2024.09.21
アオハルなんて甘すぎる Vol.32女友達がいない。そう、たぶん、店長がともみちゃんの真横ではなく、1つ間を開けた席を私に勧めたのもそれが理由のはずだ。
ともみちゃんは、女同士でつるむのがキライだと“女友達は作らない主義”を公言していて、いつもは私や愛さんともお客さんとバイト…という会話の域を出ないし、距離を保ってその関係を崩さない。
もちろん店の外で会ったこともないから、そのプライベートは謎に包まれているのだけれど、そんなともみちゃんだから、客観的で的確なアドバイスをくれるかもしれないと思ったのだ。
私は、試験に落ちてから燃え尽きてしまっていること。仕事は充実しているのに、モヤモヤが消えないこと。トモさんにフランスに来ないかと誘われていているけれど決断できていない…というような状況を、1つ1つ説明した。
「トモさんしか頼る人がいなくなった時に、自分が彼に依存してしまわないかとか、それで関係が壊れるのも怖いというか…そういうのも、あるのかも」
これまでトモさんには説明できなかった感情まで言語化できたのは、ともみちゃんが私の話を遮ることなく聞いてくれる優しい人だからだろうな…と感謝しながら話し終えた。すると。
「あーやっぱり私、宝ちゃんのそういうところ、めちゃくちゃムカつくな」
実は、ともみちゃんにムカつくと言われたのはこれが初めてじゃなくて、私は苦笑いする。その正直さに好意を感じているせいか、ともみちゃんの言葉に傷ついたり、腹が立ったりしないのが不思議だった。
「そういうところって、どういうところかな?」
ごめん、教えてくださいと伝えた私に、そんな風に素直に質問してくるところも苦手だよ、とともみちゃんは大きなため息をついた。
「ちょっと、本気で言っていい?」
ともみちゃんの大きな黒目がちな可愛らしい瞳が鋭い光を放って、少し怖くなったけれど、私はお願いしますと言った。
「日々漠然と生きてるのになんとなくうまくいって。自分のラッキーさに気がついてないくせに、悩んでます、みたいな雰囲気だすところ。しかもその悩みの本質が何なのかも気がついていないところ」
ニコッと笑われて私は呆気にとられる。返事を失っている間もその言葉は続いた。
「周りに守られて大事にされてフワフワ生きてさ。がむしゃらに努力したこともないのに燃え尽きたとか、やってもいないのに怖いとか笑えるんですけど。欲しくて欲しくて仕方ないものって宝ちゃん今までの人生でないんじゃないの?夢とか目標とか持ったことあるわけ?」
鋭すぎるその言葉たちには、流石に少し反論したくなった。
「…目標を持ったこと、あるよ」
「へえ。何?」
「…だから最近だと通訳の試験とか…落ちた時本当に悔しかったし…」
「でも、落ちたらもういいんでしょ」
「…え?」
「一度ダメだったくらいで、ビビって立ち止まって逃げて終わらせられたなら、それは本当に欲しいものとは言えないよ。そんなに簡単に諦められたものを夢とか目標とか呼ばないで欲しいんですけど」
「…諦めた…わけじゃ…ないよ、落ちただけで…」
「諦めてるじゃん。だって次のトライはしないわけでしょ?」
― …誰もがそんなに強くいられるわけじゃない…!
トモさんにも思ったことを、ともみちゃんにも伝えようとしたけど、うまく言葉にならない私にともみちゃんは心底呆れたような顔をして、言い過ぎだぞ、という店長の制止を睨んで続けた。
「なりふり構わず必死にしがみついてもいないくせに、簡単に諦めてないとか言わないで。そういう甘ったるい生き方って、ほんっとにムカつくから。
私はね、ずっとアイドルとして成功したかったの。そのために全てを捨てて努力したし、可能性があるならってなんだってやったよ。
でも…絶対負けないって強い気持ちで続けても続けてもうまくいかなくて…ああ、いっそ辞めたら楽になれるのかなってふと思ったら、涙が止まらなくなった。
それで気がついたの。ああやっぱり私はアイドルを辞めるは絶対に嫌なんじゃん、悔しいんじゃん、って。いつか…夢を叶えた自分に会いたいんだ、って。でも…」
その時だった。
アオハル連載ありがとうございました。本当に半年間すごく読むのが楽しみで大好きな連載でした。作者の方、きっと有名な小説家さんなんだと思いますが、出来ればお名前位は知りたかったなぁぁ。個人的に今まで一番好きだなと思ったのは、三茶食堂と成田空港の話だったけれど、アオハルもお気に入りに加わりました。ここまで読み応え抜群且つ面白くて翌週が待ち切れない連載はもう暫く読めないのかな…
今日で終わるけれどそれぞれの “続き話” を是非読みたいです。
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