この一皿だけで30種!これでもかと国産の絶品野菜が出てくる名店

左上.千葉の駒形雅明さんの手による日本人の口に合う塩分控えめのチーズは、ジャージー牛の乳から作られる

左下.松原牧場の生乳アイス、黒豆茶の餡添え

右上.糸満のパッションフルーツの焼きグラタン

右下.プティフール。奥右から、宮崎産孟宗竹の竹炭マカロン、セロリのパート・ド・フリュイ、古代レンコンのチュイル、グラパラリーフのホワイトチョコ。手前がウコンと紅玉の寒天。鎌倉産生ウコンを甘く煮た。

10年以上前、一ツ星を獲得した『ミラヴィル』を開いた際には、農業に転じた某店の名サービスマンの作る野菜を応援してきた。小さな厨房で緊張感を保つ毎日。鋭敏な空気は時に客席まで流れ、それがまた店の色になった。

ロックが好きな、血気盛んかつ芸術家肌の都志見氏。常にトップギアで走ってきたことに悔いはないけれど、それを惰性で続けられるほどずるくはなれない。

ならば従来の延長線上に変化した我が身を置くよりも、完全に変質した環境と皿を作ろう。それが、わざわざ『ミラヴィル』を閉店し、『TSU・SHI・MI』をオープンさせた都志見氏の答えだったのではないか。

「竹堂園」に依頼し、自らも制作に携わったプレゼンテーションプレート。壁には料理本をディスプレイ

従来通りフレンチの技法を使うが、そればかりに縛られることはない。職人としての職務を全うするために、彼は土の香りのする料理をゲストに提供し続ける。

「店で使う食材を決める時は、まずは生産者に会いに行きます。その時点で最上の素材が畑や牧場になくとも、可能性と理論と信念があると感じれば、その人と付き合う。それが、僕のやり方」

顔と言葉を持つ食材は、ユニークだったり、一本気だったりする生産者から生まれ出ずる。その双方に出逢う喜びを知った都志見氏は、睡眠時間を削ってでも全国各地へ足を運ぶ。

そうやって集めた素材を、自分がその日最も良いと思う手法で調理した皿を自らが説明する際、彼はどこか落ち着きがないように見える。

「説明はいいから、早く食べてくれ」なのか、「オーブンの中のデザートの加減が気になって仕方ない」なのか、どちらにしても、最善を尽くした味を最高の状態でゲストに食べて欲しいと願う様にさえ、穏やかな空気が流れ出る。

キャリアを積んだ料理人が、健やかな自分を求めて紡ぐその音色に、身を委ね彼自身にシンクロすればきっと、我々もまた、健やかになれるはずだ。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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