おいしい“ワイン”と おいしい“ごはん” Vol.5

イタリアワイン偏愛

千駄ヶ谷の路地裏に、小さなイタリアあり

ひとりで訪れたゲストと会話をしながら、テーブルに目を配り、ワインや料理をサービスする平野氏。その立ち振る舞いもスマート

ヴィネリアヒラノ

Vineria HIRANO

ある晩、『ヴィネリア ヒラノ』のカウンターでワインを飲んでいたときのこと。隣に座る若い男性がオーナーの平野博文氏に尋ねた。「なぜイタリアワインを選んだのですか」。答えて曰く、「イタリアワインでない理由がわからない!」ソムリエ界の重鎮・平野氏の「イタリア偏愛」ぶりを表わす名問答だ。

昨年7月、12年続いた『AZ』を移転する形で千駄ヶ谷に『ヴィネリア ヒラノ』をオープン。エントランスを壁で仕切り、パティオを連想させるウェイティングスペースを設けた。さあここから、優雅にして愉快なイタリアワインの旅の始まりである。

店内は1940年代の大型客船、1等客室をイメージ。大理石のカウンター、ヴェローナで買い付けた酒棚と調度は豪華だ。でも、何ら構えることはない。「お客様の好きなように」と話す言葉通り、グラスワイン1杯飲みに立ち寄るも、フルコースのディナーを楽しむも自由。全20州から250種のワインを揃え、グラスワインは常時60種も! 熟成がゆっくり進む力強い酸のあるものを選び、最高の状態で楽しませてくれる。料理は塩やオイル選びから、ハーブやナッツの使い方までワインとの相性が考え抜かれていて、味わえばまたワインが進むのだ。

その多様さに苦手意識を抱きがちなイタリアワインだが、知識などまったくなくても大丈夫。ただ「おいしいでしょ?」と笑顔が向けられるだけ。一方で何か知りたいという意思を示せば、造り手や醸造のことはもちろん、産地の郷土食や歴史、文化のエピソードまで話は止まらない。食後にデザートワインとドルチェを、なんて使い方もいいが、あまりの楽しさ、おいしさに、また一から乾杯なんてことになりかねないのでご注意を。

右.豚肉を使ったフェンネル風味のパテ¥1,680。ピスタチオがアクセントに 左.手打ちパスタ リングイネ ボローニャ風ミートソース¥1,680

右.ピッツァ用の小麦粉で作る自家製パンを使ったフォアグラ入りコロッケのパニーノ¥1,470。エミリアロマーニャのサンジョベーゼと好相性 左.デザートワインだけで10種以上が揃う。フォアグラのジェラートにシチリア州の甘口、パッシート ディ パンテレッリアを合わせて

右.店名はエントランスに控えめに。店内ではどこを向いてもセンスのある設えや装飾が見られるのが楽しい 左.店内の雰囲気はクラシカル

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