスマホの地図アプリを開き、身を乗り出した。
私は「この辺かなぁ…」と地図を指差し、将生と女が入っていった雑居ビルの写真も見せた。
「ここ?ああ、なんか見覚えあるかも。っていうか、あたしのクライアントで、このビルのオーナーの奥様がいるわ。ピラティスの個人レッスンしてるんだけど、THEって感じの人。THE港区のマダム」
とまりかが言った。
さらに、「旦那さんには問い詰めたりしたの?」と顔を覗き込んでくるので、私は言葉を選びながら答える。
「ううん。もっとちゃんと証拠がないと、逆ギレされるか誤魔化されそうだから…」
「じゃあ、見てみぬフリで終わり?」
まりかはカレーをすくっていたスプーンを置いて、まっすぐこちらを見た。
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あああ
って?