2024.11.04
恋のジレンマ Vol.10◆これまでのあらすじ
彩花(27歳)は、和菓子店経営者・橋村から告白を受けた。しかし彼の「結婚を前提に」との言葉に戸惑い、保留に。彩花は、昔から両親が不仲で、結婚に希望を持てないのだった。そんなとき両親の離婚を告げられ、結婚にますます幻滅し…。
▶前回:「条件はいいけど…」27歳女が萎えた、デート中に経営者男が発した“NGワード”とは
結婚への躊躇い【後編】
「ススキは水揚げが悪く枯れやすいので、根元にお酢をつけてあげると長持ちするんです」
彩花の説明に、熱心に耳を傾けていた橋村は「なるほど」と深く頷いた。
今日、彩花と橋村は、花展を訪れていた。
合同展となっており、会場には様々な流派の生け花が並んでいる。その中には、彩花の母親・佑美の作品も出品されていた。
花展の開催情報を入手した橋村のほうから、「一緒に行きませんか?」と誘ってきたのだった。
橋村は和菓子店の経営者で、海外進出も視野に入れている。だから、華道など和の嗜みに関心を持っているようだ。
― 今日こそ、返事をしないとなあ。
告白を受けて1週間。
彩花は、まだ回答を伝えていない。
「これが、彩花さんのお母さまの作品ですね?」
佑美のいけた花の前に立つ。
「うわぁ、綺麗だなぁ…」
橋村が、感嘆の声を漏らした。
秋桜、鶏頭(ケイトウ)、吾亦紅(ワレモコウ)、竜胆(リンドウ)と、主に4種の秋の花をあしらった、彩の良い涼やかな雰囲気を漂わせる作品。
それぞれの花の個性を活かしつつも絶妙にバランスを保ち、空間と調和の織りなす慎ましやかな美しさのなかに、力強さを感じさせる。
「秋桜っていうのは、コスモスのことですよね?」
作品の脇に添えられた席札に書かれた文字を見て、橋村が尋ねる。
「ですね。ただ、“アキザクラ”と読むことのほうが多いかもしれません。コスモスという呼び方は、歌手の山口百恵さんのヒット曲から広まっていったみたいですよ。所説あるかもしれませんが」
彩花は中学生までは、母親の華道教室に通っていた。そのため、花の習性や周辺の知識、作品についての簡単な意図などは、説明することができた。
「そうなんですか!さすが彩花さん。勉強になるなぁ」
橋村がまた大きく首を縦に振って感心する。
その大袈裟な反応に、彩花は気恥ずかしさをおぼえながらも、どこかホッと安心させられた。
「あら?彩花さんじゃない?」
名前を呼ばれ、声のするほうに振り返ると、母親の年齢ほどの女性が立っている。
背筋の伸びた上品な佇まいに、彩花は見覚えがあった。
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