A2:これ以上のモラハラに耐えられないと思ったから。
一緒に暮らし始めて2年が経ち、私たちの関係はすっかり落ち着いていた。この2年の間に、康太に対して刃向かったことはない。
元々強く言わないタイプの私だったけれど、反論すると倍になって返ってきそうで、怖かったのもある。
それに康太は、常に“彼の中で理想の彼女像”を私に求めてきた。
だから家の中でも私は常に気を使い、ヨレヨレのスウェットなんて着なかったし、化粧も彼が寝てから落とすようにしていた。
でもこれは、最初は自分のためだった。「好きな人に変なところは見せたくない」という、可愛い女心でもあった。
でもさすがに、2年も経てば面倒になってくる。本当は、楽な服装で、1秒でも早く化粧を落としたい。
でも康太は、そんなことを許してはくれない。
「恵梨香って、意外にそういう所はちゃんと気を使ってくれるよね。ありがとう」
「うん、そこはちゃんとしたいというか…女性として見られなくなったら嫌だなと思って」
「すごくいいと思う。ヨレヨレのスウェットとかでいられたら、萎えるもんな」
― 萎えるって…。
こう言われてしまった以上、今さらこのルーティンを崩すことができなかった。
「結婚しても、恵梨香はそういう女性でいてほしいな」
「男女感は忘れたくないよね」
「疲れて帰ってきて、綺麗な奥さんに出迎えてもらえるほうが幸せだし」
康太の頭の中は、どうなっているのだろう。世の中に、そんな女性はどれほどいるのだろうか。
― でもきっと、他の人たちはみんな頑張っているんだろうな…。
しかし足りない部分があるのに、「できない」とか「嫌だ」と思っている自分をつい責めてしまう。
「恵梨香、いつも綺麗でいてくれてありがとう」
「まぁこれは自分のためでもあるから。綺麗でいるって、大事だから」
「そうだよなー。でも、他の男には行かないでね?」
「もちろんだよ(笑)。行くわけないじゃん」
「なら良かった」
そう言いながらも、私はどこかで気がついていた。常に彼の顔色をうかがっていて、前のように、心の底から笑えていないことに…。
そんな違和感を抱きながらも、決定打となったのが、康太からのプロポーズだった。
「恵梨香、結婚しようよ」
なんてことない、普通の日に言われたこの言葉。本来だったら飛び上がるほど嬉しいはずなのに、私は最初に“恐怖心”が来たのだ。
― このまま一生、彼の言いなりになって終わるの…?
交際だって同棲だって、プロポーズだって。全部彼のタイミングで、彼が「こうしたい」と思うと、私にNOという隙を与えない。
そもそも康太は、私が否定してくるなんて1mmも思っていない。なぜなら、私のことを若干下に見ているから。
一緒に暮らしていて感じたことは、彼は私のことを所有物としか思っていない、ということ。
そして彼のモラハラ気質は、まるで真綿で首を絞められているかのように、じわりじわりと私の自尊心や意見を傷つけていく。
わかりやすいモラハラなら、もっと早く気がつけたかもしれない。でも康太のように、わかりにくいけれど、地味に締め付けられていく場合がある。
離れるのは、怖い。
結婚できないかもと思うと、不安でたまらない。
でも自分の人生、幸せにできるのは自分だけ。他人にコントロールされるなんて、真っ平ごめんだ。
だから私は後悔のないように、自分に対して素直に、そして自分のことを愛して、大事にしてあげるために、別れを選んだ。
そして別れた今、とてもスッキリしている。
自分の選択は間違っていなかったと、心の底から思っている。
▶【Q】はこちら:「3年付き合ったけど、結婚は無理かも…」32歳女が気付いた年収2,000万男のヤバさ
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
▶NEXT:5月10日 土曜更新予定
デートの支払い・割り勘問題
この記事へのコメント