29歳彼女と同棲しているのに、将来を考えていない男。結婚を迫られた彼がとった言動とは(2/3)[東京カレンダー

5杯目、いや、もしかしたら6杯目かもしれないハイボールが提供された、ちょうどその時だった。

おもむろに瑛介が、スマホをビールのジョッキに持ち替えながら言った。

「うし。これで彼女のご機嫌取り完了です」

「なに、彼女とLINEしてたの？正月に一緒にハワイに行ってたコンサルの子だっけ？」

「それはもう別れた。今はアプリで会ったばっかの女子大生」

「相変わらずモテてるな、悪い男だねぇ」

酔い紛れに軽口のような感じで軽く言った言葉だったが、瑛介は思いのほか真面目な顔で反論してくる。

「いや、俺なんかより、お前の方がよっぽど悪い男だろ」

「な…なんでだよ」

意外な反撃にたじろぐ俺に、瑛介は大袈裟に呆れたような表情を浮かべて言葉を続けるのだった。

「おいおい、本当はわかってるんだろ？

年上の女の子と付き合う、ましてや同棲するってことは──“そういうこと”だって」

◆

「亮太郎は結婚願望ある…よね？」

同窓会に参加した明里を恵比寿駅まで迎えに行った帰り道、思い詰めたような表情でそう彼女に迫られたのは、先週末のことだ。

ゆらゆらとほのかに足元が揺れる歩道橋の上で、明里が何かの審判を下すかのように、じっとこっちを見つめる。

その顔がなんだか切羽詰まっているように見えて、居心地の悪くなった俺はつい、なんのオブラートに包むこともないまま本音を漏らしてしまったのだった。

「今はまだ全然考えられない。そんなに焦らなくても…」と。

そう答えた時、明里はどんな顔をしていただろうか。

しっかり思い出せないということは、俺はきっと明里から…いや、現実から目を逸らしてしまったのだろう。

「…亮太郎はまだ、27歳だもんね」

明里はそう寂しげにポツリと呟くと、たった今見せていたすがるような表情をひっこめ、いつも通りの明里に戻ってしまったのだった。

だけど…。

それ以来、なんとなく部屋の中には重苦しいムードが充満しているような気がする。

うっかり歌織ちゃんの名前を出した時のような、ピリピリと刺々しい空気とはまた違う。

一緒に映画を見ているとき。友人や先輩の話をしているとき。世間を賑わせている、芸能人のゴシップについて話すとき。

以前の俺たちの間にはなかった、禁句のようなものがある気がするのだ。

絶対に踏んではいけない地雷のようなワード──。

「結婚」や「家族」、「将来」というようなことについて、軽い気持ちで口に出してはいけないような空気が、完全に出来上がってしまっていた。

◆

「お前があまりにものん気な幸せ面してるから言わなかったけど…。30歳手前の女の子に同棲を持ち掛けといて『結婚なんて今は考えられない』なんて、そりゃ残酷すぎるだろ。

同窓会なんて行ったら焦りも生まれるかもしれない。悪い男はお前だよ」

「いや、でも…！」

多数の女の子と遊び歩いている瑛介だ。そんな彼に言われてカチンと来た俺は、愚痴を聞いてもらうためにこっちから飲みに誘ったという事実も忘れて、反論にかかった。

「俺、よくわかんないんだよ。結婚って、ふたりの気持ちが自然と一致したときにするんじゃダメなの？

タイムリミットなんて決めて、もしそれまでに見極められなかったら…。あと少し時間をかければうまく行ったかもしれないのに、別れるの？」

結婚するタイミングがわからないという亮太郎に、瑛介は…

この記事へのコメント

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瑛介の「お前から同棲持ちかけておいて今結婚は考えられないなんてそりゃ残酷すぎるだろ」は本当にその通り。早くこの件について釈明するとか気持ちが変わったとか何でもいいから話さないと明里の心はどんどん離れていってしまう....

2025/02/24 05:2921返信1件

No Name

友人(男)も似たような状況で、同棲後もなかなか覚悟を決められなくて結婚話を先延ばしにして、でもやっぱり彼女しかいないとようやく決意してプロポーズの準備をしてた矢先、家に帰ったら彼女の荷物全部無くなっていて。テーブルに合鍵と大好きだったけどもうこれ以上待てない、LINE等全てブロックするからもう二度と会わない的なメモ書きが残ってたらしい。

2025/02/24 06:1819

No Name

他にもまだ誰にも言ってないでっかい秘密を抱えてるという事なのか？！言わない訳にはいかないって、まさか妹の毒牙にかかりワンナイトしたとかだったら最悪な展開過ぎ。涼太郎は女子の気持ち全然分かってないし能天気過ぎだからなぁ🤦🏼‍♀️

2025/02/24 05:3317

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