三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.4

「そろそろ子どもが欲しい…」不妊治療クリニックに通う31歳妻が、夫に相談したら衝撃の返事が…

初めての夫婦喧嘩


「なんか、久しぶりだね、こういうの」

琴子と幸弘は、乃木坂にある和食とワインを楽しめる店、『乃木坂 しん』を訪れている。


「ああ、確かに。そういえばこの間、俺の両親が迷惑かけたな」
「ううん、大丈夫。それでね、今日は少し話があって…」

琴子が話を切り出そうとした時、ちょうど食事が運ばれてきた。

「わぁ、美味しそう」

八寸を見て、琴子が小さく歓声を上げると、幸弘も微笑んだ。

幸弘の笑顔に安心した琴子は、本題に入ることにした。

「あのさ、今日こそは話さないと、と思っていたの。その、2人のことについて…」

幸弘は、表情一つ変えず、上品な箸使いで皿を綺麗にしていく。

「あの、最近ずっとしてないじゃない?お互い忙しいし、仕方がないとは思っていたんだけど。でもやっぱり、2年もしてないのは、夫婦として健全じゃないと思うの」

幸弘の顔色を読み取ろうとする琴子だったが、相変わらずのポーカーフェイスで、まったくわからない。

幸弘は、白ワインをゆっくりと口に含んだ後、口を開いた。

「夫婦として健全って、何?」

静かで優しく、でもどこか冷たい口調。

琴子はわずかに萎縮するが、なんとか言葉を絞り出す。

「やっぱり夫婦なんだし、愛情表現って大事だと思うの。普通の夫婦はもっとしていると思うし。それに、私は将来的に子どもを持ちたいし…」

お店の中だというのに、自分たちがいる空間だけが切り取られたように、周囲の喧騒が一切聞こえない。

幸弘はペースを変えることなく、ゆっくりと八寸を食べ終わると、ナプキンで口元をふく。

そして作ったように口角をあげ、琴子の顔を見た。


「琴子にとって、愛情表現ってそれだけなの?普通の夫婦ってなに?俺ら、普通の夫婦になりたいんだっけ?」

幸弘の言葉に琴子の緊張感が高まる。

「なりたいとかじゃなくて…。ただやっぱり、夫婦っていっても男女なんだし、そういうのは大事だと思うの」

幸弘と琴子は、これまで大きな喧嘩をしたことがない。

幸弘は、大抵琴子の意見に賛同する。家を決めるときも、家具を揃えるときも、家事の分担も、琴子が決めてきた。

だから、こういった意見の食い違いは、初めて。

張り付いたような笑顔を崩した幸弘は、「ふぅ」とため息をつき困った顔をした。

この記事へのコメント

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No Name
和食店で八寸を食べてる中、いきなり
「最近ずっとしてないじゃない?」とか言い出す琴子もどうなの🧐    話の途中でも、面倒になるとすぐ職場に逃げる幸弘も大人気ないし。
2024/04/26 05:4732返信2件
No Name
そんなに親の影響受けるのが嫌なら、さっさと縁切って、1人で海外にでも行けば良かったのに。結局、恵まれた環境を捨てられなかっただけだよね。何でも親のせいにして、つまらない男。
2024/04/26 08:0525返信1件
No Name
なんか…小さい男だな…
2024/04/26 05:5723返信1件
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