恋人から「そういうとこだよ」と、指摘されたことはないだろうか。
そして、目の前から去られてしまったことはないか――。
恋愛において、別れの常套句として使われがちなこのセリフ。
でも「そういうとこ」って一体どういうところ?
「ハッキリ言ってくれないとわからない、頼むから説明してくれっ!」
主人公・林 優斗は、3回連続「そういうとこ」で振られた男。
これは、彼が自分の「そういうとこ」の答え合わせをしていく物語である。
Vol.1 「そういうとこって、どういうとこ!?」
…カチャカチャカチャ。
3月初旬の月曜日、20時30分。
週の始めにしては珍しく、同僚たちは早々に仕事を切り上げて帰っていった。広い編集部内には、自分が打つキーボードの音だけが響く。
「うん、これで今週配信分の原稿は大丈夫そうだ」
僕は、体をゆっくり起こす。
パソコンの前で何時間も前屈みになっていたせいで、全身が凝り固まっていた。両腕を伸ばしながら、椅子に体を預けてのけ反ると、背中や腰が気持ちいい。
“ダイエットカテゴリーの原稿チェック”
デスクトップの右下にある、この日最後のタスクが記された付箋。ピッとはがすと、達成感で満たされた。
グゴーーーッ!
次の瞬間、激しい音を立ててお腹が鳴る。
― いつものカレー専門店のラストオーダーって、確か21時だったよな?急げば間に合いそうだ。
心地よい疲労感が、カレーを強く欲している。皮つきのまま出てくる茹でたじゃがいもに、バターとほんのちょっとのカレールーをかけて、思いっきりかぶりつきたい。
だが、作業していたワードプレスをいそいそと閉じようとしたときだった。
「…えっ?この原稿って…」
たった今、投稿一覧にあがってきた原稿のタイトルに、僕は身震いする。
この記事へのコメント
とりあえず以前の辛気臭い昭和の家売る話よりは期待できそうな連載! 今のところは。
軽快でテンポがいいし、なんか主人公がいいヤツっぽい。次回が楽しみ!