東京ご近所探訪 Vol.34

「戸越銀座」の魅力は商店街の食べ歩きだけじゃない!穴場の人気店でディナーも楽める

東京はエリアが変われば、街の色が変わる。それぞれの街が特徴的なのは、住人の個性によって変化するからだ。

東カレが、街に住まう人々やレストランを徹底取材して、その個性をご紹介。

今回は、関東で最も長い商店街がある街としても知られる「戸越銀座」に注目してみた!


東京の街の個性を徹底調査する連載「東京ご近所探訪」。過去にご紹介した街も、要チェック!



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今月のエリア【戸越銀座】


今回取り上げるのは、関東で最も長い「戸越銀座商店街」がある街としても知られる戸越銀座。

品川区の西寄りのエリアを東西に貫く全長約1.3kmの商店街を中心に、気さくな下町情緒が漂う街として愛されてきた。

戸越銀座という地名はなく、住所では、品川区戸越1丁目〜4丁目、豊町2丁目、西品川1丁目、2丁目と3丁目の一部、平塚1丁目〜3丁目。

電車の駅を基準にみると、エリアが東西に広い上、路線が入り組んでいるためやや複雑で、東急池上線の戸越銀座駅と荏原中延駅、都営浅草線の戸越駅、東急大井町線の戸越公園駅、下神明駅、そしてJRの大崎駅までが徒歩圏内と、都内屈指の駅の密集地帯となっている。

日常を支える商店街は、“食べ歩き”でも人気

第二京浜周辺を東西に長く広がる戸越銀座。複数の路線が走っているため場所によって最寄り駅が変わってくる。地元住民がメインで利用しているのは、都営浅草線戸越駅と東急池上線戸越銀座駅


充実した商店街があって交通の便もいい戸越銀座はとても暮らしやすいエリアだ。

品川や羽田、成田へのアクセスもいいので、出張が多いビジネスマンにも人気がある。

戸越銀座商店街は、マンションが並ぶ第二京浜をまたいで東西に延びる。「戸越銀座」の交差点近くには都営浅草線戸越駅がある


エリアの軸となっている商店街には約350軒のお店があり、ドラッグストアなど見慣れたチェーン店もあるものの、飲食店を中心に特色ある個人経営の店も多い。

自転車で買い物に来ていた近隣エリアの住民に尋ねると「お気に入りのお肉屋さんやお総菜屋さんがあるので、よく買い物に来ています。この近辺の人たちは、戸越銀座、武蔵小山、西小山の商店街を上手に使いわけているんですよ」と話してくれた。

関東大震災の後、銀座から耐火れんがやがれきを運び、水はけの悪い商店街に敷いたことから「戸越銀座」の名に


「戸越銀座商店街連合会」で広報を担当する『ギャラリーカメイ』の亀井哲郎さんによれば、関東大震災で被災した東京の下町や横浜、川崎の商店主たちが集まってきたのが『戸越銀座商店街』の始まりだそう。

「当時の大崎周辺は明電舎や日本精工など大手企業が集まる工業地帯として栄えていたんです。周辺には職工の人たちが多く住んでいたし、下請けの町工場もたくさんありました。

そんな背景もあって商店街が生まれ、昭和2年の東急池上線の開通を機に一気に開発が進んだんです」

戸越銀座駅の駅前にある『京都鳳焼売』の店主・大谷豊孝さんは、「戸越はとても人情味のある街です。地元のコミュニティーがしっかりできていて、お互いに連絡を取り合ったり、情報交換をしたり。新しいお店ができればすぐに評判が広まります。5年前、京都から来た私たちにも気さくに声をかけてくださって、“美味しいって聞いたから”と寄ってくださる方も多かったんですよ」。

