2011.04.21
おいしい“ワイン”と おいしい“ごはん” Vol.5イタリアワイン偏愛
千駄ヶ谷の路地裏に、小さなイタリアあり
ある晩、『ヴィネリア ヒラノ』のカウンターでワインを飲んでいたときのこと。隣に座る若い男性がオーナーの平野博文氏に尋ねた。「なぜイタリアワインを選んだのですか」。答えて曰く、「イタリアワインでない理由がわからない!」ソムリエ界の重鎮・平野氏の「イタリア偏愛」ぶりを表わす名問答だ。
昨年7月、12年続いた『AZ』を移転する形で千駄ヶ谷に『ヴィネリア ヒラノ』をオープン。エントランスを壁で仕切り、パティオを連想させるウェイティングスペースを設けた。さあここから、優雅にして愉快なイタリアワインの旅の始まりである。
店内は1940年代の大型客船、1等客室をイメージ。大理石のカウンター、ヴェローナで買い付けた酒棚と調度は豪華だ。でも、何ら構えることはない。「お客様の好きなように」と話す言葉通り、グラスワイン1杯飲みに立ち寄るも、フルコースのディナーを楽しむも自由。全20州から250種のワインを揃え、グラスワインは常時60種も! 熟成がゆっくり進む力強い酸のあるものを選び、最高の状態で楽しませてくれる。料理は塩やオイル選びから、ハーブやナッツの使い方までワインとの相性が考え抜かれていて、味わえばまたワインが進むのだ。
その多様さに苦手意識を抱きがちなイタリアワインだが、知識などまったくなくても大丈夫。ただ「おいしいでしょ?」と笑顔が向けられるだけ。一方で何か知りたいという意思を示せば、造り手や醸造のことはもちろん、産地の郷土食や歴史、文化のエピソードまで話は止まらない。食後にデザートワインとドルチェを、なんて使い方もいいが、あまりの楽しさ、おいしさに、また一から乾杯なんてことになりかねないのでご注意を。
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