犬と人間が紡ぐ愛の物語。映画『僕のワンダフル・ライフ』と一緒に楽しみたいワインとは?

毎月、映画とワインのマリアージュを提案していく連載、ほろ酔いシネマ。

今月は、ワンちゃんが主役の大人気映画『僕のワンダフル・ライフ』。

3度も生まれ変わり、大好きな飼い主の人生をともに生きる“犬生”を描いた作品だ。

この映画と一緒に楽しむのは、“犬と人間との愛”から生まれた、ワシントンのワイナリーからの1本!

▶前回:Vol.17「『ウェディング・ハイ』×オーストラリアのガーデン スプリッツ」



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飼い主思いの犬が輪廻転生。3度も生まれ変わる


:クラリン(嵩倉)は犬派で編集長は猫派。編集部ではしばしば犬猫論争で激戦が繰り広げられると聞いたのだけど……。

嵩倉:そうなんですよぉ。互いに一歩も譲らず、編集部内でそれぞれの派閥に分かれてバチバチやってます。

私は6歳の時からずっと犬との生活を送っていて、今もモニカと名付けた犬を飼ってます。もうかわいくて、かわいくて。

新谷:私もじつは犬派なんです。実家で一番長く暮らしていた犬は、コーギーとテリアのミックスで、16年間も一緒でした。

:……という犬派ふたりの強力なプッシュから、今回はワンちゃん映画(笑)。『僕のワンダフル・ライフ』を観ました。

新谷:監督はラッセ・ハルストレム。以前ご紹介した『ショコラ』と同じ監督ですが、他にも『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『HACHI 約束の犬』など、犬を題材にした映画を数多く撮っています。

:これはぜひ吹き替え版で観てほしい。

最近はプロの声優をさしおき人気俳優に吹き替えさせて、映画を台なしにしちゃう例が少なくないけど、主人公の犬、ベイリーの吹き替えを担当するのは高木 渉。最近は俳優としても活躍するベテラン声優ですが、見事に犬の心の声を演じてますね。

今月のワインシネマ『僕のワンダフル・ライフ』


8歳の少年イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬のベイリー。

大好きな飼い主に見守られて犬の人生を終えるが、「イーサンから離れない!」という強い思いが天に届いたのか、別の犬として生まれ変わることに!

イーサンともう一度出会うために、3度も生まれ変わったベイリーの4つの人生を描く。

映画『僕のワンダフル・ライフ』のイメージイラスト

楽しい時もツラい時も傍にいてくれる最強のパートナーの物語


犬は普段こんなことを考えているの!?ベイリーを通して犬が飼い主にどれほどの愛情を持っているのか、犬の視点と心情が描かれる。

大人になったイーサンを演じるのは名優デニス・クエイド。



嵩倉:私も観ましたけど、自分を助けてくれた少年イーサンから離れたくない、彼と一緒にいて幸せにするという使命に燃えた犬のベイリーが、3度も生まれ変わるのがなんとも健気でかわいいですね。

:生まれ変わるたび、犬種も飼い主も変わるのだけど、過去のベイリーの意識は残ったまま。メスに生まれ変わったのに心はオスのベイリーで、声もそのまま高木 渉なのが微笑えましかったなぁ……。

新谷:私が大好きなシーンは物語のクライマックス。

3度目の生まれ変わりで初老のイーサンと再会したベイリー改めバディが、自分がかつてのベイリーであることをイーサンに気づいてもらおうと、特技のアレを披露するシーンです。

嵩倉:分かります〜!あのシーンはなんど観ても泣ける。犬好きの人には絶対に観てもらいたい。

喧嘩から救い出された3本足の犬がラベルに


:それで今回のワインだけど。

嵩倉:そうでした。映画の話で盛り上がっちゃって、ワインのこと忘れるところでした。

:おいおい、クラリン(苦笑)。犬派のふたりなら「きゃ〜」となること間違いない、このワインにすんなり決まりました。

ワシントンのダンハム・セラーズが造る「スリー レッグド レッド」。

「Dunham Cellars THREE LEGGED RED 2021(ダンハム セラーズ スリー レッグド レッド 2021)」

「Dunham Cellars THREE LEGGED RED 2021」


ワラワラ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーを3分の1ずつブレンド。

飲み応えはありながら、フレッシュさも感じるハーモニーのとれた味わい。食卓に登場すれば、気がつくとボトルが空いてしまっているような、日常に寄り添う1本。

¥3,608/オルカ・インターナショナル TEL:03-3803-1635



嵩倉:きゃ〜!かわいい、ワンちゃんラベル!

新谷:首都ワシントンでもワイン造ってるんですね?

:ワシントンはワシントンでも、シアトルを州都にもつ西海岸のワシントン州。カリフォルニアに次ぐ全米2位のワイン産地だ。

今年の5月、「TASTE WASHINGTON」というイベントの取材で、およそ20年ぶりにワシントンに行ったけど、食文化とワイン産業の発展に驚いた。

もともとリベラルな風土とはいえ、女性や移民、社会的マイノリティーのシェフが活躍してるし、ワインもいまでいうナチュール系があったりしてじつにエキサイティング。

嵩倉:このワンちゃんは?

:そうそう。20年前に取材した時に感銘を受けたワイナリーのひとつがこのダンハムなんだ。

創業者のエリック・ダンハムはある日、犬の鳴き声を聞いた。行ってみると、子犬が他の犬に襲われ、重症を負っている。彼は急いで獣医のもとに連れて行ったが、犬は後ろ足を1本失った。

その後、犬はポートと名付けられ、エリックの仲良しとなった。

新谷:まるでイーサンとベイリーですね!片足を失い、3本足だからスリーレッグドなのか。

:エリックもポートももうこの世にいないけど、現地での試飲イベントにブースが出てて、いいワインを造り続けられていたよ。

嵩倉:ワイン飲みながら映画を観直したら、号泣しそう。柳さん、ハンカチ貸して!

マリアージュをお届けするのはこの3人!

ワインジャーナリスト・柳 忠之氏


幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味のあるコメントに定評があるワインジャーナリスト。今回ふたりに、犬にまつわるエピソードを聞き、その熱量に驚かされた!

映画コラムニスト・新谷里映氏


映画を中心に、書いたり取材したり喋ったり。今回紹介した映画が気に入ったら『マイ・ドッグ・スキップ』もおすすめしたい。犬と暮らせるように引っ越し考えようかな。

東京カレンダー編集部・嵩倉伶奈


本連載の担当になって7年目に。ワインの知識は少しずつ身についていると信じ、柳氏にしがみつく日々。すべての犬をこよなく愛し、最近の口ぐせは「犬は絶対裏切らない」。

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東京カレンダー2024年9月号の表紙

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