駅から近いこともあって、取材中にも何人もの常連さんが通りかかり「なんの取材?」と大谷さんに声をかけていった。大谷さんも、少し照れながら笑顔で応える。

そんな風景が戸越銀座の日常なのだ。

『京都鳳焼売』


油や香辛料を控え、あっさり仕上げた京都流の「鳳焼売(白)」。

岩手県産「岩中豚」と九条ねぎ、淡路島の玉ねぎを毎日手ごね。


食べ歩き用は2個で210円。



商店街の顔は、平日と休日でガラリと変わる。

平日は近隣住民の日常の買い物で賑わい、週末になると商店街の活気を求めて大勢の観光客がやってくる。

商店街は電線類が地中化されているので、景観がスッキリとしていて、歩きやすい


精肉店や総菜店のコロッケ、カレーパン、タコス、スイーツ、おにぎりなど、さまざまな食べ歩きを楽しめる商店街として認知されている。

昔からの住民が中心となったコミュニティーは一体感がありながら、転入してきた人や週末に遊びに来る人たちにもフレンドリーだ。

東京でも随一の賑やかな商店街。そこから、路地に一歩入れば、静かな住宅街。そんな二面性が、戸越銀座の魅力になっている。

対面コミュニケーションが商店街の価値となる

東急池上線戸越銀座駅の木造駅舎は、商店街のランドマーク的存在


戸越銀座エリアの住まいの現状について、商店街に店舗を構える不動産店『三都市アース 戸越銀座店』の藤田昇平さんにお話を伺った。

「第二京浜や中原街道に面したところには15階前後のマンションも立っていますが、全体的には戸建てや2、3階建ての集合住宅が多いですね。築年数でみると、10〜20年がボリュームゾーンです。

地元愛の強い方も多く、最近では長く住み続けるために2世帯住宅や賃貸併用住宅に建て替えるケースも増えていて、デベロッパーが開発するというよりハウスメーカーが強い印象。

ファミリー物件の需要は大きいのですが、数が少ないため、希望に叶った住まいを探す難易度は高いエリアでもあります」

東急大井町線戸越公園駅前には、「戸越公園中央商店街(通称:とごし公園通り商店街)が南北に延びる。戸越銀座商店街ほどの混雑はなく、のどかで落ち着いた風情が漂っている


戸越公園駅の駅前に完成した地上23階建てのタワーマンションは、2億円を超える物件も含めあっという間に完売。広めのファミリー物件へのニーズの高さがうかがえる。

戸越銀座エリアは、交通の便も、治安も良く、充実した商店街に加えてスーパーも複数あって快適に暮らせる庶民的な街だ。

そのため、子育て世代、単身者も多いが、昔から住んでいる高齢者も多い。

「小さなお子さん連れから、学校帰りの高校生、ご高齢の方まで、毎日のように通ってくださる地元の常連さんは多いですね。商店街の中にアパホテルができた影響もあるのか、最近は外国人のお客様も増えています。戸越銀座には特別有名な観光名所はありませんが、“日本らしい暮らし”が垣間見られて面白いのかもしれません」と話してくれたのは、おにぎり専門店『戸越屋 戸越銀座本店』の木本英二店長。

ご自身も数年前に戸越銀座に越してきたそうで、暮らしやすさを実感しているという。

「気取らない下町的な感覚があって、本当に住み心地がいいですね。個人経営の店舗が多いので、お店が閉まるのは比較的早いんです。

物販のお店は18時ごろには閉店してしまうところが多いですし、飲食店も22時を過ぎるとほとんど電気が消える。遅くまで騒がしくない、というのも、暮らしやすいポイントだと思います」

『戸越屋 戸越銀座本店』


商店街の中ほどにあるおにぎり専門店。

炊き立ての「つや姫」をふわっと握ったおにぎりは、45種類の具が選べる。


から揚げ2個とみそ汁、煮卵、漬物がついた「おにぎり2つセット」(1,250円~)が人気。

写真は人気の「卵黄+肉そぼろ」と定番の「しゃけ」。



商店街の東端に近い立地にある精肉店『MEAT&DELI 355』の原田昌紀代表は言う。

「スーパーでパックを手に取るのとは違って、うちではショーケースを挟んで対話をしながらお肉を購入していただきます。

手間も時間もかかりますが、お客様と話すからこそ、メニューやお好みに合ったお肉をオススメすることができるし、“前回のお肉、すごく美味しかった。今日はどれがオススメ?”とリピートしていただけるようになるんです」

