2024.04.08
東京ご近所探訪 Vol.36タワマンがズラリと立ち並ぶ人気タウン、武蔵小杉。
「住みたい街ランキング」常連のこの街が支持される理由を、住環境の住みやすさやグルメ・ランチ事情などを紹介しながら紐解いていく!
東京の街の個性を徹底調査する連載「東京ご近所探訪」。過去にご紹介した街も、要チェック!
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今月のエリア【武蔵小杉】
今回取り上げるのは、渋谷と横浜のほぼ中間に位置する武蔵小杉エリア。
この10年で駅周辺にタワーマンションが次々に完成して大きく変貌を遂げたこともあり、「住みたい街ランキング」上位の常連となっている街だ。
住所としての武蔵小杉という地名はなく、小杉町、小杉御殿町、小杉陣屋町、新丸子町、新丸子東、丸子通、上丸子、中丸子、今井仲町など川崎市中原区の複数の町がこのエリアを形成している。
抜群のアクセスの良さと住環境で人気タウンに
武蔵小杉の人気の理由のひとつは、首都圏屈指の交通の便の良さ。
もともと東急東横線で渋谷までも横浜までも約15分、東京メトロ副都心線との直通運転で池袋までも1本、東急目黒線に乗れば、東京メトロ南北線と都営三田線を通じて永田町や大手町までも1本という便利な地だった。
そして、JR南武線に加え、2010年に横須賀線と湘南新宿ラインの西大井〜新川崎間の新駅として武蔵小杉駅が開業し、品川や東京、新宿にも乗り換えなし、20分未満でアクセスできるようになった。
さらに昨年3月、東急線と相鉄線の直通運転がスタートしたことで、新横浜へも乗り換えなし、約10分で行くことが可能に。
都内に通勤する人にも出張が多い人にも、これほど住みやすいエリアは他にない。
タワマンから戸建てまで武蔵小杉の物件を幅広く扱っている石川商事 武蔵小杉店の倉島 豊店長にお話を伺った。
「かつて京浜工業地帯の一画だった武蔵小杉には、電気通信機器や工作機械の工場が集まり、工場で働く人たちが暮らしていました。
工場が相次いで海外移転や閉鎖となったのを機に、跡地の再開発がスタートしたのが15年前。次々にタワーマンションが建設され、現在のような他にない街並みになったのです」
現在ではJR南武線の南側と北西に15棟のタワマンが建っているが、駅北東から新丸子駅にかけての新丸子町や西にやや離れた今井西町には昔ながらの住宅地がそのまま残る。
戸建ての住宅や単身者向けの賃貸物件も多い。
「タワマンは、60平米から75平米の2LDKや3LDKが主流。タワマンが増えるに連れ、この10年で若いファミリー層が一気に増えました。購入を希望される方も多いですが、賃貸物件としても人気です」と倉島さん。
5年前に竣工したタワマンの1階に店舗を構える『ラトリエヒロワキサカ』のオーナーパティシエ、脇坂紘行さんは「店をオープンして武蔵小杉に引っ越してきたのですが、本当に暮らしやすい街だと実感しています。駅周辺にはスーパーやショッピングモールがいくつもあって、北口から徒歩5分ほどしか離れていない新丸子まで行けば昔ながらの商店街もある。タワマンのイメージが強くなっていますが、少し離れれば静かな住宅街ですし、多摩川までも歩けます。お客様は、好奇心が旺盛で新しいものを受け容れてくださる方が多いですね。ハーブなど少し変わった素材を使ったケーキにも興味を持ってもらえるのは嬉しいです」と語る。
『ラトリエヒロワキサカ』
自由が丘の名店『モンサンクレール』出身の脇坂紘行さんが繰り出すのは、味と食感、香りを大切にしたスイーツ。
ショートケーキなど定番のほか、フランボワーズ×紅茶×ショコラの多層的な香りが印象的な「センチュール」(648円)、「フィナンシェナチュール」(310円)も人気。
◆
改めて武蔵小杉の街を歩いてみると、子連れの家族が本当に多い。
工業の街から、安心して子育てができる街に生まれ変わったことを実感する。
進化を続ける街の明るい未来像とは
タワーマンション群ができて街の様相が一変した武蔵小杉だが、もともと文教地区として実績のあるエリアでもあった。
