2025.04.07
新店ラッシュは勢いを増し、価格の高騰も止まらぬ“東京の鮨”。
しかし、その波をもろともせず、淡々と真っ当な仕事をする良店が存在するのも事実。確かな技術と味は言わずもがな、そのコースは3万円以下。
大人が本当に通いたい4軒がここにある。
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1.【全15品¥16,500】江戸前鮨とはなんたるか。仕事が施された魚に驚き、大人の教養をここで磨く
『銀座 鮨 み富』@銀座
昼から気軽に鮨をつまむ、そんな粋が許される通し営業がありがたい
銀座で昭和の頃から食通に愛された名店に『新富寿し』がある。店主の三橋克典さんはそこで22年も修行し、最後は3代目の右腕まで務めた、叩き上げの職人。
惜しまれつつ、暖簾を下ろした老舗の味を受け継ぐべく、『銀座 鮨 み富』を開いた。その決断には、中途半端を許さない、相応の覚悟もあったのだろう。
始めてもう7年になるが、いまも午前中に開店したら夜の閉店まで休みなしの通し営業を貫き、好きなタネが1貫ずつ注文できる「おこのみ」を推奨している。どちらも本家が最後まで守り通した営業形態だ。
続ける苦労も忍ばれるが、「それが私の学んだ鮨店のあり方ですから」と、こともなげに語る三橋さんが頼もしく映る。
池波正太郎も愛した味を継承した実直な握りのコース
客の立場で物を申せば、銀座でいつでも行くことができ、明朗会計でおまかせを食べても1万円台という、破格の設定には感謝するしかない。
仕事はもちろん名店仕込みの正統派で昆布締め、漬け、煮物と、どれを食べても望んだ通りの美味しさ。鮮度が良くても生をそのまま握ることはせず、光り物や貝類などは必ず酢洗いする。
そんな丁寧な下ごしらえも伝統を重んじるからこそ。
イカゲソと野菜のゴマ酢和えのお通しからスタートし、ヒラメや締めサバなどお造り4種。
淡路産の「真鯛」は昆布締めに。
おまかせで握りの冒頭を飾る白身で、昆布を挟んだら重石をして丸1日寝かせることで、飴色に染まったタネができあがる。
「サヨリ」。神奈川・松輪のカンヌキと呼ばれる大きいサイズを酢洗いして握る。
握りのみの「おまかせ」は10貫(¥11,000~)より用意。
スミイカ、サヨリ、海苔と相性抜群のタイラギ、コハダ、赤身の漬けの握りと続く。
後半は、中トロ、ミソを残して殻を剥いた車エビ、煮ハマグリ、穴子で終了。
令和の世でこれほどまでに堂々たる江戸前鮨が味わえる幸福を噛み締める。
【Check!】握り手を知る
銀座『新富寿し』に18歳で入り、2018年にこの店を開く。
営業中は、「基本的にお客様の邪魔はしたくないので」と物静かだが、話しかけられれば、対応はフレンドリー。
2.【全18品¥28,000】玄人好みの正統派。たまには純粋に鮨を愉しむ時間があっていい
『鮨 杉澤』@銀座
銀座で鮨をサラリと食べる。そんな気負わぬ余裕を身につける
2貫のうにを盛りつけた上質な絵皿を指し、「青木の親方からいただいた大切な器です」と『鮨 杉澤』の店主の杉澤敬吾さんが誇らしげに語る。
青木さんとは、名店である銀座『鮨 青木』の青木利勝さん。江戸前の伝統を守りながら、柔軟に今日的な鮨の可能性も模索する現代の匠のひとりである。
杉澤さんはその名人の下で、17年も修業している。
老舗出身の面目躍如、信頼できる全18品
先付は白魚とホタルイカ、山菜の海苔銀餡。
刺身は赤貝とタイラギで季節物はカツオの玉ねぎ醤油、煮物で子持ちヤリイカ、蒸しアワビ、タコ。
焼物でヤナギガレイの一夜干し。
椀は若竹煮。
後半は握りへ突入。ネタ大きめのタイから始まる。
木の芽を乗せたキス、コハダ、終盤は中トロ、大トロ。
春が旬の「みる貝」は大ぶりで食感も愉快。
煎るだけで1時間はかかる黄身おぼろをのせたエビや煮汁に漬け込んでふっくらと仕上げるハマグリの握りに、名店の仕事をきちんと会得した、その実力がうかがい知れるが、独自のアイデアを表現した握りもまた秀逸。
例えば「ぶり大根」は脂がのると同時に独特のクセも増す冬のブリを、もっと美味しく食べさせるべく考案した代表作。
ヅケの手法を応用しており当初はおつまみだったが、常連の「握ってよ」のひと言から握りに昇格した。
時代に左右されない仕事をぶれずに続けつつも、日々出合う魚の状態を見極めて、当意即妙の創造力を発揮する。
それこそが師から学んだ、江戸前鮨の真髄。
ハマグリで〆。
同じ銀座でその心意気まで味わえて、夜で2万円台とは望外の幸せ。
清々しい店内で堪能すれば自然と心まで洗われる。
【Check!】握り手を知る
学生時代、居酒屋のアルバイトで魚に興味を持ち、鮨職人を志す。
銀座の『鮨 青木』で尊敬できる師匠と出会い、17年間在籍。2018年の独立後も、寡黙に鮨と向き合う。
