オトナの5分読書 Vol.23

「繰り返し読む」や「マーカーを引く」勉強法、実は効果が低い!科学的根拠に基づく勉強法とは

②ハイライトや下線を引く


色とりどりの蛍光ペンを使って単語や文章をハイライトすると、なんとなく勉強した気になります。けれども残念ながら、ハイライトすることや下線を引く勉強法にはあまり効果がないことがわかっています。

こういった勉強法は、個人差があると言われています。つまり強調する場所を選ぶのがうまい人もいれば、そうではない人もいて、そのハイライトした教材をどのように勉強するかも人によって違う。

だから、ハイライトをより効果的に行う人には役立つかもしれないが、推論を必要とするより高度な課題では、かえってパフォーマンスを低下させる可能性があると研究結果があります。

このようにかなり低い評価となっているハイライトと下線ですが、僕は、ハイライトしたり下線を引いたりします。大事なところは蛍光ペン、それよりちょっと重要性は落ちるけど強調したい箇所は、赤いペンで下線と使い分けたりもする。

しかし、再読と同じで「勉強した気になってしまう」ことがある点には注意し、ハイライトや下線を引くだけではなく、あとから述べる効果の高い学習法を行う必要があります。

2. 科学的に効果が高い勉強法


次に学習において科学的に効果が高いとされている効果的な学習法について、その根拠となる論文の一部を紹介しながら説明します。

①アクティブリコール


まず学ぶために決定的に重要なのが、アクティブリコールです。簡単に言うとアクティブリコールとは、「勉強したことや覚えたことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと」です。

実はこれまでの学習に関する数多くの研究から何かを記憶するためには、それを積極的に思い出す作業や、脳みそから頑張って取り出す作業こそが、決定的に重要だということが明らかになっています。

ちなみに、情報を積極的に思い出すことによって、その情報が長期的に記憶に定着しやすくなる現象のことを「テスト効果」といいます。

一般的に想像するような試験やクイズなどを受けないといけないのかと思われるかもしれません。しかし、試験やクイズに限らず、とにかく記憶から引き出す作業であれば、効果が期待できます

多くの人は、勉強に対してインプット中心のイメージを持っています。

例えば、ある教科書を100ページ読んだAさんと、200ページ読んだBさんがいたとします。「どちらが多く学びましたか?」と聞かれたら、200ページ読んだBさんと答える人のほうが多いのではないでしょうか。

インプットの量で学習を評価してしまう考え方は、とても一般的です。できるだけ多くの文章を読む、できるだけたくさん講義を聴く、できるだけインプットの量やそのための時間を増やすことがよい勉強法だと考えている人が多いかもしれません。

しかし、インプットだけしか行わない勉強方法というのは、科学的には効率が悪いことがわかっています

勉強した内容を思い出す、記憶から取り出す作業(例えば、覚えたことを白紙に書き出したり、練習問題を解いたり、テストを受けたりすること)について、すでに覚えたことを単に確認する作業であるとか、学習の効果を判定するための作業であると勘違いしている人がいます。

けれども学習に関する数多くの研究から、思い出す作業、アウトプットすることこそが、記憶を長期に定着させる効果的な勉強法だということがわかっています。

アクティブリコールのことを「ただの暗記」なのではないかと思う人もいるかもしれませんが、アクティブリコールには、教材の内容について直接聴く問題だけではなく、推論など、より深い理解が必要な応用問題に対しても効果があります

また、アクティブリコールを時間をおいて繰り返すと、学習効果が高いことがわかっています。アクティブリコールは、情報を積極的に思い出すことで、「この情報は大切だよ」と自分の脳に言い聞かせ長期記憶として保管してもらう、そんなイメージを僕は持っています。

学生や資格試験の勉強をしている人であれば、ほとんどの人が問題集や過去問を解いたり暗記カードを使っているでしょう。

しかし、何かの教材を読んでいる時、その範囲の練習問題が常にあるわけではないし、問題集によっては試験範囲を網羅的にカバーしておらず、問題集で問われなかったところが穴になる可能性もあります。

そのため、教材を読んでいる時からアクティブリコールを意識する必要がある。

記憶から引き出す作業をより重視し、インプット中心の勉強から、アウトプットをより重視した勉強に変えてみることが大切です。

ここで僕が医学の膨大な知識を覚えなければならない時に使ってきた、そして今でも使う「ブツブツつぶやいて教えるふりをしながら書き出す白紙勉強法」を紹介します。

長ったらしい、大そうな名前を付けてみましたが、至ってシンプルな勉強法です。

1)英単語のリストなど覚えたい情報をまず読みます。その後その情報を見ないで、覚えたい内容を白い紙にできるだけ書き出していきます

その際のポイントは、元の情報を見ない、つまり記憶の手がかりがない状態で頑張って記憶から引き出すことです。

2)覚えにくい内容や難しい内容の場合、声に出しながら書くようにします。これは、ある情報をただ黙読するよりも書き出したりブツブツ呟いたり、声に出したりしたほうが記憶に残ることが知られていて「プロダクション効果」と呼ばれています。

3)さらに誰かに教えているフリをしながら、アウトプットすると、より効果は高いと思います。誰かに教えることは、実際に情報の整理や記憶の定着を促す効果が確かめられています。

誰かに教える、または教えようとすることで、その学習内容の理解が深まることを「プロテジェ効果」といいます。

興味深いことに、実際に誰かに教えなくてもあとで誰かに教えることを前提に勉強すると、学習効果が高いという研究報告があります。

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