2024.03.04
オトナの5分読書 Vol.18「解像度」を上げていく
抽象度を上げたら、次は解像度を上げます。
解像度を上げるというのは、「じゃあどうしたらその状態になるんだっけ?」を、より鮮明にイメージできる状態にすること。
例えば「不労収入で1億円を得るためには、持っている資産を5%の利回りで運用するとして、どれくらい資産が必要かな」と、具体的な数字を出していくとやりやすいです。
この場合「つまり20億円の金融資産が必要になるな」と気づきます。
じゃあ、20億円を10年後に得るには、会社を立ち上げて50%の株式シェアを持ち続けて、40億円以上の時価総額にするところまでがんばればいい、などとわかってきます。
一例をあげると、NTTがアメリカのシリコンバレーで最大100万ドル(約1億1,000万円)の年俸を提示して研究者を採用している、というニュースがありました。
Googleなどをはじめとする強いグローバル企業との採用競争に、負けないためです。つまり、英語ができて今求められている技術者だと年俸億円も夢ではありません。
また、本物は実際どういう感じか?というのを体験してみるのも有効です。
例えばベンツがほしいと思ったら、実際にお店に行ってシートに座って試乗します。パンフレットをもらって車のサイズを確認し、駐車場を家の近くで探して、駐車料金を調べて…などと行動していると、どんどんリアリティが上がっていきます。
この段階では、解像度を上げるための知識を増やすことが大切です。年収1億円の人はどういう人なのか、どこの国で何をやればいいのかなど、明確になればなるほど、自分がやるべきことがわかってきます。
この時点で「いやいや、絶対無理だよ」と思っても、あくまで制限がなかったとしたらを前提に、夢物語として考えるくらいのテンションにしておくとよいでしょう。
解像度が上がると、どんどん現実に近づいてきます。モヤモヤ想像しているだけだと、何も進みません。でも、解像度が上がると、途端に物事が動き出すということがよくあります。
先ほどのベンツの例のように、無料でできることはたくさんあります。自分の妄想をはっきりさせるというだけなので、単純に楽しい作業としてやってみるといいです。
実際にお店でベンツに乗ってみたら「もうちょっと小回りがきく車がいいな」となることもあります。それはそれでいいのです。
〈手軽に解像度を上げる作業の例〉
・ほしい物を見に行って触ってみる
・車を試乗しに行く
・服や時計を試着しに行く
・住みたい物件の内覧に行く
・憧れている人と同じトレーニングをしてみる
・理想の成功者と同じスケジュールで一日行動してみる
コンフォートゾーンの解像度を上げる
「なりたい状態」の解像度が上がってきたでしょうか。ここでコンフォートゾーンの話を知っておくとよいでしょう。
コンフォートゾーンとは、「心理的なストレスがないと思える状態」「自分が心地よいと思う基準にいる状態」という意味くらいに捉えておいてください。
「よし、高い志を持とう」と思って「世界一になるぞ」と目標を立てても、なかなかうまくできないのは、解像度の低さも問題ですが、自分のコンフォートゾーンの問題もあります。
人は、基本的に「いまの状態をキープしよう」とします。変なことをして危険にさらされるよりも、今の状態のままでいたほうが安全だからです。
このように、人間も含め動物は、潜在意識で変化を嫌う傾向にあります。
そこでこれを逆手に取って考えるのです。「僕は年収1,000万円が普通なんだ」と思うようになれば、年収800万になったとしたら「やばい、ぜんぜん足りてない」と感じるようになります。
このようにコンフォートゾーンをうまく上げ続けていれば、視座は自然と上がっていくはずです。
ちなみにコンフォートゾーンを上げる方法としては、実は「解像度を上げる」というのが、そのまま使えます。自分の中で、理想を現実だと勘違いしてしまうくらいに解像度を上げていくと、コンフォートゾーンが動きます。
イメージしやすくするために、僕のケースを話します。僕は19歳のときに早稲田大学に行きたいと思ったのですが、到底無理そうでした。どうしようか一生懸命考えた結果、「自分は早稲田大学生だと思い込む」ことにしたのです。
まず、いろいろな予備校の合格体験談を読みまくりました。
志望校に受かった人たちが、どういう勉強をして、どういう生活を送ってきたかをすごく読み込んで、自分でも合格体験記を何度も書いたのです。
まるで大学に受かったかのように詳細に「こういう勉強をして、こういう生活を送って、テストのときはこうしたら受かりました」的なものです。
さらに、前述した自分で大学受験生用のコミュニティーサイトを作って、そこで「早稲田大学生だけど質問ある?」みたいに質問を受け付けて、答えまくっていたのです。
さらに、大学まで行って、校内を我が物顔で歩いたりとかしていました。すると、脳は本当に自分が早稲田大学生だと思ってくるんです。
人間は、得られることよりも、失われることのほうに恐怖を感じます。だんだん早稲田大学生でいられなくなるかもしれない状況が気持ち悪くなってきて、勉強するようになりました。
というわけでコンフォートゾーンを上げるためには、理想を現実だと思い込んでしまうくらい解像度を上げるというのが大事です。
リスト化を完璧にしない
「なりたい状態」をなんとなくイメージできたでしょうか。
ここでちゃんとお伝えしたいのが「最初から完璧なリストを作ろうとしないこと」です。イメージとしては、これから100回作ることになるリストの1つ目にすぎない、くらいに考えておいたほうがよい。
ということで、ここで言いたかったことは、「頭の枷を外して、なりたい状態を制限なしに想像できるようにしよう!」ということです。
自分で勝手に制限をつけて、その中で動いてもまったくおもしろくないので、自分の頭の枷を外して、なりたい状態をありありと思い浮かべる状態になるのが、自分の人生という物語を作り上げる最初の一手なので、ぜひともリストづくりをやってみてください。
◆
今回は、「物語思考」の手順①~⑤のうち、①をお伝えしました。
頭の枷を外した後「②なりたいキャラクター像」を設定する以降は、ぜひ本書でご確認ください。
4. 本書のココがすごい!
今回紹介した、『物語思考「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』けんすう(古川健介)著(幻冬舎)のすごいところは下記に集約される。
① 『物語思考』を実践する方法を、を順序立ててすぐに実行できるように具体的に教えてくれている。
② やり方だけではなく、どうしてそれが重要なのかという理由も具体例とともに教えてくれるので、行動に移しやすい。
③ 著者の体験が身近で親しみやすいので、自分にもできそうという気になる。
【著者】 けんすう(古川健介)
1981年生まれ。浪人中に大学受験サービス「ミルクカフェ」を立ち上げる。早稲田大学政治経済学部在学中に、レンタル掲示板の「したらばJBBS」を運営。
リクルートに新卒入社後、起業してハウツーサイト「nanapi」を立ち上げるなど(2014年にKDDIに売却)、学生時代から多くのネット企業や事業を立ち上げてきた連続起業家。
現在はアル代表取締役として、マンガ情報共有サービス「アル」や、コラボ型きせかえNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)「sloth(すろーす)」、成長するNFT「marimo」などを手掛けている。
▶NEXT:3月18日 月曜更新予定
『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』田村耕太郎著を紹介します。
▶前回:痩せたいのに目の前のスイーツに負けちゃうのはなぜ?行動経済学を学べば、ダイエットもスムーズに
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