Q2:男がたった一度のデートで終わらせた理由は?
「外資系投資銀行なんですか?すごい!でも大変そうですよね」
「そうなんですよ。意外に、精神的にも体力的にもキツイことは多いですかね」
「ですよね?私だったら絶対にできないです」
イメージでしかないけれど、億単位で稼ぐ分、朝から晩まで働き詰めな感じがする。そのせいか、聡は想像していたより線が細く、ちゃんと食べているのか心配になる程だった。
「聡さん、少食ですか?」
「そんなことないですよ!」
「そうなんですね。細いから心配になっちゃって」
「え〜!こう見えて、一応筋トレしているのに」
そう言いながら、腕まくりをした聡。たしかに言われてみれば、しなやかで綺麗な筋肉がついていた。
「細マッチョなんですね!かっこいい」
「そういうことにしておいてください(笑)」
お互いに飲み物のグラスを片手に笑い合う。そのタイミングで、大きな鉄製のカートと共に、名物の「プライムリブ」が運ばれてきた。
「わ〜〜すごい!何度見ても、感動しちゃう♡」
「すごいですよね」
「美味しそう…!!」
美味しいものを食べて、「美味しい」と共感できる感性もあるから、食事を一緒に楽しむこともできる。
何より会話も一方通行ではなくちゃんとキャッチボールもできているし、何も悪い点はない。
「私、このマッシュポテトも好きで」
「わかる!これ最高ですよね。愛菜さん、この店結構来ていますか?」
「あー…何度か?」
しかしこれは、言ってから「もしかしてこの返信はNGだったかな?」とは思った。でも東京に住んでそれなりに遊んできた以上、この名店を知らないはずがない。むしろ「行ったことないです、初めてです♡」なんて言うほうが不自然だろう。
「そりゃそうですよね」
「でも何度来ても嬉しいお店なので!」
「よかったです」
この段階で、聡も楽しそうにしていたし違和感は何もなかった。いたって普通のランチで、マッチングアプリの初対面にはよくあるような会話が続いていく。
「ちなみに愛菜さんは、なんでアプリを?」
「私は早く結婚したくて。聡さんは?」
「僕もいつかは結婚したいですが、すぐに結婚というよりは、誰か良い人がいたらいいな…くらいの軽い感覚です」
「なるほど…」
1秒でも早く結婚したい私にとって、これは誤算だった。でも顔に出ないように、すぐに話題を変えたつもりだ。
「ちなみに、奥さんや彼女には稼いで欲しいタイプですか?」
「どうだろう…。あまり相手の年収は気にしないかな」
さすが、稼いでいる男は良いことを言う。
私もある程度生活はできるくらいは稼いでいるけれど、贅沢できるほどではない。
「そっか、良かったです。私の稼ぎだと贅沢できないので…。ちなみに、家事は奥さんにして欲しいタイプですか?」
「それもどうだろうな…。アウトソーシングでもいいかなと思っています」
「ですよね!」
これも嬉しい言葉だった。正直、家事は苦手だから。でもそれをさすがに言うなんてことはしない。
「相手に経済力がある人だったら、家事は代行がいいなと思っていて。でももし必要だったら、もちろんするんですけど」
「効率化が一番ですから、いいんじゃないですか?ところで愛菜さん、ご出身はどちらですか?」
「私は埼玉出身で…」
そんな会話で盛り上がっていた。
そして美味しく楽しくランチを終え、スマートに会計を終えてくれていた聡にちゃんとお礼も言った。
「今日はありがとうございました!とっても楽しかったです」
「こちらこそです。じゃあまた」
「はい、ぜひ」
しかしここで、連絡先を交換する話にもならず、すっと解散になってしまった。
― あれ?この終わり方は…。
なんとなく、ここでわかっていた。もちろんアプリ上でも聡から連絡は来ることもなく、たった一度のデートで終わってしまった私たちの関係。
マッチはする。会いもする。でもその先が進まない。どうして私は、二度目に続かないのだろうか…。
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▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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男が一度のデートで「二度目はない」と判断した理由は?
この記事へのコメント
粗相だらけだったけどww なかったと思う所からしてもう終わってる。 お金持ちの男性と結婚したいから、前時代的だけど料理上手をアピールしたり実際裕福な暮らしが出来る男性と結婚したなら専業主婦として家の事はやりますと言う女子はいるけれど。自分の稼ぎだと贅沢は出来ない、でも家事は代行がいい(= 家事出来ません/やりません) まで言うアホ、そうそういない。