東京エアポケット Vol.24

インスタでコスメを紹介している28歳女。職場に内緒だったのに、上司から副業を疑われ…

恋に仕事に、友人との付き合い。

キラキラした生活を追い求めて東京で奮闘する女は、ときに疲れ切ってしまうこともある。

すべてから離れてリセットしたいとき。そんな1人の空白時間を、あなたはどう過ごす?

▶前回:「GWが憂鬱」LINEの友達は190人もいるのに、誘える相手は1人もいなくて…


「みんな同じ」じゃ窮屈だから…/安奈(28歳)


月曜日、8時30分。

「おはようございまーすっ」
「あ、おはよーう」

狭い更衣室は、出社してきた同僚たちであっという間にギュウギュウになった。

ここでは、となりのロッカーはもちろん、向かい側のロッカーにも気を配らなくてはならない。

「ごめんなさい、ちょっと開けてもいい?」
「はい!こっち、閉めます」

スペースに余裕がなく、扉を半開きにするのがやっとだ。

― これじゃあ、制服を取り出すだけでも大変だよね。

私は、高橋安奈。

新宿にあるオフィスビルの1階、住宅設備を展示したショールームで、アテンダントスタッフとして勤務している。

オープニングスタッフとして働き始めて、もうすぐ3年。

仕事の前に気疲れしたくない私は、今日もみんなより10分前にやってきて、すでに着替えを終えていた。

少し離れた場所にある全身鏡の前に移動すると、首にふんわりスカーフを巻き、更衣室をあとにする。

そして、始業時刻の9時。

ショールームの開場は10時だから、まだシャッターが下りたままで薄暗い。

支度を済ませたアテンダントたちがぞろぞろとやってきて、横一列に並んだ。

同じ制服、同じヘアスタイル、同じメイク。同じ笑顔と同じ姿勢に、同じように切りそろえられた素爪…。

― 今日もみんな同じ…。

いつしか見慣れた光景になっていたけれど、俯瞰するとちょっと異様だな…なんて思ってしまう。

― 自分だって、そのうちのひとりなんだけど。

この朝礼も、そのあとにおこなわれる恒例の“あの”儀式も、私にとってはちょっぴり憂鬱なのだった。

この記事へのコメント

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No Name
ますばこのお局様に辞めていただきたいですな。
2024/05/13 06:4135
No Name
ショールームのナレーター? アテンダント? も大変なんだねぇ。 「皆同じに見えるように」ってすごい昔の日本的な考え方と言うか。ファンデは質感までリップはブランドの品番まで決められてるとかビックリ! なら会社で支給してくれよと思ってしまう。皆で協力して刷新していけるといいけど。
2024/05/13 05:2033
No Name
読んでる途中から、ヴィヴァルディの春(四季から) が頭の中で繰り返し流れてきてる😆 

もやもやした時は音楽に癒されるね。
2024/05/13 05:2320
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