1LDKの彼方 Vol.13

「何もないって言われたけど…」彼氏が他の女と連絡を取っていたことが発覚。30歳女は思わず…

◆前回までのあらすじ

結婚願望強めの明里(30)は、亮太郎(28)と同棲中。密かに明里との結婚を真剣に考え始めた亮太郎だったが、明里は家族仲が悪く、特に彼女の妹の歌織にどう接していいのかわからない。明里はそんな亮太郎の心のうちには全く気づかず、業を煮やしていた。

▶前回:付き合って1年以上の彼女に隠している秘密。28歳男が、プロポーズに踏み切れない理由


Vol.13 転落<明里>


「明里ちゃんが合流してくれたから、改めて乾杯」の掛け声とともに、あちこちでグラスが交わされる。

深夜1時、麻布十番の『KJ TOKYO』

“経営者同士の交流会”という普段なら避けがちな華やかな場所だけれど、今夜だけは、この場所にいられることがありがたかった。

むしゃくしゃした気持ちが、少しでも紛れるような気がしたから。

ソファ席の端で私の隣にいてくれるのは、先日対談相手になってくれた島田さんだった。

私をここに連れ出してくれた菜奈はすっかり酔っ払って、大勢の人に囲まれたままカラオケマイクの主になってしまっている。

「明里ちゃん、大丈夫?」

「はい、ありがとうございます。島田さん」

私の手の中で湯気を立てている、温かいジャスミンティー。

「ちょっと体調悪くて…」とこぼした私に、「無理しないで」とノンアルコールのお茶を勧めてくれたのも島田さんだ。

対談の終わりに食事に誘われて以来、何度か誘ってくれていた人。

亮太郎に悪い気がしてお誘いは結局やんわり断り続けていたというのに、それでも気まずいそぶりすら見せない。

それどころか、途中から参加してなんとなく場に馴染めずにいる私に終始こうして気を使ってくれるのだから、本当に優しいいい人なんだろう。

今夜の島田さんとの再会はまったく意図せずのことだったけれど、こうして会って親切にされてしまった以上、そんな好印象を抱かずにはいられなかった。

― 島田さんって、気遣いすごいな。亮太郎とじゃなくて、こういう人となら…。

ふと浮かんだそんな考えに、また胃がムカムカした。

別に体調が悪いわけじゃない。ムカムカの正体は怒り──いや、情けなさなのは、自分でよく分かっている。

調子っぱずれの菜奈の歌声をBGMに、私はもう一度ジャスミンティーのカップに口をつける。

「同棲なんて、しなきゃよかった」

そういって部屋を飛び出してきた1時間前のことを、じっくりと思い返すために。

この記事へのコメント

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No Name
「そうですよぉ。だって、よく歌織さんとLINEしてますよね?瑛介さんに話してるじゃないですか」
相当意味不明、チコの奴どうしてこんな事言うんだろう? まさか歌織とグルなのか? 単にデリカシーのカケラも無いだけなのか?
2025/03/17 05:2512
No Name
何なんだチコは....
余計な事ばっかり言いやがって!
2025/03/17 05:1311
No Name
明里がただただ気の毒でならない。 今回は妊娠ではなくストレス過多で遅れているだけである事を願う。
2025/03/17 05:2811
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