恋のジレンマ Vol.11

小学校から私立女子校に通っていたせいで“恋愛弱者”に…。27歳女性の深刻な悩み

恋は、突然やってくるもの。

一歩踏み出せば、あとは流れに身を任せるだけ。

しかし、最初の一歩がうまくいかず、ジレンマを抱える場合も…。

前進を妨げる要因と向き合い、乗り越えたとき、恋の扉は開かれる。

これは、あるラブストーリーの始まりの物語。

▶前回:「離婚したのに、つい頼っちゃう…」バツイチ女性が元夫とこっそり連絡をとるワケ


前髪同盟【前編】


「俺たち、会うのはこれで最後にしないか?」

恋人の哲道が、申し訳なさそうに切り出した。

テーブルの上には、由紀恵の用意した夕食が手つかずの状態で並んでいる。

由紀恵は既視感のような感覚をおぼえつつ、問い返す。

「それって、別れる…ってこと?」

哲道は何も言わず、コクッと首を縦に振った。

「え…なんで?私、何か嫌われるようなことしたかな?もしそうだったら教えて。これから気をつけるから」

「そういうわけじゃないんだ。ごめん…」

「美味しくないかもしれないけど、こうやって料理も作ってたし。掃除とかもちゃんとしてたよね?私、男の人の気持ちってあんまりわからないから、何か気に障るようなことしてたら教えて欲しいの」

由紀恵が身を乗り出して迫ると、向かいに座る哲道は表情を曇らせた。

「そういうとこだよ」

「え…?」

「重いんだよ。なんか、見返りを求められてるみたいでさ。プレッシャーなんだよ」

ウンザリした様子で言われ、由紀恵の頭のなかに過去の記憶がフラッシュバックする。

― まただ。私、いっつもこう…。

由紀恵はこれまで何人かの男性と交際してきたが、別れのシーンはいつも同じような状況を迎えていた。

由紀恵は、哲道の顔をじっと見つめる。

― 別れたくないよ。2年も付き合ったんだし…。哲道のことが好きだよ…。

伝えたいことはたくさんあるが、言葉が出ない。

すると、哲道がため息まじりに言った。

「あと、その目」

由紀恵は言葉の意図が汲み取れず、首を捻る。

「たまにあるけど、そうやって何も言わないでじっと見据えてきてさ。なんか、怖いんだよ」

由紀恵は、前髪をまぶたにかかる手前で切りそろえているため、目もとが強調される。

額を隠すのは自信のなさの表れであるにもかかわらず、放たれる視線が威圧感を与えてしまうことがあるようだった。

「気まずいのとか、嫌じゃん。だから、別れよう」

哲道は、今度はあっさりと諭すように言った。

もう躊躇いは感じられない。

こうなると、いくら抵抗しても無駄なのは承知している。

由紀恵は恋愛経験が少ないものの、類似した状況は何度か経験済みのため、飲み込みも早かった。

「うん、わかった」

この記事へのコメント

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No Name
前髪同盟ってキモい
2024/11/11 05:3924
No Name
似た者同士情報交換しながら共に頑張ろうと同盟を組んだが、やがて恋愛感情が芽生えたって話?だったら何の捻りもなくつまらな過ぎるから違う事を願う!!
2024/11/11 05:4223
No Name
要するに目つきが悪くて怖いと元カレに指摘されたんでしょう? なるべく目も含めて笑うようにするとか前髪伸ばして印象変えるとかその辺りから出来る事やればいいと思うけどねぇ。あと彼の家に行っては掃除したり料理したり...それも次回からは止める!
2024/11/11 05:5717返信1件
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