2024.11.11
恋のジレンマ Vol.11恋は、突然やってくるもの。
一歩踏み出せば、あとは流れに身を任せるだけ。
しかし、最初の一歩がうまくいかず、ジレンマを抱える場合も…。
前進を妨げる要因と向き合い、乗り越えたとき、恋の扉は開かれる。
これは、あるラブストーリーの始まりの物語。
▶前回:「離婚したのに、つい頼っちゃう…」バツイチ女性が元夫とこっそり連絡をとるワケ
前髪同盟【前編】
「俺たち、会うのはこれで最後にしないか?」
恋人の哲道が、申し訳なさそうに切り出した。
テーブルの上には、由紀恵の用意した夕食が手つかずの状態で並んでいる。
由紀恵は既視感のような感覚をおぼえつつ、問い返す。
「それって、別れる…ってこと?」
哲道は何も言わず、コクッと首を縦に振った。
「え…なんで?私、何か嫌われるようなことしたかな?もしそうだったら教えて。これから気をつけるから」
「そういうわけじゃないんだ。ごめん…」
「美味しくないかもしれないけど、こうやって料理も作ってたし。掃除とかもちゃんとしてたよね?私、男の人の気持ちってあんまりわからないから、何か気に障るようなことしてたら教えて欲しいの」
由紀恵が身を乗り出して迫ると、向かいに座る哲道は表情を曇らせた。
「そういうとこだよ」
「え…?」
「重いんだよ。なんか、見返りを求められてるみたいでさ。プレッシャーなんだよ」
ウンザリした様子で言われ、由紀恵の頭のなかに過去の記憶がフラッシュバックする。
― まただ。私、いっつもこう…。
由紀恵はこれまで何人かの男性と交際してきたが、別れのシーンはいつも同じような状況を迎えていた。
由紀恵は、哲道の顔をじっと見つめる。
― 別れたくないよ。2年も付き合ったんだし…。哲道のことが好きだよ…。
伝えたいことはたくさんあるが、言葉が出ない。
すると、哲道がため息まじりに言った。
「あと、その目」
由紀恵は言葉の意図が汲み取れず、首を捻る。
「たまにあるけど、そうやって何も言わないでじっと見据えてきてさ。なんか、怖いんだよ」
由紀恵は、前髪をまぶたにかかる手前で切りそろえているため、目もとが強調される。
額を隠すのは自信のなさの表れであるにもかかわらず、放たれる視線が威圧感を与えてしまうことがあるようだった。
「気まずいのとか、嫌じゃん。だから、別れよう」
哲道は、今度はあっさりと諭すように言った。
もう躊躇いは感じられない。
こうなると、いくら抵抗しても無駄なのは承知している。
由紀恵は恋愛経験が少ないものの、類似した状況は何度か経験済みのため、飲み込みも早かった。
「うん、わかった」
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