2024.07.20
アオハルなんて甘すぎる Vol.23前回:「ちょっとだけ芸能のお仕事させていただいていた」港区の飲み会に頻出する20代女性からの忠告とは
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1組、2組と、男女のペアが出て行く。カナさんと呼ばれていた女性もいつのまにかいなくなっていて、部屋の中には、私、ともみさん、エリックさんと後藤さんだけになっていた。
「後藤さんってお仕事何されてるんですか?」
ともみさんの質問に後藤さんは、うーん、まあ投資家っていうか、エリックみたいな若い子を助けるのがメインの仕事だね、と答えた。
「若い子を助けるかぁ…素敵なお仕事ですね」
鮮やかにそう笑うと、ともみさんは自然な動きで自分の右手、腕時計に目を落とした。
「まだ、2時間くらいしかたってないですけど、皆さんもういなくなっちゃったし…どうしましょう?後藤さん、お店変えます?私、近くに素敵なBARを知ってるので」
お付き合いしますよ♡というその提案に慌てたのはエリックさんだった。
「も、もう少しで大輝が来ますから…!ここで待ちましょう」
後藤さんはエリックさんの言葉を無視し、確かにここにいるのも飽きたよね、と言った。
「宝ちゃん、一緒に出ようか?」
「…え?」
「2人でいろいろ話したいなと思って」
突然自分に意識を向けられ、相変わらずねっとりとしたその視線と喉に迫る程強い香水の香りに圧迫されてしまう。反応できずにいる私の肩を、うん、そうしよう、と抱き、後藤さんが立ち上がろうとした。
40代にも50代にも…もしかしたら若く見える60代なのかもしれない。とにかく年齢不詳。浅黒い肌に真っ白い歯、髪の毛はオイルに光り、ブルーのピンストライプのスーツもラメの糸なのか光っている。
ギラギラという表現がぴったりな人のその体を振り解こうと、放してください!と身をよじったとき、なんか寂しい~というのんびりとしたともみさんの声が被さってきた。
「私じゃなくて宝ちゃんを連れて行きたいなんてショックです…私、後藤さんともう少しお話したいのにぃ」
「…そうですよ、ともみちゃんもこう言ってますし、大輝もここに向かってますから…!あ、後藤さんのグラスが空ですね。次何飲みます?スタッフ呼びましょう!」
いそいそと部屋のインターフォンに向かっていくエリックさんに後藤さんは溜息をつき、諦めたようにソファーに深く座りなおした。
「さっきからずっと名前が出てる、大輝…さん?ってどんな人なの?」
ともみさんは私に聞いたのに、答えたのは後藤さんだった。
......
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