2024.05.25
アオハルなんて甘すぎる Vol.17「光江さんに、おごらせてください、ということは、相談させてほしい、と同義なんだよね」
同義?と聞き返した私に大輝くんは頷いて、いつからそうなったのかは知らないけど、と続けた。
「知る人ぞ知る…って感じの不思議なシステムなんだよ。光江さんのその日の気分で、相談を受けてくれるかくれないかは決まるんだけど、気分が乗れば、悩みだったり、喝を入れて欲しかったり、まあいろいろ聞いてくれてアドバイスしてくれるというか。
西麻布の女帝のカウンセリングシステム…って感じかな。光江さんに話を聞いてもらった人達が次に進めるようになるというか、相当ハードなトラブルが解決したって噂もある。そのお礼というかお代が、光江さんが飲みたいお酒を一杯おごるってことで。だから“ババアのたわごと代”なわけ」
“ババアのたわごと”とはつまり、“光江さんのアドバイス”のことなのか。なんだかものすごいパワーワードで、よくわからないけれどご利益がありそうだ。
「政治家とかにも実はお抱え占い師がいるって聞いたことない?光江さんは占い師じゃないけど、オレの父親も、たまに光江さんと話してるみたいなんだよね。うちの父はいつもね、相談相手を間違えると人生が狂うって言ってるんだけど…」
「人生が狂う?」
「うん。良い相談相手を見つけられて、相談者の人生が加速するのは良いパターン。でも相談相手を間違うと人生が減速してしまうこともある。減速ですめばいいけど、後退することもあるし、時には人生が終わるときもあるって。
だから…相談する相手は慎重かつ丁寧に選べ、選ぶ自信がないなら相談しない方がましだって何度も言われたなぁ」
「…わかるような…」
わからないような。と思っていると、大輝くんが笑った。
「まあとにかく…光江さんは、うちの父みたいな立場の人間にとっても、貴重で信頼できる相談相手だってこと。光江さんが、西麻布の女帝とかゴットマザーって言われるのは、そういう理由があるんだよね」
そういえばさっき。ただ泣くだけなら赤ん坊と同じ。美学を持たなきゃダメ。そう言われた。その意味を私も聞いてみたい。そう思いながら大輝くんに尋ねた。
「光江さんは、どんな人の相談でも受けてくれるの?」
「うん、光江さんの気が向けばね。オレはまだ相談させてもらったことはないけど、一杯おごる、っていうのも、別に高いお酒ばっかりじゃないし。それこそ、これ」
大輝くんは、私のグラスを指さした。
「一杯1,300円のジントニック。これを光江さんにおごって、相談にのってもらってたオレより若い女の子もいたよ。何を相談したかのかは知らないけど、帰る時には、めっちゃ癒やされたぁ~明日からまたがんばれるぅ~って号泣してた」
「…あの人の猛毒舌にどうやったら癒やされるというのか、オレにはナゾすぎる」
がまんできないとばかりに呟いた雄大さんを、ムキになってかわい~とまた大輝くんが茶化してから続けた。
「ただし、光江さんは誰にも連絡先を教えないらしいから、遭遇した時に捕まえるしかないっていうレアキャラ扱い。携帯を持ってるのかどうかもナゾらしいよ。だからみんな愛さんみたいに、会ったらチャンスを逃さない!ってなるわけ」
― あれだけ派手ならすぐに見つかりそうなのに。
かくれんぼには全く向いていない存在感…なんてことを思っていると、大輝くんの携帯が短い音を立てた。画面を確認した大輝くんのその顔がフニャっととろけて、ごめん!と勢いよく私たちを見た。
「オレ、帰っていい?」
「…は?何言ってんだ、愛を待とうって言ったのはお前だろ?」
そう言った雄大さんに、そうなんだけどさ…と答えながらも、大輝くんは大好物の前で“まて”をさせられている子犬のようなソワソワ感を出し始めた。
「本当にごめん。でも今、彼女から会いたいって連絡がきて。会えるなんて超久しぶりだから、今すぐ会いにいきたい」
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