恋のジレンマ Vol.9

「条件はいいけど…」27歳女が萎えた、デート中に経営者男が発した“NGワード”とは

恋は、突然やってくるもの。

一歩踏み出せば、あとは流れに身を任せるだけ。

しかし、最初の一歩がうまくいかず、ジレンマを抱える場合も…。

前進を妨げる要因と向き合い、乗り越えたとき、恋の扉は開かれる。

これは、あるラブストーリーの始まりの物語。

▶前回:新宿で甘い夜を楽しむはずが…。待ち合わせ場所に来た女の顔を見て、28歳男が凍りついたワケ


結婚への躊躇い【前編】


「ああっ!すみません、彩花さん。つい仕事の話に夢中になってしまって…」

彩花は「いえいえ」と応じながら、テーブルを挟んで向かいに座る橋村に微笑みかけた。

「橋村さんのお話、聞いていてとても楽しいですよ」

彩花は、湯気のおさまった蟹味噌入りのフカヒレスープをレンゲですくって口に含む。

週末の今日。

彩花は、橋村からの誘いで、銀座にある中華料理店を訪れていた。

こうして食事をともにするのも、もう3度目。橋村は、彩花が勤めている大手金融会社からの距離を考慮して、お店を選んでくれた。

「橋村さんは、海外への進出を具体的に考えているんですね」

橋村は、都内に数店舗出店している和菓子店の経営者だ。

30代半ばで父親から事業を引き継ぎ、近い将来、海外への出店を目指している。

その具体的なプランを語って聞かせてくれていた。

「いやあ、仕事の話になるとつい熱が入ってしまって…」

橋村は面目なさそうに頭を下げるが、仕事熱心な姿勢に、彩花は好感を抱いた。

そのとき橋村が、場の空気を変えるように「ふう」と息をついてひとつ間をとる。

「実は、今日彩花さんをお誘いしたのは、大事な話があって…」

居住まいを正して話し始める橋村に、わずかに緊張感が漂う。

彼が何を言わんとしているか、彩花は察しがついている。

食事をするのも3度目。関係に何らかの答えが出るような予感はしていた。そして今日、この場に足を運んだ時点で、彩花の中でも大方答えは決まっていた。

「これから、僕の隣に彩花さんがいて欲しいと思っています」

真剣な眼差しを受け、彩花もかしこまる。

すでに喉のほうまで、「はい」との返答が迫ってきていた。

「結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」

橋村が言い終えたところで、彩花は、口から出かかっていた言葉を飲み込む。

― けっ…こん…。

それは彩花にとって、素直には喜べない要求だった。

この記事へのコメント

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No Name
正直に話せばいいと思ったけど....
例えば、「両親が不仲であまり結婚にいいイメージを持ってなかったので、今結婚前提でと言われると重いです。じっくり付き合ってそれから結婚を考える形でいいなら是非お付き合いしたいのですが、どうですか?」 みたいに。
2024/10/28 05:2327
No Name
先週のポテトサラダ論がすごく心温まるいいお話だったので、もしかしたら今週も別の小説を読めるかも?と期待して開いたらジレンマのみの更新。残念過ぎました。今の連載はマティーニの(来週最終話) 以外、全て登場人物がおかしな設定ばかりで文章も内容も完成度の低くて似たり寄ったりですよね🤭
2024/10/28 05:4114返信1件
No Name
またしょうもない主人公の話
2024/10/28 05:1411
もっと見る ( 15 件 )

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