表紙カレンダー Vol.121

「いつも前向きに生きようとしているだけ」シンプルで誠実な、川口春奈の現在地

近年、『silent』や『9ボーダー』など、多彩な役どころをリアルに演じ、人気実力ともにトップを走る川口春奈さん。

多忙な彼女を、池尻を象徴する大橋ジャンクション近くのマンションに潜む、イマドキなムードが漂う人気酒場へをご案内。

池尻の街とはなじみが薄いというが、新しい出会いにどんな感想を持つだろうか?現在の彼女の本音とともに語ってくれた。



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「価値観や感覚の合う人と一緒に質の良い仕事をしたい」

川口春奈

料理の説明を受ける川口さん。「自分が好きなものを選ぶのは間違いないけど、いろんなメニューを知りたいから」と、日頃からお店の方とのコミュニケーションを大切にしているそう


川口春奈さんが「東京カレンダー」の表紙を飾るのは、今月号で6回目。初めて登場した7年前はまだあどけなさも残っていたが、その後、2020年放送の大河ドラマ『麒麟がくる』で織田信長の妻という大役に抜擢され、女優として一皮むけた。

また、22年の月9ドラマ『silent』ではストーリーもさることながら川口さんのリアリティある演技も高く評価され、“泣ける女優”と呼ばれるようにもなった。

人気もうなぎ登りだ。例えば今年の上半期には21社ものCMに出演し、起用社数ランキングにおいて前年に続き1位の座を獲得した。また、インスタグラムのフォロワー数は500万に迫ろうとしている。名実ともに活躍する実力派だ。

この現在地を彼女自身はどう捉えているのだろう。そして、これからどこに向かおうとしているのだろうか。

今回のインタビューはそんな問いかけから始めてみることにしたのだが、ご本人から返ってきたのは「やれることをやるだけです」という極めてシンプルな答えだった。

「ドラマでも何でもその時に向き合っていることに対して誠実であるのみ。それが功を奏したから今があるんだと思う。

それに自分自身は役を与えられたらその役になるためにいつも必死で、ひたすら宿題をこなしているような状態だから、目標を定める余裕もないし、夢も持てない。人気にも執着しませんね。

すべてはタイミングとご縁であって、結局、なるようにしかなりませんから」

12歳で芸能の仕事を始めて、見られることに17年の月日をかけてきたとはいえ、川口さんの肝の据わり方は相変わらず逞しく惚れ惚れする。

その感想をストレートに伝えると、「ただ、いつも前向きに生きようとしているだけ」と彼女は言った。そして、「前向きになれる環境を作るようにしている」と続けた。

「前向きになれる環境」とはどういうものだろうか。

「価値観や考え方が自分と合う人と質のいい仕事ができたら最高だし、そうやって働くのが私の理想。

理想は自ら引き寄せて掴みにいくものだから、自分の思いは常日頃から具体的に伝えるようにしています。そうすると自分の中のわだかまりが消えて見通しが良くなるんですよ。

オフの時も波長が合う人と一緒にいるようにしています。普段の過ごし方や人間関係が仕事に影響を及ぼすことを、キャリアを重ねるにつれて実感するので」

だからなのかもしれない。例えばドラマ撮影のオフシーンなどを見ると、川口さんがいる場所は和気藹々とした空気で満たされている感じがする。

「本来は極度の人見知りなのですが、勇気を出して心を開くと楽になれる。チームの絆も強くなります。

居心地がいいに越したことはないから、率先して共演者やスタッフに声をかけ食事をすることもあります。それぞれ思うこともあるだろうし、ひとりで抱え込むより吐き出してフラットになった方が前に進みやすくなるはずだから」

そう話す彼女の目は澄み、希望を漲らせていた。まさに前向きな人だ。

「早く大人になりたいと思ってきた。30代も楽しみでたまらない」


来年は「30歳」の節目を迎える。

今年4月から6月まで彼女が出演していたドラマ『9ボーダー』でも描かれていたように大台の年齢には期待と不安が入り混じるものだが、彼女自身についてはどうやら期待が勝るようだ。

川口春奈

型にハマらない料理を口にして川口さんもご満悦だった


「早く大人になりたいと思ってきたので、30歳になるのは楽しみでしかありません。

年齢を重ねると演じられる役の幅が広がるし、場数を踏めばお芝居に奥行きが出るだろうからできるだけいろんな経験をしたい。私、いろんな景色を見たいんです」

彼女が考える女優業の醍醐味は、自分とは違う人生を生きられること。そして、自分の全身を使ってメッセージを伝えられること。

「その分、背負う責任も大きくなります。でも、エンターテインメントを生きがいにしている人は少なからずいる。

私自身もそのひとりです。だから、注目してくださる方々のために応えたい。応えなければいけない。この仕事は自分のためだけには、やれないんです」

さらなる境地を開拓したい……女優・川口春奈の新たな挑戦


新たな境地に至った川口さんは、新しい役柄にも意欲を見せる。

川口春奈


「やったことのないキャラクターに扮するのは怖いことでもあるけれど、新しい自分も見てみたいから、自分の可能性が広がりそうだとか、私がそれをやることで伝えられることがありそうだとか、これは私にしかできないと思ったら、引き受けます」

2023年の7月号では「役者の仕事が天職だとは思えない」と語っていたが、自信もついたのだろう。自分の才能を開花させることにも前向きだとしたら、川口さんの快進撃はこれからも続くに違いない。

では、プライベートは?恋愛の優先度は?単刀直入に迫ってみると、彼女は抵抗する様子もなく今の心境を明るく語ってくれた。

「恋愛も結婚もめちゃめちゃ大事。人生において仕事と同じくらい優先したいことだし、パートナーはいた方がいい。

恋が充実していると仕事のパフォーマンスが高まるし、仕事が恋にプラスに働くこともある。恋愛ではないにしても、友達とか家族とか本音をポロッと言える機会がないと、きついなと思います。

私は仕事だけを器用にこなせるタイプの人間ではないので、理解者は必要です」

きっぱりと言い切る川口さんは清々しくて、好感が持てた。インタビュー中、「向き合っていることに対して誠実であるのみ」と語ったが、それを体現している。

このブレのないところが多くの人を惹きつけてやまないのだろう。改めて納得させられた。

■プロフィール
川口春奈 1995年生まれ。長崎県出身。2009年、女優デビュー。22年にはエランドール賞新人賞を受賞。主な出演作は、大河ドラマ『麒麟がくる』、連続テレビ小説『ちむどんどん』、ドラマ『着飾る恋には理由があって』『silent』『9ボーダー』。

■衣装
ワンピース¥70,400、パンツ¥69,300、シューズ¥83,600〈すべてトーガ プルラ〉、イヤリング¥19,800、ブレスレット¥22,000、バッグ¥53,900〈すべてトーガ トゥ/すべてトーガ 原宿店 TEL:03-6419-8136〉


▶このほか:「乃木坂46に革命を起こせる人になりたい」20歳になった筒井あやめの決意表明



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