2024.11.20
1Fの奥には、カジュアルにハイボールスタイルのカクテルが楽しめるバーカウンターがあり、普段ハイボールしか飲まない自分でも気負わず楽しむことができた。
先輩は、マスカットとミントの風味が爽やかな「グリーン オーチャード」を、僕は国産ウイスキーと合わせた味に奥行きがある「Jam Session!!」をオーダー。カウンターのバーテンダーが解説を加えてくれる。
「アイリッシュウイスキーの『ブッシュミルズ』は、スコッチなどにある芳ばしいピート香がない“ノンピート製法”で、爽やかな香りの良さが特徴です。フルーツや炭酸と合わせて楽しむことができるので、ウイスキーに馴染みのない方にも親しみやすく、食中酒としてもぴったりです」
自分がウイスキー初心者だと見抜かれたかな、と思いながら、つい先ほど展示で見た樽の香りの話をバーテンダーとしてみる。
「樽による香りの違いがあるからこそ、これだけのバリエーションが楽しめるんですよね」
そう語る僕に、先輩の見る目が少し変わった気がした。その視線に、自分が先輩を意識していることに気づき、胸が軽くざわつく。
「知りたい」という気持ちが、男を新たな挑戦へと駆り立てる
地下に降りると、すこし暗く本格的なバーの雰囲気があるカウンターが現れる。バックバーに美しく並ぶのは、シングルモルトを中心としたブッシュミルズのラインアップだ。
ここでは、アルコールのボリュームもしっかりある本格的なカクテルが味わえる。またカクテルと合わせて、1F同様にフードメニューも頼めるようだ。アイルランドの伝統料理をイメージした、オムレツやシチューなどの提供がある。
悩んだ末、先輩は、蒸溜所の近くにある森の名前から取られた「The Dark Hedges」を。薬草酒と花の香りがする「ブッシュミルズ シングルモルト10年」のカクテルは、アイルランドの風景を思わせる一杯だ。
僕が頼んだ「Irish Gentleman Fashioned」は、スタンダードカクテルのオールドファッションドのツイストだが、ポートワイン樽を使った「ブッシュミルズ シングルモルト16年」にカシスリキュールや苦みのビターズを加えた複雑な味わいが、ウイスキーカクテルならではの魅力を感じさせてくれた。
カクテル開発をしたひとり、アンバサダーの大場健志さんは、その魅力をこう語る。
「世界最古の認可蒸溜所がブッシュミルズですが、古いということはそれだけ樽を持っているということです。その香りの幅が面白いですし、熟年数が高いウイスキーも安定して出すことができるのはすごいと思います。ノンピートで、なんといっても華やかなので、バーテンダーとしては使いたくなるウイスキーです」
その言葉通り、メニュー表には興味深いカクテルが並ぶ。抹茶やクリームリキュールに合わせたものや、言葉遊びをしたカクテルメニューもある。
ロックバンドのザ・グレイトフルデッドに掛けた「ザ・グレイプフル・デッド」、定番カクテルのロングアイランドアイスティをもじった「Wrong Ireland Ice Tea」など、カクテル名からでも会話が弾みそうなものばかりだ。
「日本ではロックやハイボールが多いですが、海外のバーではカクテルで飲まれることも多いですよ。
今回は樽の香りとカクテルを合わせていて、マルサラワイン樽フィニッシュの『ブッシュミルズ シングルモルト12年』にはブドウを使ったり、シェリー樽からくる青リンゴのような爽やかな甘みもある『ブッシュミルズ シングルモルト10年』には、エルダーフラワーなど花の香りを合わせたりしています。
“樽を飲む”がこのバーのコンセプトですが、まさに樽を感じてもらえるカクテルだと思います」
カウンターの横には、ブッシュミルズがこだわる樽の展示があった。現地から空輸した、本物の熟成樽らしい。「ブッシュミルズ シングルモルト25年」を熟成される際に使用したというその樽を触ったり、栓を外して中の香りを楽しむこともできる。
樽の豊潤な香りを楽しんだ僕は、ブッシュミルズのシングルモルトのそのものの味わいを知りたいと思った。バーテンダーはティスティンググラスに、美しい琥珀色のウイスキーを丁寧に注ぎ入れてくれた。
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