Q1:男が結婚を決めた理由は?
鉄二と出会ったのは、食事会の席だった。日系の航空会社で客室乗務員をしていた私は身長が167cmあり、モデル体型で顔もどちらかというと整っているおかげか、デートのお誘いは絶えなかった。
そんななか、外資系投資銀行相手の食事会があり、ここぞとばかりに気合を入れた私。
そこにいた一人が、鉄二だった。
東京出身、東大卒の外銀勤め…。
滅多に市場に出てこない、超優良物件だ。もちろん私は最初から彼に狙いを定めた。食事会の間、ずっと隣の席をキープし女性としての武器を使えるだけ使った。その結果、彼は見事に私の策にハマったのか、連絡先をこっそり聞いてきた。
ここからは、簡単だった。
デートは毎回、一軒目で帰る。一見、派手に見えるかもしれないけれど、どれほど真面目な生活をしているかをアピールしてみる。
決め手となったのは、三度目のデート。
いつも通り、ブランド品を一つも持たず、超シンプルな服装で私はデートの場所に指定された、「コンラッド東京」に入っているバー&ラウンジ『トゥエンティエイト』へと向かう。
「鉄二さん、お待たせしちゃってすみません」
「ううん、俺も今きたところだから」
このバーは、私のお気に入りの場所でもあった。
28階から見える東京の夜景は絶景で、いつ来ても凛とした気持ちになると同時に、心が華やぐ。
「本当に、綺麗」
夜景を見ながらそう呟くと、目の前にいる鉄二はとても優しそうな表情を浮かべている。
「祥子ちゃんって、意外だよね。派手そうに見えるのに、あまり店とか知らないし、実はとっても家庭的な感じもするし…しかもご実家もちゃんとしているって最高だよね」
「まぁ実家は一応、都内にあるけど…でもそうなの。みんな、外見で判断してくるけど、実は家に引きこもって動画とか見るのが好きだし」
実家は都内といえども、ギリ都内だ。でもそれを詳しく言う必要は、今はない。そして“家にいるのが好き”とアピールすることも、この手の男性には有効だと思う。
「それがいいよね」
「本当に?私生活が地味すぎて、恥ずかしいよ」
この言葉を、どれほど鉄二は信じてくれていたのだろうか。
33歳の私は、かなり焦っていた。
なぜなら、周りはみんなお金持ちと結婚し、幸せな家庭を築いている。それなのに、いまだに私は仕事を続け、独身のまま…。
いくらデートの誘いが絶えなくても、自分の年齢を客観的に考えると、早く結婚相手を見つけるのが最善の策だとわかっていた。
だから私は、どうしても鉄二で決めたかった。私の描いている幸せな将来を作ってくれるのは、彼しかいないと思ったから。
「でも鉄二さんも、意外と言えば意外かな。お仕事すごく忙しそうなのに、こうやって会う時間作ってくれて…嬉しい」
「それは、俺も会いたいなと思ったから」
「そうなの?嬉しい」
「実は最近、婚約破棄してさ…だからこのタイミングで祥子ちゃんに会えたのは運命なのかなって。親とかにも会っていて、式場も予約していたから結構辛くて」
今から考えると、39歳になる鉄二も鉄二で、結婚に焦っていたのかもしれない。
「そうなの?それは大変だったね。でもご縁がなかったのかも…それに、その彼女のおかげで、こうして鉄二さんに会えたからむしろ感謝しないと♡」
この反応が良かったからだろうか、この日タクシーの中で「うち来る?」と誘われた。
しかしもちろん丁重にお断りをした結果、五度目のデートでなんとなく交際が始まり、半年で入籍に至った。
自分でも、あまりにもトントン拍子で驚いた。
しかし一緒に暮らし始めて、なぜ彼がこんなにも早く結婚を決めたのか、なんとなくわかることになる…。
この記事へのコメント
ただコメント数のために考えたようなわざとらしい話でめちゃくちゃつまらない。