同棲。
それは、デートと結婚の間にあるグラデーションのような、恋人たちの甘い世界。
けれどそんな甘い世界は、少しでも気を抜けば、一瞬で残酷な世界へと表情を変える。
ふたりの距離が近づけば近づくほど、心は離れていく。そんな真実を浮かび上がらせる、残酷な恋の地獄にもなり得る──。
明里と亮太郎が住む1LDKの空間は、恋人たちの甘い世界となるか、それとも…。
Vol.1 クリスマス<明里>
― ちゃんと、話さなきゃ。
明治通りに面した広い窓から、燦々と日の光が差し込んでいる。
12畳のリビングから、少し奥まった場所に位置するキッチン。そこからすぐの場所に置かれたビンテージ調のダイニングテーブルは、同棲を始めてすぐの頃に購入したものだ。目黒通りを何往復もして、理想のダイニングテーブルを選び抜いた。
そして私は今、そのダイニングテーブルの席に着いている。
テーブルを挟んで向かいに座る亮太郎の表情は、窓から差し込む光が逆光になって、よく見えない。
けれど、不思議とこれだけはハッキリと感じ取ることができた。
― 亮太郎が、遠い。
12畳のリビングに6畳のベッドルームがある43平米の1LDK。決して広すぎる部屋じゃない。
それなのに、ダイニングテーブルの向こうの亮太郎は、はるか彼方にいるように感じた。
近くにいるのに、遠い。
同棲を始める前よりも彼を遠く感じるのは、どうしてなんだろう。一緒に暮らし始めた頃は、こんな日が来るなんて想像すらしていなかった。
― 話さなきゃ。
そう。だから、今日こそは──。
この1年ちょっとの同棲で溜め込みつづけた亮太郎への想いを、隠すことなく伝えるつもりだ。
この記事へのコメント
ようやく今後に期待でき...続きを見るそうな連載が始まって良かった!