マティーニのほかにも Vol.2

「なんか違う…」初デートで渋谷のイタリアンに連れていったらフラれた、和歌山出身の慶應男

東京に点在する、いくつものバー。

そこはお酒を楽しむ場にとどまらず、都会で目まぐるしい日々をすごす人々にとっての、止まり木のような場所だ。

静かなバー。賑やかなバー。大規模なバーに、隠れ家のようなバー。

どんなバーにも共通しているのは、そこには人々のドラマがあるということ。

カクテルの数ほどある喜怒哀楽のドラマを、グラスに満たしてお届けします──。

▶前回:国立大卒の22歳女。メガバンクに入社早々、打ちのめされたコト


Vol.2 <ミクソロジーカクテル> 小野田翔平(25)の場合


5月の夜風が、ほろ酔いの頬を優しく撫でる。

― なんだか、思いがけず良い夜になったな…。

行きつけにしている三軒茶屋のバーから、太子堂の自宅マンションまで徒歩10分。

翔平は鼻歌交じりで夜道を歩きながら、つい先ほどバーで出会った女の子・早紀子との会話を思い返していた。

「翔平さんは、どんな映画が好きなんですか?」

バーカウンターでの早紀子の注文を笑うというとんでもない失礼は、普通なら簡単に許されることではない。

にもかかわらず屈託なくそう尋ねてくれた早紀子の、愛らしい笑顔が目に焼き付いていた。

お互いに映画好きだと言っても、数多のジャンルが存在する映画の趣味が合うことは稀だ。

早紀子もきっと、女の子らしくラブストーリーやアニメーション大作などが好きなのだろう…と思いきや、映画の趣味は意外にも骨太だったことも嬉しい。

― なんか似た空気を感じて、ホッとする子だったよなぁ。流れでLINEも交換したけど、解散してすぐに送るのはしつこいかな?

久々に訪れた小さなときめきの予感に、翔平の胸は思わず高鳴る。

けれどそんなワクワクとした気持ちは──。

自宅マンションの玄関ドア前で“あるモノ”を見つけるなり、風船の空気が抜けるように、すっかりしおれてしまうのだった。

この記事へのコメント

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No Name
終わり方が爽やかで素敵なお話だった!
和歌山にもファミレスの類いは多くあると思うから、ラ・ボエムとかそんな感じのお店だったのかな? でも18-19歳ならちょうど良さそうなのに。はっさくをダサいと思うのもおかしいし。でもコンプレックスの象徴とも言えるミクソロジーカクテルと瑠美もおかげで前向きになれてなんだか微笑ましかった♡ 次は瑠美だけど、早紀子&翔平の今後も是非読みたい。
2024/05/22 05:4452
No Name
昭和感丸出しなフォントででかでかと「はっさく」
どんな?と思って検索しちゃった。
2024/05/22 05:4850返信1件
No Name
大学1年の苦い思い出、好きになる相手を間違っただけだと思うけど深いトラウマになってたんだね。7年後にようやくそこから抜け出せて早紀子にも連絡出来て良かったよ。彼女も長野県出身だから価値観すごく会いそう。
2024/05/22 05:3143返信2件
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