30.5歳~女たちの分岐点~ Vol.9

医師・大学院生・母、3足のわらじを履く32歳女性。「子どもが欲しい」から導き出したキャリア形成論

「30.5歳」。女性がキャリアについて決断を下す平均年齢といわれている。

今まで積み上げてきたキャリアをそのまま突き詰めていくのか、自分の夢などを追いかけてまったく違うキャリアに挑戦するのか――。

それは、人生の大きな岐路を迎えるタイミングといえるのかもしれない。

本連載では、今、活躍中の女性に自身が「30.5歳」の時に何をしていたかをインタビュー。その時の“決断”をした理由や、そこから人生がどう変わったかを語ってもらう。

今回は、医師の黒田知沙さんが登場。現在は都内で整形外科医として働きながら、博士号を取るために大学院に通っている。

仕事とプライベートの両立を、まさに「30.5歳」のタイミングで実現させた彼女が思い描いている生き方とは。


取材・文/蒔田稔


▶前回:「社員も投資家も家族も不安にさせない」元GS・谷内侑希子の“強みを生かした”異業種転職キャリア論

今回、お話を聞いたのは黒田知沙さん


1991年生まれ、大阪府出身の32歳。

2015年、大阪市立大学(現「大阪公立大学」)医学部医学科を卒業後、上京して研修医として働く。研修医終了後は、整形外科医として病院で勤務し、30歳で整形外科専門医を取得。同時期に大学院博士課程に入学し、現在は大学院2年目。

プライベートでは1児の母。

学生時代にはテレビ番組のMCやローカルアイドル「KRD8」のリーダーとしてメジャーデビューするなど、異色の経歴を持つ。

●INDEX

1.「子どもを産みたい」願望を叶えるためのキャリアプランとは?

2.「女医の3分の1は結婚をしない」なかで考えた人生設計

3.キャリアも子どももあきらめたくない!そんなアナタに伝えたいこと

「子どもを産みたい」願望を叶えるためのキャリアプランとは?


―― 現在大学院に通われているとのことでしたが、出産や子育てのタイミングから逆算して、大学院に進むことを決めたのでしょうか?


そうですね。本当は「子どもは、授かるタイミングで」と言いたいところですが…。

医師の世界では、専門医取得までは研修で忙しく、取得後は今度は医療機関の現場に入ることで忙しくなる。特に女性医師の場合、妊娠・出産のタイミングが非常に難しいと思います。

私は子どもが欲しかったので、まずは妊娠・出産のタイミングに軸を置き、ある程度逆算しながら人生の計画を立てました。

いずれ大学院に通って博士号を取得したいなと思っていたこともあり、専門医を取った後なら、出産・子育てと大学院が両立しやすいだろうな、と考えて。

そして大学院1年目で第1子を出産。現在子育てに奮闘中です。


―― 大学院進学の少し前を遡ると、2022年2月、ちょうど「30.5歳」付近のタイミングで、整形外科専門医試験に合格されています。黒田さんが“専門医”の資格を取得した理由を教えてください。


まず、“専門医”って、医療関係者以外の方にはきっとなじみがない言葉ですよね。

一言でいうと「その分野において標準的で適切な診断・治療を提供できる医師」のことです。この専門医資格を取得するためには、最低でも4~5年はかかることが多い。

実際、専門医を取らなくても、医師免許さえ持っていれば診察することはできるんです。専門医資格の取得に時間がかかるし、条件を満たすのも大変だし…と、専門医を取らない人も増えています。

でも私は、専門医は一定の知識や技術の保証になるので、取得のために勉強し経験を積むことは意味があると感じます。

子育てなどで少しブランクがあっても専門医の資格があれば職場復帰しやすいという現状もありますし、そう考えると、女性医師こそ専門医取得がおすすめかもしれません。


―― そして、黒田さんは見事最短ルートで合格したんですね。では、資格を取得して良かったことはありますか?


1つ目は、純粋に専門的知識が増えたこと。試験勉強をしていると、国内で数例しかない症例が出てくることが度々ありました。恐ろしいことに、試験勉強をしなかったら知らなかった可能性がありますね。

2つ目は、“無知の知”といいますか、学生から専門医試験までの13年間勉強しても、自分がまだ知らないことはこんなにもたくさんある、と、気づけたことです。医学の奥深さを感じましたね。一生学んでも学びきれない気がします。


―― 働きながら、専門医試験と大学院試験の準備を並行してやっていたということですよね。医師としてのキャリアを積む中で、これらの決断をした理由を教えてください。


医師としては、専門医の資格取得をすること、大学院で博士号を取ることはかなり“王道”なんです。私自身、キャリアのどこかで研究を経験することは、医学を学ぶうえで必要なことだと感じていました。

一方、出産のタイミングを考えると、専門医取得後、早めの大学院進学が望ましい。結果的に、妊娠と2つの試験時期(専門医・大学院)が重なった、という感じです。

「今、2人目を妊娠中。やっぱりタイミングは考えたかな」と黒田さん。取材時は妊娠7ヶ月目


―― 子育てと仕事、大学院の“3足のわらじ”は大変なように思えるのですが、一体どんな時間配分で生活しているのでしょうか?


仕事は週3、4回の整形外科外来や当直で、合間に大学院に通っています。

大学院は実験があるとはいえ、入院患者を持つような病院で働くことと比べれば、時間に余裕はできやすい。家庭でも、保育園後、寝るまでの間や休日は子どもとゆっくり向き合うようにしています。



医学部を卒業し、最年少で医師になったとしても24歳。そこから2年間、研修医の期間を過ごすと26歳。

そして専門医の資格を取るのに4~5年はかかるので、最短でも専門医となるのは30歳になる。

そんな限られた時間を計画的に使い、仕事もプライベートも充実させている黒田さん。

「好奇心と、やりたいと思ったことをやっているだけ」と笑う彼女は、どんなことを考えて、女性医師としてのキャリアを築こうとしているのだろうか?

ここからは、その“選択と決断”の背景を、さらに深掘っていく。


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