1LDKの彼方 Vol.12

付き合って1年以上の彼女に隠している秘密。28歳男が、プロポーズに踏み切れない理由

◆前回までのあらすじ

亮太郎(28)は、結婚願望強めの年上彼女・明里(30)と同棲中。

煮え切らない亮太郎に不安が募った明里は、他の男性も見てみることを同僚に勧められる。一方、そんなことは全く知らない亮太郎は…。

▶前回:結婚願望がない彼氏と迎えた、30歳の誕生日。女がショックを受けた“ある理由”


Vol.12 秘密<亮太郎>


「お疲れさまでしたー!」

今日のCM撮影は、駒沢公園でのロケだ。

青々と茂る木立の中の空気は、まだ5月だというのにすでに梅雨の気配を孕んでいるような気がする。

― 沖縄はもう梅雨入りしたんだっけ。天気がもって良かったな。

そんなことを思いつつ撮影を無事終えると、スタッフとともに機材を撤収する。その後、俺とチコだけは社に戻らずに現地解散をさせてもらった。

19時前の空は、マジックアワーを過ぎて藍色に染まりかけている。

その空の色を見ながら俺は、先週明里が祝ってくれた俺の28歳の誕生日のことを思い出していた。

青山グランドホテルの『THE BELCOMO』のテラス席。多国籍料理とビールで乾杯したときも、ちょうどこんな藍色の空だったっけ。

歩道橋の夜から明里と俺の間では、相変わらず「将来」というワードはなんとなく禁句になったままだ。

けれど、あれから2ヶ月の時間が経った今では、お互い冷静になったというか…慣れたのだろう。ふたりの雰囲気自体はすっかりもとの通りに戻っている。

俺の誕生日、レストランから家に戻ったあとは、欲しかった4K対応プロジェクターをプレゼントしてくれて、明里がやっぱり俺のことを理解してくれているこということを実感して嬉しかった。

「亮太郎さん、なにボーッとしてるんですか。行きましょ!」

気がつけば東京医療センター前の交差点で、会社の後輩であるチコがこちらに向かって大きく手を振っていた。見ると、すでにタクシーを捕まえてくれている。

「おう、ごめんごめん」

慌ててタクシーに乗り込み、チコが運転手に行き先を告げるのを聞きながら、目の前のデジタルサイネージに目をやる。

と、その時だった。

「あっ、すごいタイミングですね…!」

この記事へのコメント

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No Name
明里が望むのならばすぐにだって結婚してもいい。
なら早くそう言って彼女を安心させてあげなよ、ねぇ。歌織なんてマジどうでもいいし、兄嫁がしょっちゅう実家に顔出すとか外野の事で言い訳作ってないでまずはきちんと明里と向き合わないと。
2025/03/10 05:2527
No Name
仕事の仲間を紹介するのはいいけれど、急過ぎるタイミングは止めた方が良いよ。 事前に計画して家でワイン会とかならいいと思うけれど夜遅い時間に皆既に酔っ払った状態で訪問するのは非常識!! 彼女に電話で確認 もどうなん?駄目とも言いづらいし。 二軒目に流れる段階で涼太郎だけ帰宅すればいいのに余計な事考えるなぁ全く。
2025/03/10 05:3624返信1件
No Name
歌織もしつこいなぁ、これは家族仲良くとは別の問題だし潔くブロックするのが一番だと思う。
しかし、読めば読むほど涼太郎ってガキだなぁと苦手になる。青臭いし思考回路がたまに変、そして人の気持ちよく考えないで行動したり。
2025/03/10 05:4223返信3件
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