3.【全20品¥27,500】名刺代わりの「大間のまぐろ」は、起伏に富んだ鮨劇場の最高の序章となる
『日本橋 鮨 洋』@日本橋
カウンター内で上がる炎。鮨店にあるまじき心地良い裏切りがある
ゆったりと空間をとった7席のカウンターでつけ台は白木。和紙を張った天井や土壁のバックカウンター、格子戸などお茶室のような趣ある設えが心地いい。4名まで入れる個室も完備している。
華やかな日本橋のメインストリートから、少しはずれた静かな一角に昨年開店した『日本橋 鮨 洋』。
モダンなビルの中にあるが、ドアを開けて一歩入ると木の香が清々しい店内が現れる。
おまかせコースは料理7品と握り11貫、たまご、お椀となかなかのボリューム。
しかも一品料理は高級割烹のように麗しく、丁寧な仕事ぶりがうかがえる。
2万7,500円というコースの価格は鮨バブルの昨今においてはミディアムレンジ。だがこの内容ならばお値打ちだ。
左上.煮だこ。
右上.のりで巻いた「さば棒鮨」。
右下.車エビ。
左下.コース中盤で登場する「メジまぐろの炙り万願寺とみょうが 行者にんにくしょうゆ」は酒が進む一品。
金目鯛の松笠焼き。
店主の関谷 洋さんは仕事の確かさもさることながら、ホスピタリティにあふれた人柄。それを表す最たるものが、コースの途中で、手間のかかるシャリを新しく炊きなおすことだ。
「最高のコンディションで食べて欲しいので、まぐろの握りのタイミングを見計らって炊きます」とこともなげに笑う。
左上.大トロ。
右上.小肌。
右下.煮はまぐり。
左下.「からすみの茶わん蒸し」はチーズのような濃厚な味わい。茶わん蒸しの概念を覆す。
左上.ぶりの漬け。
右上.うに軍艦は、バフンうにとムラサキうにの2種を贅沢に使った1貫。
右下.炭火で焼いたうなぎは、うな丼に。
左下.たまごはカステラのよう。
高級感のある設えでカウンターは7席というサイズ。だが、関谷さんの気さくな人柄もあって、かまえず寛げるのが魅力だ。
都心でありながら洒脱な空間で握りと料理をあくまでもリーズナブルに。そんな使い勝手のいい店の誕生だ。
【Check!】握り手を知る
銀座や日本橋の有名店で活躍した歴22年のベテラン鮨職人。日本料理の経験もあり一品料理も力を入れている。
威勢はいいがフレンドリーで軽快なトークがゲストを楽しませる。
4.【全21品¥25,000】厚く切り付けたネタがガツンと旨く、力強い本能を刺激する鮨がある
『冨所』@御成門
まぐろを見て美しいと思う。そんな夜に出合える幸せ
北海道・噴火湾沖で揚がった近海物の本まぐろから「赤身」。仕入れは鮪卸の「結乃花」で店主自ら管理して寝かせ、旨みのピークを見極めて握っている。厚く切られて艶やかに輝いており、見るからに口当たり滑らか。
風格漂う、赤身の握りに思わず見惚れる。食べればシャリはふわりとほぐれ、厚く切られたまぐろの旨みとひとつになって口の中で躍り出す。
「よくお客様にも『1貫が大きい』と言われます」と微笑む『冨所』の店主の佐藤浩二さんは帯広市出身。
米は同じ北海道の蘭越町で育つササニシキの近縁種で、粒が大きいのが特徴。そのシャリで「より多くの空気を含ませるように私が握りますから、大きく感じられるのかも」と自己分析する。
33歳の若さで独立し、当初から多くの鮨通が一目置く、天才肌の職人である。
大きめの鮨が満足感を誘う至高の14貫
「おつまみは美味しいお魚ありきで、あまり手は加えていません」と言うとおり、例えばねぎとまぐろを出汁で炊いた「ねぎまぐろ」など古典的手法に着想を得た料理も多い。
握りに移れば小気味良く繰り出され、その間合いがまさに江戸前。
「中トロ」。
冬のいまは「握りの序盤で白身に続いてまぐろ3貫を提供することが多い」と佐藤さん。
「大トロ」。今日はすべて噴火湾産。脂の旨みも上品で口にした瞬間、溶けて儚くも消えていく。
シャリは蘭越町の通称「助六」に2種の赤酢をブレンド。優しい食感が心地良く、卓越した技術を実感。
握り中盤は小柱の軍艦、大きめにネタを切り付けたブリ、サバ、蒸しアワビ。
最後のたまごを頬張る頃には「鮨を食べた」充足感が心身を満たしている。これで夜は2万円台とは嬉しい限り。
「自分の店だから好きなようにしたかった」と集めた器は古伊万里で、それを収納する水屋箪笥もアンティーク。
歴史に対する敬愛の念は深く、だからこそ鮨の完成度も自ずと高まるのだろう。
【Check!】握り手を知る
地元鮨店で5年修業して上京。『西麻布 鮨 真』で10年腕を磨き、2018年に独立。
BGMもない静かな店内で寡黙に鮨を握るが、産地などを尋ねれば的確に答えてくれる。
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