築60年の住居をリノベした『64Cafe+Ranai』のオーナー、安藤重美さんによれば、南武線の武蔵小杉と武蔵中原の中ほどにある「川崎市立今井小学校」は、近隣の大手企業の社宅から通う子どもが多く、帰国子女も珍しくなかったそう。
「昔から教育熱心な親御さんが多い『今井小学校』は、授業にも力を入れている印象があります。多数のタワマンが建設されたことで人口が増え、子どもの数も増えたので、2019年には駅の北側に新しく『市立小杉小学校』が開校しましたが、こちらも教育面の評判はいいです」と安藤さん。
設備も新しい小杉小学校への入学を希望して、通学区域のタワマンに転居してくるファミリーもいるという。
また、Jリーグ「川崎フロンターレ」やBリーグ「川崎ブレイブサンダース」の本拠地も近く、プロスポーツが身近なのもファミリー層には人気なのだとか。
そういった複合的な要因もあり、武蔵小杉エリアの人口は、この15年で1.25倍ほどに増加している。
1970年代から長らく20万人前後で推移していた中原区の人口は2005年に21万人を超え、2019年からは26万人台をキープ。増加分の多くはタワマンによるものだ。
15棟ものタワマンが建ち並び、「グランツリー武蔵小杉」をはじめいくつものショッピングモールができて便利になった部分はたしかにある。
地元で生まれ育った『64Cafe+Ranai』の松井典子店長も「昔はお店もほとんどなくて、ショッピングとなったら溝の口か渋谷に出ていたけど、いまは武蔵小杉でなんでもそろうようになりました」と話してくれた。
『64Cafe+Ranai』
1964年に建てられた住宅をリノベーションした、昭和レトロな雰囲気が漂うカフェ。
ランチのタコライスや自家製スイーツが人気。
季節のフルーツをトッピングした「気まぐれタルト」650円、コーヒー 600円。テラス席はペットも可。
◆
一方で、豆腐店や金物店、そば店や鮨店など個人店はどんどん減って、大手チェーンの店ばかりが目立つようになってきている。
武蔵小杉エリアの出身で、『和食と立喰い寿司 NATURA』『イタリアン酒場 NATURA』など地元で7店の飲食店を経営するナチュラグループの河合倫伸代表は、「武蔵小杉は成長期から成熟期に入っていく。いまは、未来を左右する大事な時期」だと考えている。
チェーン店ばかりになってしまうのか、逆に武蔵小杉発のブランドを広げていくことができるのか。その分岐点に立っているのだ。
「20年前の武蔵小杉にはお洒落なレストランもなく、自分たちが行きたいと思える店がなかったんです。“それなら自分で作ろう”と思って店をはじめました。
その後、カフェや和食と立喰い鮨の店を作ったのは、自分の年齢とともに変わっていく嗜好とニーズに合わせた結果。いまは“武蔵小杉をどんな街にしていきたいか”を考えています」と河合さん。
昨年3月、ナチュラグループは、新業態『卸問屋直売所 コスギ グリルマーケット』を駅から徒歩7分ほどの府中街道沿いにオープンさせた。これまで駅近の立地に出店してきたことを考えると、異例の展開だ。
「地元出身の若い人たちが何かやりたいと思っても、現状では諦めるしかない。そうならないために、商圏を広げたい」と河合さんは言う。
人口が増えたことでビジネスチャンスは広がった。しかし、開発が進んだ駅前に個人が打って出るのは難しい。
あえて駅から離れた場所に出店することで新しい人の流れをつくり、魅力的な個人店が生まれる余白をつくろうと考えたのだ。
『和食と立喰い寿司 NATURA』
和食ダイニングと立喰い鮨が一体になった「大人が楽しめる和食レストラン」。
立喰いのカウンターでは、飲み会前の0次会に、飲んだあとの〆に、気軽に鮨をつまみたい。
人気ナンバーワンメニューは「おまかせ5貫」(取材時はサーモン、真鯛、生ニシン、クロソイ、ネギトロ)550円。
まろやかな赤酢のシャリが魚の旨みを引き立てる。
◆
「武蔵小杉らしい店がたくさんできて、電車に乗ってわざわざ来てもらえるような街になっていったらいいなと思っています」
河合さんは力強い眼差しで武蔵小杉の未来を見据えていた。
武蔵小杉で安定の人気店がこちら!