より多くの人に魅力を感じてもらえるよう総菜にも力を入れている他、店頭には厳選した調味料や四国の野菜も並べている。酒類販売の免許を取得して角打ちも始めた。

撮影時、店先のテーブルでお子さんとコロッケを食べていた女性に声をかけると、「戸越銀座で一番好きなお店。メンチカツもコロッケもかつ丼もすごく美味しいので、子どもの習い事の帰りによく寄っています」と話してくれた。

『MEAT&DELI 355』


百反通りから2019年に戸越銀座商店街に移転。

A5ランクの銘柄和牛をはじめとする厳選した精肉、総菜、ワインなどを販売。


店頭のテーブルでの角打ちも人気。

生ハムやチーズなどの「つまみ盛り」1,530円、ワインはグラス 990円~。



一軒一軒のお店が元気であることが商店街全体の活力になり、魅力になっていく。

対面販売のコミュニケーションが商店街の楽しさであり、商店街が生き残っていく道でもあるのだろう。

戸越銀座エリアに隣接する「戸越公園」は、肥後細川家の下屋敷庭園跡を整備した品川区立の公園で、近隣住民の憩いの場となっている


今回、取材に応じていただいた皆さんは、口をそろえて「戸越銀座は商店街あっての街。人が優しくて、人情がある」と話してくれた。

関東大震災で店も住まいも失った商人たちが集まり、力を合わせて暮らしてきた歴史があるからだろうか。

「戸越銀座商店街」には、いまも人と人とのつながりが色濃く残る。常連さんと笑顔で談笑していたり、隣り合うお店の人同士が声をかけ合っていたり。

ネット時代にも、わざわざ足を運びたくなる古き良き、日本の日常の風景がここにはある。

地元の不動産店に聞いた!街の基本スペック


・賃貸相場:(1LDK 40平米目安)
 15万円~17万円

・販売相場:
 中古マンション 60平米 5,000万~7,000万円
        ※賃貸・売買ともに築10年~20年前後の物件が多い

・駅周りの人口:
 約31,000人

◆協力してくれたのは◆
店名:三都市アース 戸越銀座店
住所:品川区戸越1-15-13
TEL:03-3784-3100

戸越銀座で安定の人気店


比較的カジュアルなお店が多く、地元の人たちで賑わう戸越銀座。

そんな街に潜む、本格鮨店と人気の鉄板焼きの店をご紹介。

静かな住宅街の一角で名店のイズムを伝え続ける
『戸越銀座 鮨 ばんど』

住宅街の路地にのれんが揺れる


戸越銀座駅から徒歩約10分、東急目黒線の不動前駅との間の住宅街にある『戸越銀座 鮨 ばんど』

「目の前でお客様の笑顔が見られるのが嬉しい」と伊山さん


四谷の名店『すし匠』の流れを汲む『匠 達広』と『新宿御苑 鮨 ばんど』で腕を磨いた店主の伊山徳宗さんが、江戸前の丁寧な仕事と、つまみと握りを交互に出すスタイルを受け継ぎ、客を迎える。

「静かな住宅街ですので、肩肘張らずに季節の味をゆっくり味わっていただきたい」と伊山さん。

白木が美しいカウンター席は落ち着いた大人の空間だが、個室は家族連れもOK


夜は、焼物や蒸し物など10~12品のつまみと一品料理、10~12貫の握りに旬の味覚をちりばめる「おまかせコース」(24,200円)のみ。


熟成させた「まぐろ」は旨みが際立つ。

硬めに炊きあげ、キリッと赤酢をきかせたシャリとのコントラストも見事。

「春子鯛」は、黄身酢おぼろと柚子をまとわせて


これからの季節は白子やクエ、寒鯖、小肌など、冬の逸品を贅沢に味わいつくしたい。

華やかな見た目に驚く!


