2024.05.25
アオハルなんて甘すぎる Vol.17「…怖い。光江さん相変わらず怖いです。もしかして何か知ってます?」
「知らないよ。知りたくもない」
光江さんは心底どうでもいいと言わんばかりに、深いため息をついたあと、ああタバコが吸いたい、と言った。なんでこの店禁煙にしちゃったんだろうねぇとつぶやきを続けた光江さんに、大輝くんが、いや屋内禁煙は法律ですからと笑う。
そのタイミングで自動ドアが開き、雄大さんが戻ってきた。手には光江さんご所望のワインリスト。“普段は出していない方のリスト”らしいそれを無愛想に光江さんに手渡したあと、雄大さんは、仕事の電話をしてくる、とまた出て行った。
「あ、逃げた」
そう言ったのは大輝くんで、光江さんは気にする様子もなく、ワインリストに集中している。
― 雄大さんは光江さんが苦手なのかな。
私がそんなことを思っていると、愛さんが勢いよく言った。
「光江さん…!今日は私に、おごらせてもらえます?」
「…私がおごる方が楽なんだけどねぇ」
そう答えた光江さんは、しばらくじいっと愛さんを見つめたあと、仕方がないかとつぶやいた。
「…まあ、いいよ。1時間なら。それ以上は無理」
「やった!光江さん、なんでも頼んでください」
「なんでもって。愛、アンタ、このリストに並んでるワインの値段わかってる?」
「う…。知らないですけど。でも大丈夫、今日は覚悟しました」
「じゃあ遠慮なく。ババアのたわごと代を有難く頂きます」
― ババアのたわごと代?どういうこと?
何にしようか…とパラパラとワインリストをめくる光江さんを見る限り、愛さんのおごりでワインを飲むのだろうけれど。私におごらせてもらえます?からババアのたわごとへの流れが理解できずにいると、大輝くんに、宝ちゃん、と呼ばれた。
「オレたちはカウンターに移動して、終わるのを待っていようか」
光江さんとの話が終わったらすぐ合流するからごめんね、と両手を合わせた愛さんに謝られ、何が終わるのを待つのかいまいちわからないまま私は頷いた。大輝くんに続いて個室を出ようとしたとき、お嬢ちゃん、と光江さんに呼び止められた。
「涙の理由は知らないけどさ。ただ泣くだけなら赤ん坊と同じだからね」
「…?」
「美学を持たなきゃダメだよ」
理解できずに問いかけようとした私に光江さんは、また今度ゆっくりね、と言った。
◆
仕事の電話だと言っていたはずの雄大さんは、カウンターで1人、いつものラムをロックを飲んでいた。
「光江さんが苦手で逃げちゃう雄大さんかわいー。電話、ウソだったの?」
茶化す口調で雄大さんの肩に回された大輝くんのその手を、ウソじゃない、電話が終わって戻るのが面倒だっただけだと雄大さんがあしらう。雄大さんと大輝くんに挟まれてカウンター席に座ると、今日この店に入った時の緊張感が復活した。
― 何から話せば…。
西麻布の女帝の登場…というか乱入によりごまかされていた感があったけれど、雄大さんともきちんと話さなければならない。
「宝ちゃん、何にする?」
大輝くんに聞かれて、私は自分にはお酒の知識も注文のレパートリーもないことに改めて気がついた。その上、この店にはメニューが無い。いつもは愛さんがおすすめを教えてくれてるからなぁ…と、以前勧められたジントニックを思い出し、頼んだ。
大輝くんは、雄大さんと同じラムをソーダでと注文した後、さっきの“ババアのたわごと”について説明してくれた。
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