個人店が少ない武蔵小杉で押さえておきたい、人気のイタリアンと大人のための居酒屋の新店をご紹介。
静かな裏通りのビルの2階に入る、隠れ家感満載のイタリアンレストラン『IL RISTORANTE MATSUOMI』。
メニューはオーナーシェフの曽根健一郎さんがその日に仕入れた食材を吟味しながら内容を決めていく「おまかせコース」(ランチ 4,200円~、ディナー 7,700円~)のみ。
「食材を目の前にすると、次々にアイデアが浮かぶ」という曽根さんは、野菜の使い方が絶妙だ。
藤沢の農家から直接仕入れている有機栽培や無農薬の野菜の力強い味わいや食感、風味を瞬時に理解し、肉や魚と合わせていく。
曽根さんはソムリエでもあるため、ゲストが選んだワインに寄せてピタリと味を決める。
「サワラのロースト、野菜のグリル添え」。
栗かぼちゃとパプリカのソース、バジルオイルがアクセントに。
「プロシュート、いちごとフルーツトマトのマリネを添えて」。
「寒鰤とりんご、リコッタチーズのムースのタルト、サラダ仕立て」。
ランチもディナーも2組限定。ゆったりとした半個室で、ゲストを1組ずつもてなす。
きめ細やかで心地良いサービスは、記念日や日常のご褒美に通いたくなる一軒だ。
■店舗概要
店名:IL RISTORANTE MATSUOMI
住所:川崎市中原区小杉町3-1501-7 セントア武蔵小杉 206-B
TEL:044-711-6015
営業時間:【火・金】18:00~22:00
【水・木・土・日】ランチ 12:00~14:00
ディナー 18:00~22:00
定休日:月曜、不定休
席数:半個室2(6席、4席)
駅周辺の再開発が一気に進む中、東急線南口周辺の一角だけはまるで昭和にタイムスリップしたかのように古い街並みが残っている。
2022年1月にオープンした『Norah』は、「大人がゆるりと飲める店として、誰でもふらりと野良猫のように立ち寄ってほしくて“野良”という店名にしました」とオーナーの林 琢夫さん。
全国各地のクラフトビール12種類とナチュラルワイン15種類をそろえながら、サワーやハイボール、ホッピーなど「ザ・居酒屋」なドリンクメニューも用意する。
フードも、おでんや串ものといった大衆酒場の定番メニューに、「青パパイヤサラダ」や「パクチーオムレツ」などエスニックの要素をプラス。
フードは、大衆酒場の人気メニュー+エスニック。
とろろ昆布たっぷりの「おでん 大根」290円。
ボリューム満点の「ハムカツ」550円。
青唐辛子が利いたアジアンスタイルの「春雨サラダ」480円。
手軽なエスニックおつまみ「海老トースト」660円。
人気の〆メニュー「パッタイ」730円。
インスタグラムの投稿でクラフトビールの情報をチェックしたクラフトビールファンのほか、フラッと立ち寄る女性のひとり客も多いそう。
どこか懐かしくて新しい「ストリート酒場」を、気軽に楽しんで。
■店舗概要
店名:Norah
住所:川崎市中原区小杉町3-432-7
TEL:044-299-93661
営業時間:【月~金】15:00~(L.O.23:00)
【土・日・祝】12:00~(L.O.23:00)
定休日:無休
席数:1階カウンター15席、2階カウンター10席、テーブル8席
「グランツリー武蔵小杉」に驚愕。主要セレクトショップにZARA。東京で話題のレストランが出店し、エノテカなどのワインショップもある。
平日の夕方ということもあり、ものすごい数の子連れママがいた。
紋切り型のショッピングセンターでなく、質の高い生活を前提とした作りに驚き、そして住んだらどれほど快適かと想像した。
一方、駅前を歩けば大衆的なお店も多数。そこで目に入ったのが大衆酒場の『割烹 こすぎ』。
中目黒の『大樽』グループで、ナカメと同様に安ウマで最高。
『割烹 こすぎ』名物の「ナポリタン」(580円)はのりがいいアクセントに。
地元のおじちゃんたちが外国人の店員さんとワイワイしているのを見て、どんな人にも楽しい街なのだと実感した。
武蔵小杉に来る用事のほとんどがホームパーティ。幸せ家族の笑顔を思い出す。今回、引越し先のトップ争いに。
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