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30歳になりまして Vol.7

「婚期を逃しそう…」5歳下の彼に、結婚話ができない30歳女の切実な悩み

お風呂あがりにソファでスマホを見ていたら、ダンス部時代の友人からウエディングフォトが送られてきた。

純白のドレスを着て微笑む、古くからの友人。

「結婚式は赤ちゃんが生まれてから行うつもりです!」との文章が添えてある。授かり婚で、ドレスのシルエットがふわりとしているのが、一層幸福感を引き立てている。

いつか子どもがほしいと願っている私にとって、友人は、夢を一気に2つ叶えた、とても羨ましい存在だ。

― ああ。やっぱり、妊娠を望むなら、時間を区切らないと、ダメよね。

同棲を始めるときに、結婚についてちゃんと話しておくべきだった。今からでも遅くないから、明日にでもちゃんと話そう。

そう決めたとき、自分と同じシャンプーの香りをまとった蒼人が、隣に座ってきた。

「菜穂ー、なに見てるの?」

「あのね、ダンス部時代の友達が、ウエディングフォトを撮ったんだって。これ」


蒼人は、私のスマホを覗き込み「いい写真だね」と言う。それから、画面を見つめたまま、私にこう問いかけた。

「菜穂もさ、こういうの早く撮りたい、とか思う?」

― え。めちゃくちゃ思う。だけど…そんなこと言ったら重いんじゃないの?

「…思うけれど、まあ、急ぐつもりはないの。結婚は、じっくり決めたいから」

「そっか」

蒼人は、一瞬きょとんとした顔をした。

「僕ね、友だちに年上の女性と付き合ってるって話したら、絶対にみんな言われるんだ。『それ、すぐに結婚を決めないとまずいやつじゃん』って。だからいつか菜穂にちゃんと聞きたいと思ってた。結婚、焦ったりしてるのかなって」

「あ、まあ…。焦るときもあるにはあるけれど…」

今さら本音を差し込むが、蒼人は、気の抜けた顔を見せる。

「よかった〜。結婚はじっくり決めたいって聞いて、安心したよ」


私はなんだかモヤモヤしてきたが、笑顔を作る。

「ちなみに…蒼人は、何歳くらいで結婚したいとかあるの?」

「うーん、特には。結婚なんて、まだそんなに真剣に考えたことないからね」

蒼人はソファを立ち、キッチンのほうへ行ってしまった。想定内の回答なのに、私の心は一気にしんどくなる。

ふと、昨晩、唐揚げを食べながら蒼人が言った言葉が耳の奥に蘇ってくる。

「僕は『なんとなくいいな』だけ選んじゃうからさあ」

― 真剣に考えたことない?そんなのって…無責任。

突然、尖ったワードが心に浮かんできて、私は驚く。

ふと目を逸らした先で、ダリアが華やかに咲いている。その景色が急に物悲しく見えてきて、私は静かに目を閉じた。


▶前回:「居心地が悪い…」結婚・出産ラッシュの友人を前に、恋愛相談をする30歳独女の気まずさ

▶1話目はこちら:「時短で働く女性が正直羨ましい…」独身バリキャリ女のモヤモヤ

▶NEXT:6月25日 水曜更新予定
若い男性と付き合う不都合。自分の本音に気づいた菜穂は、ある場所に出向き…?

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この記事へのコメント

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No Name
アプリに相談所にと…あれだけ焦っていたのに、なぜ付き合う前に結婚願望の話をしなかったのか理解に苦しむ。更に5カ月黙っていて同棲のタイミングでも言わなかったって?ちょっと有り得ない。更に、本人から聞かれても結婚はじっくり決めたい急ぐ必要ないって…
急にイライラしてきて悲しくなり別れを切り出す流れなら、まるで『男女の答え合わせ』
2025/06/18 05:3018Comment Icon1
No Name
おい、唐揚げ食いすぎんな! 「頬張る」は頬が膨らむほど口いっぱいに詰め込んで食べると言う意味だから、菜穂は食べ方が汚い人って事かな...
まるでリスか石破総理か?
2025/06/18 05:2215Comment Icon2
No Name
澤石が意外に出来た彼氏で驚いた。 菜穂は目先の平和な関係に囚われ過ぎて結婚や出産を含めた将来から目を背けてるようにも感じられる。本音で話し、ぶつかってこそお互いの気持ちを理解できることもあるし、それでフラれるなら早く関係が終わってよかったと思えばいい。まだアラサー、次の人を探せばいいだけ。 全然応援できない主人公でつまらない。
2025/06/18 07:2915
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30歳になりまして

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

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