恋のジレンマ Vol.13

アプリで出会った女性と初デート。女が困惑した、男が渡した妙なプレゼントとは

◆これまでのあらすじ
大手通信機器メーカーに勤める由紀恵(27)は、男性に不慣れなせいで恋人に「重い」とフラれてしまう。友人・涼子の開いた飲み会に参加し、同じように異性に苦手意識を持つ中尾と知り合う。お互いに現状を打開しようと、同盟を結び…。

▶前回:小学校から私立女子校に通っていたせいで“恋愛弱者”に…。27歳女性の深刻な悩み


前髪同盟【後編】


「由紀恵さんは…ずいぶんとお酒が…強いんですね…」

バーのカウンター席で、由紀恵の右隣に座る男が感心したように言った。

大手不動産会社に勤める進藤という男だ。気を張って平静を装ってはいるが、呂律がうまく回っていない。

友人の涼子から紹介され、挨拶を交わす程度に3人で軽く食事をして、今日は2回目。

2人で銀座のイタリアンでの食事を終えたあと、近くのバーを訪れていた。

「大丈夫ですか?タクシー、呼びましょうか?」

由紀恵が心配して声をかけると、進藤は胸元で手を横に振った。

「いやいや。平気ですよ。まったく問題ないですから」

言葉とは裏腹に、目の焦点が定まらず視線を周囲に泳がせている。

― 私、意外とお酒強かったんだな…。

もともと由紀恵は酒の味を好まず、普段から口にしていなかった。

ただ、男性と食事をともにするにあたり、最初から飲まない姿勢を貫くのは気勢をそいでしまうかもしれないと、形だけでもと白ワインを注文。

しばらく傍らに置いていたが、あまりに進藤が美味しそうに飲むので、舌を湿らせる程度に口に含んだ。

すると、思いのほか口当たりがよく感じられた。

様子を見つつ少しずつ飲んでみたところ、体に大きな変化はなく摂取できていた。

そして、同じペースで飲んでいた進藤のほうが酒に酔い潰れている状態となっている。

「あぁっ!」

進藤がテーブルに腕をのせたところ、勢い余ってグラスを倒しそうになる。

― これはもうダメだ…。

由紀恵は黙ってスマートフォンを操作し、アプリを使ってタクシーを呼んだ。

涼子から、男性に対する免疫の低さを指摘された由紀恵は、改善を図るためについに重い腰をあげたにもかかわらず、芳しい結果は得られなかった。

― でも、白ワインなら飲めるってことがわかって、よかったかな。

男性との距離の縮め方などの有益な情報は得られなかったが、それなりに収穫はあったと由紀恵は思う。

そのとき、手に持っているスマートフォンが震える。

着信は、先日“前髪同盟”を結んだ中尾からだった。

この記事へのコメント

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No Name
インスタはお互いフォローし始めたなら過去の投稿見られる事も了承してると思うんだけど、違うのかな。個人情報探られたとか不快に思ったりキモいとさえ感じるならアカウント教えなければいい。 実際、過去の写真からどんなレストランが好きかとか趣味とか....事前情報として知っておく方が会話が弾む場合もあるから由紀恵の言い分がなんだか意味不明。
2024/11/18 05:3811返信2件
No Name
赤毛連盟 と 前髪同盟
あまりにも無理が有る!
2024/11/18 05:199
No Name
銀座6丁目に、“シャーロック” というオーセンティックでとても雰囲気の良いバーがあるのを思い出した。店内は重圧な英国風でカクテルの味は間違いない!
話の内容は呆れる通り越して感想出て来ず。
2024/11/18 06:138
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