2024.02.17
アオハルなんて甘すぎる Vol.4…寒い…!
携帯を見ると8時少し前で、気温は2℃。11月半ばとしては例年通りの寒さらしいけれど、私は、手袋をしていない手をポケットに突っ込んだ。
日が昇り始めたばかりのまだ暗い街を、雄大さんと並んで歩く。アパルトマンからルーブル美術館が近いことはわかっていたけれど、他にも観光名所が沢山あることを知った。
パレ・ロワイヤルというかつての王宮の中庭を通り抜け、路地に出ると、小さなカフェに入った。白髪のマダムが「オー!ユウダイ」と熱烈な歓迎で雄大さんを抱きしめる。
ちゅ、ちゅ、と両頬にキスを受けた雄大さんは、4、5年前からこの店に通っていて、年に1~2回のパリ滞在期間中、何度も顔を出すのだという。マダムとご主人が夫婦で続けてきたこのカフェは、今年でちょうど30周年を迎えるのだと教えてくれた。
雄大さんに勧められて、クロックムッシュとカフェオレを頼んだ。雄大さんは、朝4時まで愛に付き合って飲んでたからさ、と笑って、具沢山の野菜スープとお水を注文した。
注文の後、お互いの近況報告らしいおしゃべりがマダムと雄大さんの間で続く。雄大さんは流暢な英語を話すけれど、マダムは英語が得意ではなさそうなのに、笑顔と勢いで会話が成立しているのが、ほほえましかった。
「友香ちゃんと会えなくて残念だったね。今彼女、NYだっけ?」
マダムとの会話を終えた雄大さんが言った。
そうなのだ。パリに住んでいる親友の友香は、今NYに出張中。宝と会えないのは残念だけど、今回は雄大さんたちのアテンドで思いっきり楽しんで!と言われている。雄大さんには、くれぐれも宝をよろしく、と連絡してくれたらしい。
「…なんか、いろいろ、気を使ってもらってすみません」
なんとなく申し訳なくなり、私が謝ると、雄大さんは、それ、よくないよ、と言った。
「何のための“すみません”?」
「いや、友香からのお願いとか、今も、私が皆さんの話をうっかり聞いてしまったせいで、朝から気を使ってもらって…」
「友香ちゃんのお願いは友香ちゃんの意志。それを受けるかどうかはオレの意志。この朝食は、オレが宝ちゃんを誘って、一緒にきてもらってる。宝ちゃんがすみません、って言うことじゃない。悪くないのに、なんとなくその場の雰囲気で謝るのって、やめた方がいいよ」
「…そんなつもりじゃなかったんですけど…すいません…」
「ほらまた。とりあえず謝るとか、自分が悪いって言った方が気楽だ、みたいな、自分から下手に出る癖、ない?」
― 癖…?私が、下手に出てる…?
「そのほうが楽だとか思ってるのかもしれないけど、相手に安くみられるよ。仕事でもプライべートでも。自分が変わりたいとか、自分の価値を上げたいなら、まずそれを、やめた方がいいとオレは思うけどね」
思わず、また、すいません、と言いそうになって、飲み込んだ。容赦がない言葉が、何かに刺さって、反論できずにうつむいた。
そのうちに雄大さんの、そんなに落ち込む…?という声が聞こえてきた。
「ただの1意見なんだから、違うなら違うと反論してほしいんだけど。むしろ反論もウエルカムだし」
「……反論って言われても…慣れてなくて」
「…言い過ぎた…かも、ごめん」
「…いえ…」
妙な空気になってしまったけれど、“オマチドウサマ!”と料理を運んできたマダムの日本語が(雄大さんに教わったらしい)その空気を打ち破ってくれた。“アタタカイウチ二ドウゾ!”とせかされ、私は、熱々のクロックムッシュを口にする。
トロッとしたチーズが濃厚で、パンも上品でとても甘く感じる。カフェオレもミルクがとてもまろやかだ。
2人共、しばらくの間、沈黙し。黙々と食べていたけれど、私のクロックムッシュが残り半分になったくらいで、「昨夜の話をしようか」雄大さんが、あっさりと言った。
「オレたちの話、どこまで聞いてた?」
さっきまでの気まずさはどこ?という、あっけない切り替えに、肩の力が抜ける。理性という名の暴力、と雄大さんを表現した愛さんの言葉を思い出しながら、私は答える。
「ほんの1言、2言、です。愛さんが、大輝さんの不倫にめちゃくちゃ怒って…それで愛さんが自分が不倫されて離婚したから…?って雄大さんに言って。それくらいです」
大輝とガチバトル、すごい事になってそうで🤣
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