1LDKの彼方 Vol.15

待ち望んでいたプロポーズをされた30歳女。しかし、その瞬間感じた違和感とは

◆前回までのあらすじ

同棲中の明里(30)と亮太郎(28)。結婚願望が強い明里は、もしかしたら亮太郎との間に子どもができたかもしれないことに気が付く。

それを告げると亮太郎は「結婚しよう」と言ってくれたのだが…。

▶前回:結婚に悩んでいた28歳男が、突然プロポーズを決意。「まだ早い」と思っていたのに…


Vol.15 覚悟<明里>


広尾にある評判の産婦人科クリニックは、予約時間の16時を1時間過ぎてもまだ順番が回ってくる様子はなかった。

混雑した待合室には私のような単身の女性のほか、生まれたばかりの小さな赤ちゃんを連れた夫婦や、お腹の大きい妊婦さんたちも少なくない。

そんな女性たちの姿を横目で見ながら私は、必死に自分自身の感情と戦う。

― 怖い。

幸せそうに赤ちゃんを抱っこするママも、ふっくらとしたお腹を愛おしそうに撫でるママも、いざ妊娠が現実としてこの身に降りかかってきてみると、私とはまるで別の世界に生きているように感じた。

― 家族が欲しかったのに、こんなに怖いなんて。

菜奈の家で、生理が遅れていることに気づいてから1週間

検査薬を試す勇気も湧かずどうにか病院に来てみたものの、言いようのない不安は増すばかりだ。

よく考えてみたら、私に「お母さん」なんて務まるんだろうか?あんなに冷たい家庭で育ったのに?

持参した文庫本も全く頭に入らず、そんな考えばかりが堂々巡りしてしまう。

本当だったら、こんな時にこそ亮太郎についてきてもらえばよかったのかもしれない。

だけどそんなこと、できるわけがない──。

膝の上の文庫本を閉じた私は、ついさっき亮太郎との間に起きたことを思い出す。

「じゃあさ…結婚しようよ」

そう言われた時に私が感じたのは、自分でも予想外の気持ちだったから。

この記事へのコメント

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No Name
じゃあ? じゃあ?ってなんだろう....
そう感じるよね。
2025/03/31 05:1730返信1件
No Name
きっと明里の気持ちは、亮太郎が結婚にちょうどいいからではなくて本当に好きなんだよ。 一時期島田さんの方がいいかも?と読者目線で思ってたけど結局この二人はお互いを好き同士だから結婚して幸せな家庭を築くだろうと思った。
2025/03/31 05:2416返信1件
No Name
雨降って地固まるとなればいいけどね。明里には、妹だけ可愛がって育てた親を忘れる位幸せになってほしい🥺
2025/03/31 07:0214
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