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30歳になりまして Vol.8

「このままだと婚期逃す?」結婚の話をせずに同棲をスタートした30歳女の後悔とは

『結婚なんて、まだそんなに真剣に考えたことないからね』

先週聞いた、蒼人の本音がまだ胸につかえている。

“同棲するなら、期限を決めてから。じゃないと、婚期を逃すよ”

どこかで聞いたようなセリフが、頭の中でずっとサイレンを鳴らしてるようだ。


10月最後の週。

私は、汐留のレストランで、ダンス部時代の友達と春以来の定例ランチ会を開いていた。

本来はもう少し頻繁に集まっているのだが、この夏は子どもの熱などで欠席者が多く、流れてしまったのだ。

そんな久しぶりの集まりで、開始早々、みんなが私に問いかける。

「ねえ、前話してた年下の彼とはどうなったの?」
「菜穂の久しぶりの恋バナ、楽しみにしてきたんだよ!」
「進展した?というか、付き合ったりした?」

私は、サーモンがのったサラダをみんなに取り分けながら、小さな声で言う。

「結局、付き合ってるよ」

「ひゃー」という控えめな悲鳴が上がり、私は“事情聴取”を受けることになる。

彼から告白されて、5ヶ月付き合ってること。東京駅で告白され、同棲に至るまでの経緯などを話していたら、数十分が経ち、メインのお料理が来てしまった。

「もう終わり!みんなの話も聞かせてよ、久々の集まりなんだから」

すると友人の一人が「最後に一問!」と仰々しく手を挙げる。

「結婚する可能性は?もう、そういった話も出てるの?」

― まあ、聞かれるよね。

私は、アイスティーを一口飲んでから答える。

「…結婚したい気持ちはあるけれど、急ぐつもりはないかな。相手はじっくり決めたいし」

「そっか」と、みんなが口々に言う。その何か言いたそうな顔に私は少し悔しくなり、付け加える。

「私ね今の毎日が、本当に幸せなの。結婚とかいうかたちに囚われるのは、今どき古いって思ってる。彼は若いから、まだ心の準備ができてないだろうし」

スイーツまで堪能して、またね、と笑顔で解散した。

でも、私の心にはどんよりしたものが残った。

― 大事な友達には、本音で相談すればよかった。本当は、このままでいいのか迷ってるって。

つい強がってしまったのは、みんなに「かわいそう」とか「哀れ」とか思われるのが怖かったからだ。

蒼人との付き合いをどう進めるのがいいか、みんなの意見を聞けばよかった。



腕時計を見ると、時刻は、17時過ぎだった。

私は一人、気分を晴らしたくて、ホテルのバーで飲んでから帰ることにした。


大好きなジンバックを頼むと、スピーディーに飲み干す。

「もう一杯、同じものを」

2杯目を注文したら、となりのカウンター席から「いい飲みっぷりですね」という温かみあふれる声がした。

この記事へのコメント

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No Name
そう、その通りなのよ。菜穂は本音を言わな過ぎ。もう読んでてイライラする。似たような人たまにいるけど最後には信用を失うね。腹の内を明かさないのにモヤモヤ抱えて最後にブチ切れるとかたまったもんじゃない。
2025/06/25 05:1817
No Name
大した進展もなく...
もう少しテンポよく話を進めて欲しい。第一、タイトルが先週とほぼ同じ(若干表現は違っても意味合いは酷似)ww ガン見してきた男は幼馴染みかなんか?
2025/06/25 05:3813
No Name
「急がずじっくり相手を決めたい」対して「そっか」だけで黙ってくれたのに、皆の何か言いたそうな顔に私は悔しくなり付け加える
気強いな、この女。
2025/06/25 05:5612
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30歳になりまして

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

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