「ちらし寿司」(4,400円)はランチのテイクアウト限定。

■店舗概要
店名:戸越銀座 鮨 ばんど
住所:品川区西五反田6-22-11 1F
TEL:03-6431-8485
営業時間:ランチ 11:30~14:00
     ディナー 18:00~(L.O.22:00)
定休日:不定休
席数:カウンター8席、個室1(8席)

戸越銀座 鮨 ばんど(戸越銀座) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

戸越銀座随一の人気店で鉄板焼きをカジュアルに楽しむ
『Nami』


戸越銀座商店街の西端で15年にわたり愛されてきた『Nami』。鉄板焼きとフレンチを融合させた独自のスタイルで人気だ。

東京の下町、葛飾出身の金井さんは、庶民的な雰囲気が気に入って戸越に店を構えた。サービス担当の中村葉子さんとの息もピッタリ


そこにはお好み焼き店を経て八丁堀の人気ワインビストロ『ガール・ド・リヨン』で研さんを積んだオーナーシェフ、金井敏幸さんの「目の前で料理が作られるライブ感を楽しみながら、おなかいっぱい食べて、豪快に飲んで欲しい」という願いが込められている。

「USリブロース(200g)」6,380円。鉄板焼きの醍醐味を味わえる赤身のステーキは日替わりで産地や部位が変わる


ステーキや海鮮の鉄板焼き、とん平焼きなどの鉄板焼きメニューを中心に、八丁みそと黒糖でこっくり仕上げたスペシャリテの「洋風もつ煮込」をはじめとするビストロメニューが彩りを添える。


「洋風もつ煮込」(968円)は不動の人気メニュー。半熟たまごも美味。ガーリックトースト2枚つき。

魚介類は大田市場で仕入れている。「つぶ貝・海老・帆立のガーリックバターソテー」1,760円


ファミリーからご高齢の方まで地元の常連客で連日賑わう人気店で、戸越らしい気さくで楽しいひとときを過ごして。

■店舗概要
店名:Nami
住所:品川区平塚2-13-7 メゾンシノダ 2F
TEL:03-3786-7761
営業時間:【火~金】17:00~(L.O.23:00)
     【土・日・祝】13:00~(L.O.23:00)
定休日:月曜
席数:カウンター4席、テーブル24席

Nami(戸越銀座) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

担当編集・船山が街の酒場の様子を現地リポート!
~時間を忘れる商店街で温かさに触れる~


改めて歩いてみると、それだけでもはや運動。数回、街を訪れたが、驚いたのは人の多さ。

冒頭の写真がまさにそれなのだが、帰宅ラッシュは竹下通りかと見紛うほど。

驚くほど細い路地。30mほど行くと3軒のお店が立ち並ぶ


にしても、楽しい。商店街を歩き、おにぎりを食べ、古着店で掘り出し物を探し……気付けば数時間なんてザラ。

その夜向かったのは、戸越銀座駅の脇にある極細路地を入った場所にある『スペランツァ』さん。

2010年オープンの『スペランツァ』さん


ミートソース専門店なのだが、夜はワインに合うおつまみも豊富で、地元の人がワイワイと楽しそう。

使用する牛・豚の部位にこだわった「スペランツァ特製ミートソース」890円


お目当てのミートソースは、優しい味わいで、母の味を思い出す。

自家製のフェットチーネも美味しく、街の空気よろしく、気持ちも温かくなったとさ。


かつて戸越銀座の友達と空きテナントのような店で焼き鳥を食べた記憶が……。あれは、店だったんだろうか……。


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