名品には数々の効力がある。
身に着けることで日々のモチベーションアップにつながったり、自分に自信をくれたり――。
まさに、大人たちのお守り的存在だ。
本連載では人々から愛され、流行に左右されることない一生モノの“ファッション名品”にフォーカス。
今回登場するのは、医師の石川菜緒さん。彼女が紹介してくれるアイテムとは?
写真/品田健人
▶前回:社会人1年目の終わりに買ったファースト・ティファニー。それから6年経った今、次に狙うのは…
1994年生まれ、鳥取県出身の29歳。鳥取大学医学部卒業後に上京。研修医を経て、現在は鼻や皮膚の診療を中心に美容外科医として働く。
特技は絵を描くこと。外科医としてオペ記録を電子カルテに残すことから、最近はデジタルイラストにも挑戦中。趣味は海外旅行をしながら現地の美容医療についてリサーチすること。
鳥取でおすすめの観光スポットは、鳥取砂丘とはわい温泉。
バーキンではなくピコタンを選んだ、意外なワケとは?
兄妹そろって医師の道に進んだ石川さん。東京に出てきたのは2020年、25歳の時だった。
「都内の病院に勤務することになったのがきっかけです。やっと東京に行ける!と思って期待に胸を膨らませていたのですが、コロナ禍真っただ中で……。憧れのキラキラした世界をまったく楽しめずに過ごしていました」
単身で上京し、東京での友達も少なかった当時。それを見かねた遠方に住む兄とその友人が、困った時に相談できる相手として紹介してくれたのが、現在の夫だという。
「『東京にひとり残した妹をよろしく!』という感じで(笑)。このバッグは、そんな夫から28歳の誕生日にプレゼントしてもらったものです」
「学会や女医会に行くと、素敵な先生方がよくバーキンを持っていらっしゃって。私も自然とエルメスに憧れを持つようになりました。ただバーキンはまだ自分には不相応かなと思い、ピコタンを彼にお願いしたんです」
石川さんいわく、「大きな学会に行くとバーキン祭りのようになっています(笑)」とのこと。
「でも私はまだそんなレベルには達していない人間なので、ちょっとかわいいピコタンがいいかなと思って」と彼女は謙遜する。
数あるハイブランドの中でも、エルメスの人気商品を正規店で購入するのは非常に難しく、時に運次第ともいわれる。
特にブランドの代名詞でもあるバーキンやケリー、そしてピコタンも入手困難なアイテムとされ、手に入れるためにはエルメスの店舗に何度も足を運ぶ必要がある、との噂もあるが……。実際はどうなのだろうか?
「夫に話すと『え、俺がエルパトしないといけないの…?』と半分嘆きながらも、彼自ら探してくれたようで『マジで無い。出してもらえない』と言っていました。でも…
きちんと私の誕生日に合わせて買ってくれて、彼のその想いが嬉しかったですね」と石川さん。
贈り物以上に、夫からの気持ちを素直に喜ぶ彼女の姿がそこにはあった。
医療ドラマ『アンナチュラル』の主人公・石原さとみさんに憧れた研修医時代
続いて彼女が紹介してくれるのは通称・T スマイル、ティファニーの「T スマイル ペンダント」だ。
もしかしたらこれを読んでいる人の中には、2018年にTBSテレビ系で放送された医療ドラマ『アンナチュラル』で、主人公役の石原さとみさんが着用していたことを覚えている読者もいるかもしれない。石川さんもその影響を受けたひとりだった。
「当時、石原さとみさんが白衣にT スマイルを着けている姿を見て、素敵だなと思っていて。でも私はまだ研修医で、東京で生活していくだけで精いっぱいで……もちろん高価なものなんて全然買えず。
一方で同じ医師として、いつか劇中の主人公のように、T スマイルが似合う格好いい女性になりたいなと思っていたんです。購入したのは、結婚したタイミング、そして大好きだった美容の世界に入って半年経ったタイミングでもあったので、ちょっと気合を入れたかった」
新婚旅行の思い出も形に残すことができて嬉しい、と笑顔で語る石川さん。こちらもてっきり新婚旅行でご主人にプレゼントしてもらったのかと思いきや。
「それが、あまりプレゼントしてくれるタイプの夫ではなくて。空港で悩んでいた時にも、『せっかくだから買いなよ~!』と、逆に背中を押されました(笑)」
お気に入りのポイントは、「一面のダイヤで品がありながらもギラギラしすぎない。くせのないデザインなので、白衣の時だけでなく、オンオフ共に使いやすくとても便利です」。
着用シーンは、手術がないカウンセリングの日や、夫とのデート、そして同業仲間とお出かけするときなど幅広いという。
名品と美容医療には、同じくらいの価値がある
彼女が身を置く女性医師界隈では、一体どのような会話が繰り広げられているのだろうか。
「女性医師仲間と遊ぶことを、女子会じゃなくて、“女医会”なんて呼んだりしています。大手美容クリニック勤務の知人が多いこともあり、おすすめの美容医療や手術の話、ボトックスやヒアルロン酸はどんなの打っている?なんて、本当にず~っと美容トークをしていますね」
湘南美容クリニックや品川美容外科、TCB東京中央美容外科などの大手に在籍する友人をはじめ、様々な学会、コミュニティーでつながる女性医師仲間とご飯会――。きらびやかで華やかな環境で生活をする彼女だが、地元・鳥取ではハイブランドとは無縁の人生を歩んでいたのだとか。
「ずっと国公立に通っていたというのもあるかもしれませんが、ブランドアイテムを持ち歩くような習慣もなくて。むしろ、濡れてもぶつけてもへこたれない丈夫なリュックを背負っている学生時代でした(笑)」
しかし東京に出てきて、地元とは違う実情にびっくりしたという。
「東京は、大学生とかでもみんなブランドアイテムを身に着けて、ピンと背筋を伸ばして街を歩いている。その光景を見て、純粋に格好いいなと思いましたね」
小さい頃から美容が大好きだった少女は、今では大都会・東京で美容外科医として奮闘する立派な女性へと成長していた。
そして、美容と名品には同じ価値があると、彼女は分析する。
「例えば顔にニキビがあるとうつむいて歩いちゃうけれど、肌が綺麗になるだけで『みんな見て!』って堂々と歩けるようになりますよね。ふとした瞬間にガラスに映る自分の肌や髪型がいい感じだとつい嬉しくなる。
そうやって美容で気持ちが明るくなるのと一緒で、素敵な物を持つと気分が高揚するんです。つまり、“美容医療”と“上質なものを持つこと”には同じ効果があるのかな、なんて思っています」
◆
取材中、自分自身が名品を持って輝けるように、今度は医師として誰かを救う存在になりたいと強く語ってくれた。
「美容医療をとおして、多くの方の日々の小さな幸せを作れるってとても素敵なことなんです」。
真っすぐこちらを見つめながらそうほほ笑む彼女は、凛とした美しさを放っていた。
▶Next:1月31日 水曜更新予定
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