マティーニのほかにも Vol.3

港区の1LDK55平米で年下彼氏と同棲して1年半。30歳女が最近危機を感じているワケ

東京に点在する、いくつものバー。

そこはお酒を楽しむ場にとどまらず、都会で目まぐるしい日々をすごす人々にとっての、止まり木のような場所だ。

どんなバーにも共通しているのは、そこには人々のドラマがあるということ。

カクテルの数ほどある喜怒哀楽のドラマを、グラスに満たしてお届けします──。

▶前回:初デートで渋谷のイタリアンに連れて行ったら、「なんか違う…」と男がフラれた理由


Vol.3 <モスコミュール> 惣田瑠美(30)の場合


昨夜、夜風を取り込むために、ほんの少しだけ開けて寝た窓。

その1cmほどの隙間から、楽しげで賑やかなピアノの音が聞こえてくる。

「ううぅ〜、頭に響くぅ…」

元麻布の住宅街に位置する瑠美の自宅マンションは、すぐ近くにこども園があるのだ。

朝9時になるとピアノの音とともに子どもたちの声が聞こえてくるこの環境を、瑠美は心から気に入っていた。

けれど、いつもなら微笑ましく感じる子どもたちの声が、今朝ばかりはズキズキと瑠美の頭を刺激する。

「ちょっと秀司、窓閉めて…」

と、そこまで言いかけて瑠美は口をつぐんだ。

時刻はすでに9時。こんな時間に、秀司が部屋にいるわけがない。

「よいしょ…と」

重たい体に喝を入れどうにかベッドから身を起こした瑠美は、朝日に目を細めながらそっと窓を閉め切る。

そして、少し静寂を取り戻した部屋のなかで作り置きのフルーツウォーターをグビグビと飲み干すと、昨夜のことを思い出しながら大きなため息をつくのだった。

この記事へのコメント

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No Name
カクテルだけど銅のマグカップってオシャレ。夏場なら特にモスコミュールはこのスタイルで飲みたい♡
カクテル言葉と上手く絡めたステキなストーリー。
2024/05/29 05:3140
No Name
けれど瑠美は、秀司と一緒にいるためだったらこの先何百杯、何千杯でも、モスコミュールを飲むつもりだ。

最後のここ、とても良かったです。
2024/05/29 05:3338
No Name
秀司も、毎度おなじみの二股とかしてる不誠実男かと思いながら読んでいたら、まさかの早とちりで 😆 愛想つかされた?と悩んでたんだね。でもこの表記ミスは誤解しちゃうわ。
ちゃんと謝ったり話し合いの出来るカップルはいいね。
2024/05/29 05:2231
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