流行るお店の理由 Vol.1

街を成熟させる地元住民のチカラ。

スカイツリーの完成を2011年に控え、にわかに活気づく押上・向島エリア――。
過渡期を迎えたこの街に誕生した洋食店には、地元と食を愛する人々の想いが溢れていた。

オープンしたてですが、地元のみなさんのサポートのおかげで頑張っています!

恩田清シェフとマダムの奈美さん

オンダ

onda

居心地がよくきちんと美味しい地元の洋食屋さん

体温とは、一般的に身体が持つ温度の事を言うが、もしかすると、“身体が感じる温度”という捉え方もあるのかもしれないと、しみじみ思う店に出逢った。

その店の名は『onda』。スカイツリーのお膝元として脚光を浴びている墨田区・向島に、今年の7月オープンしたばかりの洋食店だ。

店主の恩田清氏は、もともと生まれも育ちも向島。最近でこそ、街の雰囲気も変わってきたが、昔からの住民はいたって冷静に、その状況を受け止めているという。

「時代が変われば当然、街も変わるけれど、根本的な事は変わらないですから。人の温かさとか、穏やかな空気感とか、そういうことは、本当に昔のまんま」

調理師専門学校を卒業後、銀座のフレンチ店で28年勤めた。その間、フランス各地で本場の料理を学び、自分の原点を確認する事を怠らなかった。いつか、自分の店を持ちたいという想いは常にあったのだが、それは思わぬ形で実現した。

長きに亘って働いてきた銀座の店が、閉店する事となったのだ。胸が潰れる想いだったが、落ちこんでばかりはいられないと、自身の店をオープンする決意を固めた。料理人になった時から、ずっと思い描いてきた自分の店――。恩田シェフが、“理想の場所”として選んだのは、銀座ではなく、ほかならぬ自分が暮らす地元、そして自宅だった。

「最初に、自宅を改装して店をやるという話を主人から聞いた時は、正直不安もありました。けど、お客様同士が“家にいるみたいだね”って話していると、本当に嬉しいなって思うんですよ」と、マダムの奈美さんは笑顔を見せる。

夫婦ふたりで営む小さな店で供するのは、フレンチをベースにした“誰もが知っている洋食”。ウズラの炭火焼や、ブルギニヨンなどの伝統的なフレンチに交じって、ビーフシチューやクリームコロッケなど、懐かしの洋食がメニューに並ぶ。

素材にもこだわり、埼玉にある親せきの農園で採れた野菜や、奈美さんの故郷である山形産の食材を使うことが多い。舌に馴染む、新しくもどこかホッとする料理を求める地元住民で、昼夜問わずこの店は賑わいを見せる。

「僕も昔から、この街に住んでるけれど、店を始めてから地元の方との交流もぐんと増えました」

人の心と心を自然に結ぶもの。それは、心地の良い“体温”と、心が和む美味にほかならない。

左.スペアリブのハチミツビネガー¥1,400。付け合わせは、玉ねぎのロースト、ずいきなど

右.自宅のリビングを改装したとは思えないほど、モダンな空間。恩田夫妻のセンスが窺える

左.「作った瞬間に料理をお出しできる」と、恩田シェフもお気に入りのオープンキッチン

右.車庫の横がエントランス。この先の階段を上れば美味が待っている

左.ゴロッと野菜の温サラダ¥1,000。内容は季節によって異なる。この日は甘唐美人や、ハンガリアンパプリカなど

右.タンシチュー¥1,800。じっくり煮込んだタンが口の中でほろりとほぐれる

左.アクアパッツア¥1,600。あえてアサリを使わず、トマトのみでさっぱり仕上げる

右.「洋食に日本酒?」と思うことなかれ。マダムの奈美さんのオススメは"Sogga Pere et fils"の純米吟醸¥4,150。料理の味をしっかりと引き立てる1本


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